心理実習──体験を通して学ぶ公認心理師の基本スキル②

心理実習──体験を通して学ぶ公認心理師の基本スキル②
編者日本公認心理師養成機関連盟
出版年月2025年9月
ISBN978-4-86616-225-6
図書コードC3011
判型B5判・並製
ページ数168
定価2,500円(+税)
内容紹介

本書は,公認心理師養成の必須科目「心理実習」のためのテキストです。現場で活躍する心理職たちと大学教員たちが公認心理師の後進たちのために編集をした必携の1冊となっています。
現場でその実際を目の当たりにすることは,心理支援を学ぶ大きな経験となります。現場に出るにあたって準備も必要ですし,その経験を学びに昇華させる事後学習も必要です。この本では,その準備から事後検討までのポイントをまとめた1冊です。書き込み式のワークも取り入れており,自分ひとりで考え,その考えを仲間たちと議論をしながら,学びを深めることもできるように作成されています。前に進んでいくためのこの本は,心理支援を学ぶ力となることでしょう。

「心理実習」で何を学ぶのか? 現場に出る前,出た後に活用できる実践型テキスト
☆学修のポイントがわかる
☆書き込み式のワークも充実
☆「実習生プロフィール」「実習記録」テンプレートなど各種資料のダウンロードも可能

 

主な目次

刊行にあたって 鶴 光代

第1部 心理実習と公認心理師
第1章 これまでの学びと心理実習とのつながり ◆ 武内智弥
第2章 役に立つ公認心理師になるために──心理実習の意義と学習課題 ◆ 元永拓郎
第3章 公認心理師の活躍の場のいま ◆ 川畑直人
第4章 公認心理師はチームアプローチとして何をしているのか ◆ 宮﨑 昭
コラム 私にとっての公認心理師としてのやりがい1 ◆ 小俣和義
コラム 私にとっての公認心理師としてのやりがい2 ◆ 梨谷竜也

第2部 実習の準備
第1章 現場での実習マナー ◆ 藤城有美子
第2章 実習までに準備しておきたい心構え ◆ 宮崎圭子
第3章 実習までに確認しておきたい心理師スキル ◆ 明翫光宜・石井明子
第4章 実習計画・関係書類作成のポイント ◆ 瀬地山葉矢
第5章 施設概要作成のポイント・書き方の例 ◆ 上田幸彦
第6章 心理実習への気持ち・目標を整理しよう ◆ 武内智弥
資料1 実習生プロフィールの作成例 ◆ 瀬地山葉矢
資料2 誓約書の例 ◆ 瀬地山葉矢
資料3 実習施設・機関の概要の作成例 ◆ 上田幸彦
資料4 個別の実習計画書の例 ◆ 瀬地山葉矢

第3部 現場での実習
第1章 実習現場の中で実習生が自分自身を活かすには ◆ 佐藤宏平
第2章 実習中の出来事から実習の体験をどう深めるか ◆ 山口義枝・津川律子
第3章 実習中に感じうる倫理的な出来事 ◆ 金沢吉展
第4章 実習記録・実習日誌の書き方のポイント・書き方の例 ◆ 平間さゆり
コラム 私の「心理実習」体験 ◆ 法月桃子
コラム 私の実習体験 ◆ 浅野実紀
コラム 私が現場で働きはじめてから困ったこと1 ◆ 後藤進吾
コラム 私が現場で働きはじめてから困ったこと2 ◆ 田多井正彦
資料5 実習出席簿の例 ◆ 平間さゆり
資料6 実習記録の例 ◆ 平間さゆり
資料7 実習日誌の例 ◆ 平間さゆり

第4部 実習で役立つ着眼点
第1章 保健医療分野での実習(総合病院) ◆ 花村温子
第2章 保健医療分野での実習(精神科医療) ◆ 山田 均
第3章 福祉分野での実習(児童福祉施設) ◆ 瀧井有美子・阿部晋也
第4章 福祉分野での実習(障害者・高齢者の施設) ◆ 中津大介
第5章 教育分野での実習(学校) ◆ 山口豊一
第6章 教育分野での実習(教育支援センター・適応指導教室/体験型実習) ◆ 矢島潤平
第7章 司法・犯罪分野での実習(少年鑑別所・矯正施設) ◆ 渡邉 悟
第8章 産業・労働分野での実習──EAP・社外の相談室 ◆ 松本桂樹
第9章 大学附属の心理相談施設での実習 ◆ 横山 舜

第5部 事後学習
第1章 現場実習での学びを定着させるには ◆ 永田雅子
第2章 実習成果報告のポイント ◆ 樋口亜瑞佐
第3章 実習全体の振り返り方・「自己評価票」の使い方 ◆ 宮﨑 昭
資料8 自分の成長のための「自己評価表」(個人内評価) ◆ 宮﨑 昭

