働くあなたのためのはじめてのマインドフルネス──自分も人も大切にする生き方

働くあなたのためのはじめてのマインドフルネス──自分も人も大切にする生き方
著者中野 美奈
出版年月2025年5月
ISBN978-4-86616-219-5
判型B5判並製
ページ数96
定価1,900円(+税)
内容紹介

仕事の締め切り,人間関係の悩み,キャリアへの不安……。このような仕事のストレスで心が疲れていませんか?
この本は,現代で忙しく働いているひとのためのマインドフルネスとセルフコンパッションの入門書です。
15年以上企業に勤務したのち,現在は大学で職場や組織でのメンタルヘルス研究と実践を続けている著者が,「今,ここ」に意識を向け,心の安定を取り戻すための方法を,マインドフルネス初心者にもわかりやすく解説します。
本書では,食事や呼吸法,瞑想,感情のコントロールなど,日常生活に取り入れやすいマインドフルネスのワークを紹介。心の力を高め,仕事もプライベートも充実させるために,働く人々や,マインドフルネス,そしてセルフコンパッションに関心がある方にぜひ携えていただきたい一冊です。

主な目次
はじめに


最近,心が重いと感じることはありませんか?
私たちは,日々忙しい生活を送る中で,心の疲れを感じながらも,それをどう扱えばよいのか分からずに過ごしてしまうことが多いのではないでしょうか。特に働く人々にとって,職場でのストレスやプレッシャーは避けられないものです。仕事の締め切り,人間関係,キャリアの不安─こうした課題や問題に追われるうちに,「今,ここ」に意識を向けて体験を味わう余裕を失い,心は過去の後悔や未来の不安に囚われがちです。
私は企業で15年以上勤務するなかで,職場のストレスやプレッシャーが人々の心に与える影響を目の当たりにしてきました。その後,大学院に進学し,CBT(認知行動療法)を中心に臨床心理学を学びました。マインドフルネスに出会ったのは,2010年のことでした。
本書では,働く人々が抱える心理的な問題に対する一つの答えとして,「マインドフルネス」を紹介します。マインドフルネスでは,今この瞬間の自分の思考や感情,身体感覚などに意識を向け,それらを価値判断せず受け入れることが大切で,それにより心の安定や自己理解を深めることもできます。近年,欧米を中心に心理学や医療分野で注目されており,ストレス管理やメンタルヘルス向上の手法としても広く研究されています。本書は,マインドフルネスを初めて学ぶ方を読者として想定しており,専門用語をできるだけ使わず,日常生活に結び付けて解説しています。
マインドフルネスは,決して特別な人だけのものではありません。マインドフルネスという言葉を聞いたことがある方は,もしかして仏教の教えや瞑想のことだと理解されている人もいるかもしれません。しかし,マインドフルネスは禅僧や瞑想の達人だけが身につけるスキルではありません。仕事や家庭に追われながら日々忙しく働く人々にも有用なものです。しかし,マインドフルネスについて,「取り組む時間がない」,「継続するのが難しい」,「理解が難しい」と感じる人が多いのも事実です。そこで私は,忙しく働く人々が,職場など日常の中で無理なく実践できる「働く人のためのマインドフルネス・プログラム」を作りました。本書は,そのプログラムを基に執筆したものです。プログラムでは,1回あたり10分程度の短いワークを取り入れ,職場や日常生活の中で簡単に実践できる方法を紹介しています。特に,「脱中心化(思考や感情に飲み込まれず,一時的なものとして認識する能力)」や「マインドフルなコミュニケーション」に焦点を当て,職場でのストレス対処や対人関係の改善を目指しました。この「働く人のためのマインドフルネス・プログラム」の有効性は,効果研究によって実証されています。プログラム参加者のセルフ・コンパッション,コミュニケーションスキル,脱中心化スキル,精神的健康状態が有意に向上しました。一方で,統制群(プログラムを受けなかったグループ)には,こうした変化は見られませんでした。本書では,こうした科学的な知見を基に,プログラムで用いた解説やワークをご紹介しています。
本書の目的は,マインドフルネスの基本的な考え方を紹介するだけでなく,それを働く人々が日常生活や職場で実践できる形に落とし込むことです。理論にとどまらず,実際に役立つスキルとして身につけてもらうことを目指しています。
特に,以下のような方をイメージして執筆しました。

・仕事のストレスを減らしたい人
・職場の人間関係に悩んでいる人
・自分の感情や考えに振り回されていると感じる人
・自己批判が強く,自分に厳しくしすぎてしまう人
・集中力を高め,効率よく働きたい人
・マインドフルネスに興味はあるが,よく知らないし,継続できるか不安な人

本書では,「瞑想=マインドフルネス」ではないという考え方を大切にしています。確かに瞑想は有効な手段ですが,それイコールマインドフルネスではありませんし,瞑想だけが実践方法ではありません。たとえば,食事をゆっくり味わうことや,意識的に深呼吸をすることも立派なマインドフルネスの実践です。また,マインドフルに自分の感情や考えと付き合うこと,他者とコミュニケーションすることも大切です。
マインドフルネスについて理解し意識して生活することで,私たちはストレスに振り回されるのではなく,それを適切に対処しながら,より充実した生活を送ることができます。心のシートベルトを締めるように,マインドフルネスを日常に取り入れることで,ストレスに翻弄されず,自分自身をしっかりと支えることができるかと思います。
本書を通じて一人でも多くの方が,忙しい毎日の中でも「今,ここ」に意識を向け,心の安定を取り戻すきっかけをつかんでいただければ幸いです。

中野 美奈

著者略歴

中野 美奈(なかの・みな)
福山大学人間文化学部心理学科准教授,広島県臨床心理士会副会長・理事,脳神経センター大田記念病院非常勤心理士
専門:認知行動療法,マインドフルネス,セルフ・コンパッション
資格:博士(教育学・東京大学),臨床心理士,公認心理師,シニア産業カウンセラー
金融機関や自動車メーカーで15年以上勤務した後,東京大学大学院に進学。大学院修了後に東京大学大学院特任助教,EAP企業,病院,メンタルクリニック等の勤務を経験。産業領域におけるメンタルヘルス向上のために,様々な職場でCBT,マインドフルネス,セルフ・コンパッションに基づいたセミナーや研修を提供している。
著書:『マインドフルネスのすべて:「今この瞬間」への気づき』(翻訳,丸善出版,2016),『ストレスチェック時代の職場の「新型うつ」対策:理解・予防・支援のために』(ミネルヴァ書房,2018)


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