加害者の指導と支援でいじめを減らす──いじめを限りなくゼロにする教師のかかわり・学校のかかわり・親のかかわり(BL子どもの心と学校臨床11)
加害者の指導と支援でいじめを減らす──いじめを限りなくゼロにする教師のかかわり・学校のかかわり・親のかかわり(BL子どもの心と学校臨床11)
| 著者 | 藤井和郎 |
| 出版年月 | 2025年8月 |
| ISBN | 978-4-86616-228-7 |
| 判型 | A5判並製 |
| ページ数 | 108 |
| 定価 | 1,600円(+税) |
内容紹介
本書のタイトル「加害者の指導と支援でいじめを減らす」を見て,「被害者支援」の間違いではないかと思った読者も多いのではないだろうか。しかし,間違いではない。
中学校教諭,校長,大学教員などを経験し,岡山県総社市「だれもが行きたくなる学校づくり」を推進した著者がまとめた「いじめをゼロにする」ためにできること。その理念と方法を詳しく語ったものがこの本です。
いじめを限りなくゼロにする。
その鍵となるのが,加害者への指導と支援。通常,いじめが発生をすると,被害者の子どもたちの安全を確保し,加害者の子どもたちには徹底指導により反省を促して終わらせることが少なくありません。しかし,加害者の子どもたちにこそ,再びいじめに走らないような支援が必要。その具体的な方法を「いじめ加害者支援システム」として提案しました。
本書は,いじめという現象と,いじめ問題への学級,学校,家庭まで含めた対応方法を詳細に記したもので,教師だけではなく,養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーなど,多くの学校関係者,保護者,教職を目指す学生らに,必読の1冊となっています。
大好評の〈ブックレット:子どもの心と学校臨床〉の1冊です。https://tomishobo.com/catalog/category/frontpage/frontpage01
主な目次
はじめに
第1章
なぜいじめはなくならないのか?
第1節 それは加害者がいるから
第2節 教師による子どもいじめ
第3節 子ども社会のいじめ
第4節 「いじり」という落とし穴
第5節 「いじめっ子」という「いじめられっ子」
第2章
事 例
第1節 中学校1年生女子B子へのいじめ
第2節 菅野明雄君の自殺
第3章
いじめへの正しい対応──学校として
第1節 いじめの認知
第2節 加害者の指導・支援
第3節 学級の問題として扱う
第4節 保護者との良好な関係を築く
第5節 いじめが起こらない風土づくり
第4章
いじめへの正しい対応──保護者として
第1節 我が子がいじめをしている
第2節 学校から呼び出しを受けたら
第3節 我が子がいじめ加害者にならない家庭づくり
第5章
いじめ加害者支援システム
第1節 いじめ加害者支援システムがなぜ必要なのか
第2節 いじめ加害者支援に必要な要素
第3節 加害者支援システムの内容
第4節 加害者支援の内容の例と支援者の関わり方
おわりに
はじめに
本書のタイトル「加害者の指導と支援でいじめを減らす」を見て,「被害者支援」の間違いではないかと思った読者も多いのではないだろうか。しかし,間違いではない。私は,いじめを減らすためには「加害者」への支援が不可欠と考えている。残念ながら,学校現場のいじめ対応を見ていると,「あまりにもひどい」と思えるものが多々ある。私が経験し体得してきたいじめ対応のノウハウを,現在,対応に苦しんでいる教師,悩みを抱えている保護者を始め,その他の関係者に遺したいという思いで本書を企画した。
では,なぜ「いじめ」が起こるのだろうか。私は「いじめをする子(加害者)がいるから」と答える。いじめ問題への対応は,「いじめをする子(加害者)をつくらない」こと,たとえいじめが起こっても「いじめを繰り返す子をつくらない」ことに尽きる。本書は,この考えの下,私自身の教師としての経験を基に,私が考えるいじめ対応を述べたいと思っている。