第6部 心理実習のその後
第1章 心理実習の経験をその後につなげること ◆ 新川貴紀
第2章 心理実習の経験を社会人として活かすには ◆ 瀬地山葉矢
第3章 公認心理師としての生き方 ◆ 野島一彦
第4章 これからの公認心理師に求められること ◆ 川畑直人
コラム 私の研修体験・今の実践に活きていること ◆ 木村久仁子
コラム 私の研修体験・今の実践に活きていること ◆ 矢島潤平

ダウンロード資料のご利用方法

 

 

 

刊行にあたって

「心理実習」は現場で体験的・実感的に学ぶ科目
本書は公認心理師を目指して大学の学部で勉学に励んでいる学生に向けて,初めて作られたテキスト『心理実習』です。
「心理実習」は公認心理師になるために学ばなければならない必須の科目で,公認心理師に必要な「知識及び技能の基本的な水準」の修得を目的としています。そのために,保健医療,福祉,教育,司法・犯罪,産業・労働等の分野の施設において見学等による実習を行うことになっています。
公認心理師になりたいと思っていても,公認心理師が働くその現場で公認心理師がどのように働いているのかを目の当たりにすることはあまりありません。そのため,公認心理師の仕事については,想像はできても実感的には分からないことがたくさんあると思います。心理実習はそうした分からないところを,現場で体験的に学べる科目です。
例えば,保健医療分野では,精神科や心療内科,内科,小児科,保健所などで公認心理師が活躍しています。その仕事内容は,公認心理師法でいうところの「心理に関する支援を要する者」(患者や心理相談者)への心理アセスメントや心理療法だけではありません。
チーム医療として,公認心理師は医師や看護師,作業療法士,精神保健福祉士,薬剤師等の専門家とチームを組んでチームアプローチをおこなっていきます。また,こうした「多職種連携」のほかにも,例えば,患者への復職に向けての心理支援は,患者の職場の上司や保健師,産業保健スタッフ,人事労務管理スタッフ等と連携しそのプロセスを支えていきます。
また,自宅療養中の人には,治療と並行して社会生活支援を行うための地域全体での包括的なケアが必要となることがあります。訪問介護やデイケア,グループホーム,就労移行支援事業等の専門職や関係者と連絡を取り合い協力して支援していく「地域連携」も公認心理師の大事な仕事となります。
心理実習では,こうした公認心理師としての心理支援の実際を直接的・間接的に,また体験的・実感的に学んでいくことができますので,大いに心に響くものがあります。公認心理師として一人前になったときにも,初めての実習で体験した感動は心の奥底に残り,職業人としての自分の支えとなります。

現場での実習に臨む準備
心理実習には,一種のワクワク感と同時に不安感が伴いやすいものです。本書『心理実習』では,そうした不安を払拭すべくいろいろな工夫を行っています。
まずは,今まで学んできた「公認心理師としての職業倫理および法的義務」を再確認して理解を深めておきましょう。そして「心理演習」を通して学んだことを振り返りながら,自分の思い描く公認心理師の姿をイメージアップします。他の学生の思い描く公認心理師像を聴いているうちに,自分はどのような公認心理師になりたいかがだんだんはっきりしてきます。そうすると,自分は心理実習で何を学びたいかが分かってきます。下記の具体的準備をすすめていく中でさらにはっきりしてきます。
具体的準備としては,「実習生作法」という実習先での守るべきルールやエチケットを確認します。そして実習に行くに際してのもろもろの書類の作成に取りかかります。まずは,実習先に提出する「実習生プロフィール」の作成です。名前,住所,緊急連絡先などを書き,公認心理師を目指す動機,実習への抱負を書く欄があるのでそれらを書き入れていきます。
また,大学提出用と実習施設提出用の「誓約書」を書かねばなりません。実習先の規則や規律を守り信用失墜行為を行わないこと,実習上知り得た個人の情報に関する守秘義務の遵守等についての誓約です。本テキストに「実習生プロフィール」と「誓約書」の記載例を載せていますので参考にしてください。
実習に行く前には,実習先の設置主体や運営方針・理念,事業内容,地域との関係,利用者の状況,職員構成と心理職の役割などを調べて,「施設・機関の概要」としてまとめる作業があります。本テキストでは,調べ方や作成の仕方を簡明に説明し記載例を載せています。
実習に臨むに際しては,もう一つ,自分の「実習計画書」を作成しておかねばなりません。これには,実習目的と実習課題,実習目的と実習課題のための事前学習状況,実習目的と実習課題を達成するために実習で体験したいことを書くことになっています。これは,ちょっと難しそうに感じるかもしれませんが,一つひとつの項目についてどういうことを書けばよいかを記載例を挙げながら説明していますので,それに沿って自分の思いや考えを書き入れていけば出来上がっていきます。実習先が変われば,また新たに作成しなければなりませんが,2回目はきっと苦労しなくても書けるようになっていると思います。

