コミュニティ・アプローチの実践――連携と協働とアドラー心理学
箕口雅博編(3,800円+税)ISBN978-4-86616-009-2◆本書は,地道に研鑚を積んできたコミュニティ臨床の事例を数多く集めた実践の本であり,そこから生まれたアドラー心理学との統合モデル「アドレリアン・コミュニティ・アプローチ」の提唱や,ベテラン臨床家らの臨床論などを盛り込んだ意欲的な論考集でもある。クライエントや家族,関係者,多職種が入り混じる実際の臨床現場。こうした臨床の実際のなかで心理職の基本的スキルとして必要とされているのが,コミュニティ・アプローチである。
コミュニティのなかでどう動き,どう協働を図り,どう効果ある実践を行うのか。個から小集団へ,そしてコミュニティへと展開をするためにはどこに視点を持てばいいのか。本書は,コミュニティ・アプローチの実際をすべて描いたもので,多くの読者の臨床現場で役立つ一冊である。
心理臨床プロムナード──こころをめぐる13の対話
京都大学名誉教授山中康裕著(3,100円+税)ISBN978-4-904536-83-4◆長く心理臨床の世界で活躍してきた著者による待望の対談集。第一部は,著者の主宰する研究会にこころの専門家を招いて,次代を担う若い臨床家へ向けて行われた対談を収録した。時に現況への鋭い批判の言葉も交えつつ,心理臨床業界の来し方行く末を縦横に語りつくした。
第二部では,多彩な趣味人でもある著者が,手塚治虫,鶴見俊輔,谷川俊太郎,中村雄二郎,池内紀らを迎えて,様々な話題で対話を楽しんでいる。
若い頃から論客として知られ,後進の育成にも力を注いできた著者ならではの確かなメッセージが込められた一書。恩師河合隼雄への敬愛の念に満ちた追悼対談も収録。
「甘え」とアタッチメント──理論と臨床
(西南学院大学)小林隆児・(東京大学大学院教育学研究科)遠藤利彦編(3,200円+税)ISBN978-4-904536-48-3◆子どものこころの臨床に活かすために
土居健郎の「甘え」理論とボウルビィのアタッチメント理論の歴史と現況を丁寧にたどり,実践者としても名高い執筆者らの手によって融合を試みたものです。成人の深刻な精神病理を示す患者の治療において,乳児期の体験の重要性が明らかになってきました。こうした状況のなかで,臨床の世界において,乳児期のアタッチメント体験の質的検討に注目が集まっています。行動面に着目し,実証的な科学として発展してきたアタッチメント理論と,その子どものアタッチメント行動の背後にある,「甘え」理論。この両概念の理論的な架橋を試みた意欲的な本書は,多くの臨床家にヒントを与えるものになるでしょう。
ダイアローグ:精神分析と創造性
前田重治・北山修著(1,800円+税)ISBN978-4-904536-39-1◆精神分析の匠が奏でるモノローグとダイアローグ
精神分析とはどういう営為なのであろうか。そこに流れる創造性とは何か?──精神科医にして精神分析家の二人の著者が繰り広げるモノローグとダイアローグ。精神分析の生き字引である前田先生による,有名な「芸論」についての講義と,それを受けてたつ北山先生による「創造性」の論議。そして,二人の丁々発止の愉快な対談。また,前田先生の心理療法と芸論に関するエッセイも数編,掲載しました。楽しい楽しい本になりました。こころの治療に関心のあるすべてのひとに読んでもらいたい1冊です。
心理臨床の広がりと深まり
山中康裕 編(京都大学名誉教授・京都ヘルメス研究所)(3,000円+税)ISBN978-4-904536-32-2◆臨床のエッセンスが満載
本書は,ユング心理学から認知行動療法まで,現代に生きる臨床家のための臨床エッセンスを満載した16章のテキスト・ブックである。編集には,子どもから高齢者まで,幅広い臨床経験をもつ山中康裕があたった。心理臨床家になるために重要なテーマを3部に分け,それぞれ,「心理臨床家のコア」と「心理臨床の思想」「臨床のリアルのなかで」と題し,まさに視野の広さと深みのある内容になっている。この本は,多くの心理臨床家をめざすものにとって大切な本になるだろう。多くの初学者にお勧めしたい一冊である。
心理臨床家の個人開業
栗原和彦(代々木心理相談室)著(4,600円+税)ISBN978-4-904536-23-0◆本書は,個人開業領域の心理臨床家として生きる著者が,開業の営為とその心理面接の実務における理論と方法,実践,開業場所や料金の設定,リスクなど,余すことなく,そのすべてを描いた重厚かつ濃密な一冊です。心理療法や心理的援助は,時代の要請を受けながら広い展開を示していますが,その原型は,フロイトから始まった個人開業にさかのぼることができ,本質的 に「孤独」な実践だと,著者は言います。その孤独の中でもまた孤独な開業実践のなかからつむぎだされた臨床哲学は,開業を目指す人ばかりでなく,すべての 臨床現場の礎となり,クライエントの幸福につながっていくものです。臨床のリアルを多様な視点から描き切ったこの大著は,さまざまな心理臨床の職場で働く多くの人に読み継がれていくべき本となるでしょう。
絵画療法の実践──事例を通してみる橋渡し機能
寺沢英理子著(3,000円+税)ISBN978-4-904536-16-2◆本書は,心理療法場面でみられる,絵画表現と言語表現の自由な選択を「橋渡し」をキーワードに,絵画療法の実践を探った臨床・研究の書です。風景構成法や自由画などの絵画療法と言語療法を用いた10人のクライエント,100点を越える描画を所収(カラー図版もあり)した事例検討を中心に,ワル テッグテストを改良した「誘発線画法」や,先に描いた絵をもとにコラージュのごとく用い,新しい世界をつくる「再構成法」など,著者のオリジナリティ溢れ る絵画療法の世界が垣間見えることでしょう。読んで,観て,わかる絵画療法の実践を描いた本書は,入門の次の一歩として,オススメの1冊です。
思春期・青年期の精神分析的アプローチ――出会いと心理臨床
乾吉佑著(3,400円+税)ISBN978-4-904536-06-3◆本書は,著者が臨床経験の多くを費やしてきた思春期から青年期にかけての若者と,その保護者などを交えた心理療法の実際をまとめた論集です。著者乾先生の技法的な中核は,精神分析的心理療法ですが,それだけではなく,短期療法や家族療法,親子並行面接法などもケースによっては用いており,クライエントの状況やニーズに合わせた幅広い心理療法が行っています。本書には,それらを用いて治療された,強迫性障害,自閉症,境界性パーソナリティ障害といった疾患ベースのケーススタディ論文,あるいは学生相談や病院臨床,個人開業といった多彩な臨床現場ベースの論文が所収され,事例と技法について具体的な解説がなされています。