性的逸脱行為への条件反射制御法ワークブック

性的逸脱行為への条件反射制御法ワークブック
著者長谷川直実・平井愼二・山本泰雄
出版年月2025年10月
ISBN978-4-86616-234-8
図書コードC0047
判型B5判・並製
ページ数96
定価1,800円(+税)
内容紹介

このワークブックは,痴漢,下着窃盗,盗撮などの性的逸脱行為をやめたくてもやめられず,繰り返してしまう人のためのものです。
性的な問題行動は,いったん条件反射が成立してしまうと,意思の力だけで抑制することは困難になります。やめられない行動を制御するために開発された条件反射制御法に基づいた治療や支援に取り組むことが必要です。
本書は,刑務所などの刑事施設,精神科医療機関,回復支援を行う福祉施設や心理オフィス,教育現場などで,性的逸脱行動のメカニズム,症状,問題,抑制のための取り組みを学びながら,同時に条件反射制御法のステージを進めていくためのテキストです。

主な目次

第1回 なぜ,癖になったのでしょうか
第2回 やめるための治療・取り組みにはどんなものがあるでしょうか
第3回 条件反射制御法(CRCT)とは
第4回 マスターベーションについて
第5回 条件反射制御法をやってみよう 制御刺激ステージ
第6回 性的問題行動の背景にある疾患や問題
第7回 よかったことの書き出し・自分のリソース
第8回 性的なものに過度にとらわれた生活から離れる
第9回 典型的な問題行動の日とは ~自分のパターンを知る~
第10回 第2ステージへ 日常生活の観察票・疑似作業
第11回 つらかったこと・怒りをおぼえたことなどの書き出し
第12回 怒りについて
第13回 行動の影響
第14回 想像作業
第15回 ブレーキになったもの
第16回 埋め合わせについて
第17回 グレーゾーンリスト
第18回 恋人・パートナーとのつきあい
第19回 クライシス・プラン
第20回 維持作業について
第21回 おわりに


はじめに この本の使い方

このワークブックは,性的問題行動をやめたくてもやめられず,繰り返してしまう人のためのものです。本書は,やめたくてもやめられない行動を制御できるようになるために開発された条件反射制御法という治療法に基いて作成されています。

医療機関や刑務所内のプログラムなどで,グループで実施しても構いませんが,個別で取り組むことに合わせて作られています。

カウンセラーや教師,医師,ソーシャルワーカー,看護師などの支援者と一緒に取り組む場面を想定していますが,ひとりで取り組んでも構いません。ただ,ひとりで取り組むことはなかなか継続しにくい面があるので,支援者がいた方がよいと思います。

条件反射制御法による治療がある程度(後述する治療の第2ステージ途中に)進むまでは,過去に事件を起した環境に近い場所などに単独ではいかない方がよいと思います。しかし,仕事や学校に行くときにそのような場所を通らざるをえず,同伴してくれるような人もいないことも多いでしょう。そのような場合は,第2ステージから用いる「日常生活の観察票(巻末)」をはじめから使うことをお勧めします。(後述する制御刺激:キーワード・アクションを設定する前なので,身体や気持ちの変化のみチェックします)

また,通勤等で電車内や駅の構内,夜の道などその人にとってリスクのある場所を通っているときに,家族にメールや電話をすることも有効です。観察票をつけること,メールや電話をすることは,人間の思考の働きをしっかりさせて,生まれつきの行動あるいは癖になった行動を生じる作用にまけないようにしようとする試みです。

ひとりで取り組んでいて,壁にぶつかった場合は,条件反射制御法学会事務局あてに質問や相談をお寄せください。個別にお答えしたいと思います。

長谷川直実


著者略歴

長谷川直実(はせがわ なおみ)
医療法人社団ほっとステーション大通公園メンタルクリニック院長,条件反射制御法学会立ち上げに係る。
1989年,弘前大学医学部専門課程卒業(在学中に矯正医官修学生)。
同年,法務省八王子医療刑務所精神科病棟勤務,東京都立松沢病院研修医(研修期間終了後も医療刑務所と兼務)。1997年,八王子医療刑務所及び松沢病院を退職。民間病院勤務を経て,1999年からデイケア・クリニックほっとステーション,2003年から2019年3月まで月形刑務所精神科嘱託医。2005年より「北海道で更生と再犯防止を考える会」を主催。北海道内の矯正施設にて,ほっとステーションスタッフとともにプログラムを実施。
主な著書:『精神科デイケア必携マニュアル』(監修,金剛出版,2011),『条件反射制御法入門―動物的脳をリセットし,嗜癖・問題行動を断つ!』(共著,星和書店,2015),『メンタルヘルスにおける地域生活支援の手引き―医療機関から手を伸ばしたつながり方』(編著,金剛出版,2019)など

平井愼二(ひらい しんじ)
ライフクリニック院長。条件反射制御法学会理事長。
1985年,徳島大学医学部卒業。昭和大学病院での研修を経て,1989年に下総精神医療センターに就職し,薬物乱用者に専門的に対応した。1995年からは2年間,ロンドン大学セントジョージ病院嗜癖行動学科へ出張。1999年に薬物乱用対策における取締処分側と援助側の∞連携を構想。この∞連携において援助側職員の態勢は,患者による規制薬物乱用を取締職員に通報しないこと,並びに,患者が同意すれば後に取締職員と面接させることで特徴づけられる。この処遇は一部で実現化し,効果を上げている。2006年に条件反射制御法を開発。2012年に条件反射制御法研究会(学会の前身)を発足させた。2025年,ライフクリニックを開院。
ヒトの行動原理に基づいて,現在の精神科領域の技法を整理し,司法体系のあり方を適正なものにすることを活動の焦点にしている。
主な著書:『条件反射制御法―物質使用障害に治癒をもたらす必須の技法』(遠見書房,2015),『条件反射制御法入門―動物的脳をリセットし,嗜癖・問題行動を断つ!』(共著,星和書店,2015),訳書に『ステイ・クリーン―たばこ,酒,薬物とあなたの生き方』(共著,パステル書房,1998)など

山本泰雄(やまもと やすお) [第19回]
医療法人社団ほっとステーション大通公園メンタルクリニック

 

 


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