世界一隅々まで書いた認知行動療法・認知再構成法の本

世界一隅々まで書いた
認知行動療法・認知再構成法の本

(洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長)伊藤絵美 著

2,800円(+税) A5判 並製 174頁 C3011 ISBN978-4-86616-140-2

教えます! 使えるCBT

認知行動療法のなかでもパワフルに使える認知再構成法のことを,スミからスミまで,細かい裏側まで,非常に詳しく解説したのがこの本です。執筆者は,いま一番人気のカウンセリング・ルームの一つ,洗足ストレスコーピング・サポートオフィスの主宰で,認知行動療法のスペシャリスト伊藤絵美先生です。
本書は,1日にわたるワークショップをもとに書籍化したもので,ちゃんと学べる楽しく学べるをモットーに,深い講義をシンプルにまとめてもらいました。臨床家なら必携の一冊です。今日から使えるワークシートつき。


主な目次

§1 認知再構成法とはどういう技法か
§2 認知再構成法の概要
§3 認知再構成法で用いるツール(コラム,図的ツール)
  break 受講者からの感想①
§4 認知再構成法の導入
  break 受講者からの感想②
§5 特定場面の切り取りと検討する自動思考の選択──ツール3
§6 「検討する自動思考」の選択の仕方──ツール3
§7 自動思考についてのブレインストーミング──ツール4
  break 受講者からの感想③
§8 ブレインストーミングを楽しもう──ツール4
§9 代替思考の案出と効果の検証──ツール5
§10 一通り終えた後は?
§11 Q&A



著者略歴

伊藤絵美(いとう・えみ)
公認心理師,臨床心理士,精神保健福祉士。洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長。千葉大学子どものこころの発達教育研究センター特任教授。慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。同大学大学院社会学研究科博士課程修了,博士(社会学)。専門は臨床心理学,ストレス心理学,認知行動療法,スキーマ療法。大学院在籍時より精神科クリニックにてカウンセラーとして勤務。その後,民間企業でのメンタルヘルスの仕事に従事し,2004年より認知行動療法に基づくカウンセリングを提供する専門機関「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」を開設。
主な著書に,『事例で学ぶ認知行動療法』(誠信書房),『自分でできるスキーマ療法ワークブックBook1&Book2』(星和書店),『ケアする人も楽になる認知行動療法入門 BOOK1&BOOK2』『ケアする人も楽になるマインドフルネス&スキーマ療法BOOK1&BOOK2』(いずれも医学書院),『イラスト版 子どものストレスマネジメント』(合同出版),『セルフケアの道具箱』(晶文社)などがある。

 


はじめに

 

みなさん,こんにちは。伊藤絵美と申します。私は,認知行動療法を専門とするカウンセリング機関「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」を運営しているセラピスト(臨床心理士・公認心理師)です。当オフィスを開設したのが2004年ですので,今年(2021年)で開設18年目というということになります。月日の経つのは早いものです。当オフィスを開設する前は,長らく精神科のクリニックでカウンセリングやデイケアの仕事をし,その後少しだけ民間企業に勤め,働く人のメンタルヘルスをサポートする仕事をしていました。

その間,一貫して専門技術として用いてきた,そして今も用いているのが,さきほどもちらりと申しました「認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy;CBT)」というアプローチです。CBTとは簡単に言うと,「ストレスに気づきを向け,その問題を認知と行動の工夫によって対処し,上手に乗り越えるための手法」ということになります。CBTはうつや不安といったメンタルヘルスの問題に対する治療法として,あるいは犯罪の再犯予防のための手法としてだけでなく,健康な人のメンタルヘルスを良好に保つためのセルフケアの手法としてエビデンス(科学的根拠)があることが,さまざまな研究によって示されています。

私はセラピストとしてこれまで多くのクライアントに対して,CBTを実践してきました。CBTにはさまざまな具体的な技法があります。代表的なものをざっと挙げると,セルフモニタリング,マインドフルネス,認知再構成法,問題解決法,行動活性化,エクスポージャー(曝露療法),リラクセーション法などです。これらの技法を個別のクライアントに対し,必要に応じて選択したり組み合わせたりして適用し,協同作業を行って一緒に取り組みます。CBTには即効性がなく,これらの技法を日々コツコツと練習し,実践を続けるなかで,症状が改善したり,セルフケアのスキルが上がったりするなどして,じわじわと効果があらわれてきます。即効性はなくても,時間をかけて確実に効果を上げることで,セラピーとしてのCBTの終結後も,クライアントが自分自身のためにCBTを使い続け,セルフケアをし続けることを目指します。

ところでCBTはエビデンスベーストの心理療法として,世界的に注目されていたにもかかわらず,当オフィスを開設した2004年当初,日本ではCBTを提供できるセラピストがあまりにも少ないことが課題とされていましたし,私もそのような問題意識を持っていました。そこで私は2004年6月より,「認知行動療法ワークショップ」と称して,CBTの諸技法に関するさまざまなワークショップをオフィスで開催し,参加者(心理職など専門家およびその卵)を募ることを始めました。当初はオフィス内で少人数ワークショップを開いていたのですが,希望者が多く,数年後からは会場を借りて,集合研修の形で,30~60名の参加者に対してワークショップを開催することにしました。そのワークショップのメニューの一つが,本書のテーマである認知再構成法でした。