現場での実習とその成果
いよいよ現場での実習です。最初はだれでも緊張します。緊張しているからこそ,目の前のことに集中できるともいえます。初日の緊張は半端ないものであっても,回数が重なるごとに過緊張はほぐれ適度な緊張に変わっていきます。
それでも途中で困ったり戸惑ったりすることが起こります。はじめのうちは,実習記録の書き方に戸惑うことが多いようです。本テキストでは,実習中のどこに焦点を当ててどのように書けばよいかを例示し分かりやすく説明しています。時には,実習生同士の人間関係に悩むこともあったりします。そうした困り事についてもどう対処していけばよいかを解説しています。
本テキストでは困り事や戸惑いを乗り越え,実習がよりスムーズで実りの多いものになるようにサポートしています。実習中には,実習指導者の要支援者に対する支援に感銘したり,自分の対応がうまくいってうれしいとき,やりがい感を感じられるときがあるので大事にしましょう。
本テキストには,ワークブック的な書き込みができるページを随所に設けていますので,自分のリアルな実習体験をメモしていきましょう。実習中には,公認心理師としての職業倫理や法的義務の実際に目を向け,言葉の上での理解だけではなくからだで感じ取っていきましょう。本テキストは,公認心理師の仕事について理解し,公認心理師としてのやりがいを体験し,今後の学習や活動のモチベーションを高められるような構成にしていますので,大いに活用して心理実習を成功させていただくことを願っています。

一般社団法人 日本公認心理師養成機関連盟第3期会長
鶴 光代

編著者紹介

一般社団法人 日本公認心理師養成機関連盟について
日本公認心理師養成機関連盟は,公認心理師を養成する,大学,大学院及び実務経験を行う施設等の機関によって構成される全国組織。同連盟は,公認心理師養成機関に課せられた社会的使命に鑑み,公認心理師養成の内容充実及び振興を図るとともに,公認心理師及び公認心理師養成に関する研究開発と知識の普及に努め,もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的としている。https://kouyouren.jp/

執筆者一覧(掲載順)

鶴  光代(つるみつよ:淑徳大学人文学部人間科学科)
武内 智弥(たけうちともや:淑徳大学人文学部人間学科)
元永 拓郎(もとながたくろう:帝京大学文学部心理学科)
川畑 直人(かわばたなおと:京都文教大学臨床心理学部臨床心理学科)
宮﨑  昭(みやざきあきら:環境とこころとからだの研究所)
藤城有美子(ふじしろゆみこ:駒沢女子大学共創文化学部心理学科)
宮崎 圭子(みやざきけいこ:跡見学園女子大学心理学部臨床心理学科)
明翫 光宜(みょうがんみつのり:中京大学心理学部心理学科)
石井 明子(いしいあきこ:中京大学心理学部心理学科)
瀬地山葉矢(せちやまはや:日本福祉大学教育・心理学部心理学科)
上田 幸彦(うえだゆきひこ:沖縄国際大学総合文化学部人間福祉学科)
佐藤 宏平(さとうこうへい:山形大学地域教育文化学部地域教育文化学科)
山口 義枝(やまぐちよしえ:日本大学文理学部心理学科)
津川 律子(つがわりつこ:日本大学文理学部心理学科)
金沢 吉展(かなざわよしのぶ:明治学院大学名誉教授)
平間さゆり(ひらまさゆり:川村学園女子大学文学部心理学科)
花村 温子(はなむらあつこ:埼玉メディカルセンター)
山田  均(やまだひとし:上尾の森診療所)
瀧井有美子(たきいゆみこ:児童心理治療施設 横浜いずみ学園)
阿部 晋也(あべしんや:児童心理治療施設 横浜いずみ学園)
中津 大介(なかつだいすけ:東京視覚障害者生活支援センター)
山口 豊一(やまぐちとよかず:聖徳大学大学院臨床心理学研究科)
矢島 潤平(やじまじゅんぺい:別府大学大学院文学研究科臨床心理学専攻)
渡邉  悟(わたなべさとる:徳島文理大学人間生活学部心理学科)
松本 桂樹(まつもとけいき:株式会社ジャパンEAPシステムズ)
横山  舜(よこやましゅん:青山学院大学教育人間科学部心理学科)
永田 雅子(ながたまさこ:名古屋大学心の発達支援研究実践センター)
樋口亜瑞佐(ひぐちあずさ:大阪公立大学現代システム科学研究院)
新川 貴紀(しんかわたかのり:北翔大学 教育文化学部 心理カウンセリング学科)
野島 一彦(のじまかずひこ:九州大学名誉教授・跡見学園女子大学名誉教授)


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