私は,大学卒業後,中学校教諭として19年勤務した。新採用教諭として赴任した中学校でいじめが起こり,胃が痛くなる思いをしながら何とか解決できたが,それ以来,何度もいじめ指導を経験した。生徒指導主事をしていた平成6(1994)年には,近隣の中学校で生徒の自殺があった。その生徒はいじめを示唆するメモを残していたことから,マスコミでも大々的に報道された。その後,生徒のご両親と共に,市内各中学校の生徒指導主事がパンフレット『いじめをなくすために』を作成し,二度とこのような不幸な出来事が起こらないようという思いを強くした。遺されたご両親の思いに接する機会を得たことから,いじめに対する私の認識を一層深めることとなった。それ以来,いじめ問題への対応は,私の生涯テーマとなっている。
本書は,教師,養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,教育行政,保護者,教職を目指す学生を対象としている。
教師,養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,教育行政の方々には,第1,2,3,5章を中心に読んでいただきたい。また,保護者に提案している第4章も参考にしていただきたい。
保護者の方々には,第1,2,4章を中心に読んでいただきたい。また,学校,教育行政に提案している第3章も参考にしていただきたい。
教職を目指す学生には,生徒指導や教育相談の講義の副読本として活用していただき,第1,2,3,4章を中心に読んでいただきたい。教壇に立つと必ずいじめ問題に直面することになる。学生のうちに,理論だけでなく具体的な対応方法を身に付けてほしい。
本書の中で紹介する事例は,個人情報保護の観点から内容を修正したり,複数の事例を基に再構成したりしている。また,大学生のレポートや授業感想などはすべて,匿名性を保った上で公開することについて了解を得ている。
本書が,いじめの減少に少しでも寄与できることを願っている。
令和7年7月10日
藤井和郎
著者略歴
藤井和郎(ふじい・かずろう)
1977年3月 岡山大学教育学部卒業
1977年4月 岡山県井原市立井原中学校 教諭
1980年4月 岡山県総社市総社東中学校 教諭
(1989年度 岡山県教育センター教育相談部 長期研修員)
1991年4月 岡山県総社市立総社中学校 教諭
(1993~1995年度 生徒指導主事)
1996年4月 岡山県総社市教育委員会学校教育課 指導主幹
(自ら考案した「学校カウンセリングシステム(科研奨励研究B)」に基づき,1997年度から「学校適応促進事業」を開始)
2004年4月 岡山県教育センター教育相談部 部長
(自ら考案した「学校コンサルテーションシステム(岡山方式)」に基づき,2007年度から「学校コンサルテーション事業」を開始)
2007年4月 岡山県総合教育センター特別支援教育部 部長
2008年4月 岡山県総社市教育委員会 参事兼学校教育課長
(2010年度から「だれもが行きたくなる学校づくり」事業を開始)
2011年4月 岡山県総社市立総社西中学校 校長
2015年4月 吉備国際大学,川崎医療福祉大学 非常勤講師
総社市こども課 家庭児童相談員
2016年4月 吉備国際大学心理学部子ども発達教育学科 教授
吉備国際大学 教職センター長
2024年4月 吉備国際大学,川崎医療福祉大学,岡山理科大学 非常勤講師
現在 吉備国際大学,川崎医療福祉大学 非常勤講師
所属学会等
一般社団法人 日本学校教育相談学会 副会長
日本ピア・サポート学会 監査
一般社団法人 日本自殺予防学会
社会福祉法人 岡山いのちの電話協会 副会長(業務執行理事)
受賞
2017年 日本学校教育相談学会 学会賞
主な著書
『学校教育相談の新しい試み─臨床心理士と教師カウンセラーの連携』(共著,明治図書,1996)
『学校教育相談の組織づくり─臨床心理士との連携の可能性』(分担執筆,明治図書,1998)
『学校教育相談と保健室─臨床心理士との連携による活性化』(分担執筆,明治図書,2000)
『学校教育相談』(分担執筆,ミネルヴァ書房,2002)
『現場に生きるスクールカウンセリング─子ども・教師・保護者への対応と援助』(分担執筆,金剛出版,2004)
ほか
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