認知再構成法のワークショップは,会場を借りての集合研修の形態で,2006年から2019年まで,計25回開催しました。ざっと計算したところ,少なくとも1,000名以上の方に参加していただいたようです。この形態でのワークショップでは,私が認知再構成法のデモンストレーションを行ったり(参加者のなかからボランティアとしてクライアント役を演じてもらい,私がセラピストとして認知再構成法のロールプレイを行う),参加者同士で3~5名のグループを作ってもらい互いにセラピスト・クライアントとして認知再構成法のロールプレイを行ってもらったり,ということに最も時間を割いていました。ワークショップですから,単なるレクチャーだけでなく,参加者ができるだけ体験したり実践したりする時間を設けたかったからです。そして実際にこのワークショップに対しては高い評価をいただき,「認知再構成法がどういう技法か,体験して腑に落ちた」「本で読むのと体験するのとでは全然違う」と多くの参加者にコメントをいただいていました。

そのように好評をいただいている認知再構成法のワークショップでしたので,2020年の秋にも26回目のワークショップを品川の会場を借りて開催する予定でおりました。しかし,しかし,しかーし! ここで人類はコロナ禍に見舞われることになりました。会場を借りて,そこで私が皆の前で飛沫を飛ばしながらデモンストレーションを行ったり,小グループで参加者が飛沫を飛ばし合いながらロールプレイを行ったりするのはもってのほか,という時代が来てしまったのです。東京に緊急事態宣言が発出され,私の運営するオフィスも営業を自粛することになりました。そしてコロナ禍が早々に収まるはずがないと判断し,2020年度の会場を借りてのワークショップは全て中止することにし,予約していた会場をキャンセルしました。

私は困ってしまいました。コロナ禍においてオフィスの運営が完全に揺らいでしまったのです。人と人とが顔を付き合わせてしゃべりまくる,というのがセラピーやカウンセリングの本質です。しかし今や,人と人とが顔を付き合わせてしゃべりまくる,というのは最大の「危険行為」となってしまいました。もう一つの私の活動の柱であるワークショップも同様です。「これはなんとかしなければ」と考え,案出したのは「オンラインの活用」でした。というか,それしかありません。そこで,4月および5月の休業中に,セラピーをオンラインで実施するためのインフラを整えたり,マニュアルを作ったりしました。そして全てのワークショップもオンラインに切り替えて実施することに決めました。幸い自粛中でずっと自宅におりましたので,時間だけはたっぷりあります。結局,6つのメニューのワークショップのコンテンツを,オンライン用にリニューアルしました。デモンストレーションやロールプレイを行わずに,それでも実践的に学べるようなオンライン・ワークショップを開催したいと考え,知恵を絞りました。

そういうわけで,2020年9月にオンライン・ワークショップの第一弾である「セルフケアのためのストレスコーピング入門」の開催を予定し,募集を開始したところ,なんと大盛況で,100名の定員がたちまち満席になりました。その流れで2020年12月6日に「認知再構成法」のワークショップを開催し,こちらも100名定員のチケットが売り切れとなりました。参加者の方々の反応がどうか,いささか心配だったのですが,おかげさまでどのワークショップも評価が高く,一時は危ぶまれたオフィスの存続も何とか大丈夫そうだ,と安堵したものです。そしてコロナ禍が明ける気配のない2021年度も,引き続きオンラインで一連のワークショップを続けております。

本書の企画はツイッターのつぶやきから始まりました。私は宣伝がてら,当機関のワークショップについて,特にオンラインのために全面リニューアルしたことなどを,時折つぶやいていたら,認知再構成法のワークショップの書籍化について「興味がある」と遠見書房の山内俊介さんより,リプライをいただきました。そこで12月6日のワークショップ終了後に,その動画を山内さんにお送りしたところ,「書籍化できそうだ」とのお返事をいただきました。そこからワークショップをテープ起こししたデータをもとに,コツコツと執筆する日々が続きました。半年以上,毎朝コツコツと原稿を書き貯めました。自分で言うのもなんですが,とても面白いワークショップですので,執筆は全く苦になりませんでした。「認知再構成法って,何て面白い技法なんだろう!」「認知再構成法について,何て魅力的に伝えるワークショップなんだろう!」(完全に手前味噌)をワクワクしながら執筆しました。

2021年10月13日にとうとう脱稿し,山内さんに原稿をお送りしたところ,「会場に座ってワークショップに参加しているような楽しさがあった」とのフィードバックをいただき,安堵しているところです(「やっぱりね!」という気持ちも同時にあったけれども)。山内さん,本書の書籍化に手を貸してくださり,本当にありがとうございました。余談ですが,山内さんは,私をスキーマ療法に出会わせてくれた方で,そのことについてめちゃくちゃ感謝しているのですが,本書のおかげで,感謝のタネがもう一つ増えました。多くの方々に本書を手に取ってもらうことで恩返しできればと思います。

認知再構成法とは,ひらたく言うと認知(頭のなかの思考やイメージ)の柔軟性を高めるための技法です。その具体的な内容や手続きについては本書に譲るとして,この技法は,うつや不安といったメンタルヘルスの問題を抱える人にとって,そして再犯予防を求められる人にとって,そしてさらにメンタルヘルスについてセルフケアのスキルを身につけたい全ての人にとって,非常に有効なものです。本書は,認知再構成法に関心のある全ての人にお読みいただけますし,認知再構成法を臨床現場で活用することに関心のあるセラピスト(カウンセラー,援助者,治療者,支援者)にお役立ていただけるものと確信しています。自分で言うのもなんですが,認知再構成法について,ここまで具体的に,詳細に,マニアックに解説した本は,日本にも世界にもないものと自負しています。皆様にはワークショップに参加しているかのようなお気持ちで,楽しんでいただければ幸いです。


2021年10月14日
自宅にて 伊藤絵美

 

 

 

 

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