世界一隅々まで書いた認知行動療法・問題解決法の本

世界一隅々まで書いた
認知行動療法・問題解決法の本

(洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長)伊藤絵美 著

2,600円(+税) A5判 並製 150頁 C3011 ISBN978-4-86616-153-2

念入りに 教えます! 使えるCBT

認知行動療法のなかでも守備・応用範囲の広い問題解決法のことを,微に入り細に入り,具体的に詳細に解説したのがこの本です。執筆者は,いま一番人気のカウンセリング・ルームの一つ,洗足ストレスコーピング・サポートオフィスの主宰で,認知行動療法のスペシャリスト伊藤絵美先生です。
本書は,1日にわたるワークショップをもとに書籍化したもので,ちゃんと学べる楽しく学べるをモットーに,深い講義をシンプルにまとめてもらいました。臨床家なら必携の一冊です。もちろんワークシートもついています。
大好評の「世界一隅々まで書いた認知行動療法・認知再構成法の本」の姉妹編です。

「世界一隅々まで書いた認知行動療法・認知再構成法の本」


主な目次

§1 問題解決法とはどういう技法か
§2 技法としての問題解決法
§3 問題解決法で用いるツール(ツール6)の使い方
§4 どのようなケースに問題解決法を導入するか?
§5 ケースフォーミュレーションの流れから問題解決法を導入してみる①
§6 ケースフォーミュレーションの流れから問題解決法を導入してみる②──問題解決法の具体的な手順:ツール6-1,6-2
§7 ケースフォーミュレーションの流れから問題解決法を導入してみる③──問題解決法の具体的な手順:ツール6-3
§8 ケースフォーミュレーションの流れから問題解決法を導入してみる④──問題解決法の具体的な手順:ツール6-4…
§9 ケースフォーミュレーションの流れから問題解決法を導入してみる⑤──問題解決法の具体的な手順:ツール6-5
§10 問題解決法の展開
§11 質疑応答




著者略歴

伊藤絵美(いとう・えみ)
公認心理師,臨床心理士,精神保健福祉士。洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長。慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。同大学大学院社会学研究科博士課程修了,博士(社会学)。専門は臨床心理学,ストレス心理学,認知行動療法,スキーマ療法。大学院在籍時より精神科クリニックにてカウンセラーとして勤務。その後,民間企業でのメンタルヘルスの仕事に従事し,2004年より認知行動療法に基づくカウンセリングを提供する専門機関「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」を開設。
主な著書に,『事例で学ぶ認知行動療法』(誠信書房),『自分でできるスキーマ療法ワークブックBook1&Book2』(星和書店),『ケアする人も楽になる認知行動療法入門 BOOK1&BOOK2』『ケアする人も楽になるマインドフルネス&スキーマ療法BOOK1&BOOK2』(いずれも医学書院),『イラスト版 子どものストレスマネジメント』(合同出版),『セルフケアの道具箱』(晶文社)などがある。

 


はじめに

 

みなさん,こんにちは。本書を手に取ってくださりありがとうございます。本書は,認知行動療法という心理療法のアプローチにおける,主に行動に焦点を当てた,汎用性の高い技法である「問題解決法」をテーマとしたものです。問題解決は,私が大学院修士課程に在籍中から研究のテーマとしており,修士論文も博士論文も,問題解決について書きました。つまり私にとってはとても馴染みのある,そして大切なテーマです。認知行動療法でも問題解決は重要なテーマであり,それについては本書の前半でたっぷりと書きましたが,技法としての問題解決法以前に,問題解決法は認知行動療法の哲学のようなものです。ですから認知行動療法を身に付けようという臨床家であれば,問題解決についてしっかりと理解しておく必要があると私は考えます。

ところで私は2004年より毎年,認知行動療法に関するさまざまなワークショップを開催し続けています。認知行動療法を提供できる実践家を増やしたいからです。というのも,認知行動療法がエビデンスのあるセラピーとして世界的に知られるようになっている反面,それをきちんと提供できる実践家が少ない,という問題が日本にはありました。その問題に対するささやかな解決策として,ワークショップを開催し,認知行動療法の基本的な考え方や主要な技法を,実践的に習得してもらおうと考えたのです。

さらに私は,それらのワークショップの書籍化を試みました。最初に出版したのは,2005年の『認知療法・認知行動療法カウンセリング初級ワークショップ―CBTカウンセリング』(星和書店)でした。これは文字通り「初級ワークショップ」を書籍化したもので,初級だから簡単ということではなく,ここに認知行動療法を実践するうえで基本となる重要な考え方やスキルが詰まっています。次に出版したのが,2010年の『認知行動療法実践ワークショップⅠ―ケースフォーミュレーション編(1)』(星和書店)です。これは認知行動療法で最も重要なケースフォーミュレーションの一端をご紹介した本です。この本を企画するにあたって,私は大きな野望を打ち立てました。トータルで何冊になるかわかりませんが,認知行動療法の実践において必要な考え方や技法を全て,このシリーズで書籍化してしまおう,というものです。それがこの本のタイトルにある「I」とか「(1)」といった数字に表れています。「I」の次に「II」「III」「IV」……,「(1)」の次に「(2)」「(3)」「(4)」……を想定していたのです。何年かかるかわからない壮大な計画でした。これをシリーズで書き上げるのを,ライフワークにしようと,当時の私は考えました。

しかしながら,この壮大な計画は頓挫しました。『認知行動療法実践ワークショップⅠ―ケースフォーミュレーション編(1)』を書いた時点で力尽きてしまったのです。これはケースフォーミュレーションの始め方について述べた本ですが,めちゃめちゃ詳細かつ具体的に書いたら,496ページにもなる分厚い本になってしまい,私は書き上げると同時に,燃え尽きてしまいました。そういうわけで,今でも「II」や「(2)」がいつ出るのか? もう出ないのか?と問われるときがありますが,もう出ません! というか出せません!という事態になってしまいました。

とはいえ,その続きに該当するような本を出したい,という思いは尽きず,ケースフォーミュレーションについて,その始め方だけでなく,プロセス全体をカバーした本を,その後出すことができました。それが2015年に出した『認知行動療法カウンセリング実践ワークショップ―CBTの効果的な始め方とケースフォーミュレーションの実際』(星和書店)という本です。本書でも繰り返し述べられますが,認知行動療法においてはしっかりとしたケースフォーミュレーションが不可欠です。ケースフォーミュレーションがきちんとなされてこそ,認知再構成法や問題解決法,エクスポージャーや行動活性化といった各技法の効果が発揮されるというものです。ケースフォーミュレーションが全ての土台になるのです。

そのケースフォーミュレーションについて,実践的な本を出すことができて,私はちょっと肩の荷が下りました。そして私が長年ワークショップを開催していながら,書籍化していないものが,認知行動療法の二大技法である,「認知再構成法」と「問題解決法」の2つとなりました。それについてはずっと引っ掛かりを感じてはいたのですが,日々の忙しさにまぎれて,あまり深く考えないようにしていました(回避!)。しかし,ようやくこの度,これらの技法について,それぞれ本を出すことが叶いました。その1冊が本書です。ちなみにもう1冊は2022年3月に出た『世界一隅々まで書いた認知行動療法・認知再構成法の本』(遠見書房)という本です。

本書の成り立ちについて簡単に説明します。認知再構成法についても,問題解決法についても,2004年から長年にわたって,会場を借りてのワークショップを開催しておりました。毎回60名ほどの方々が参加してくれており,ワークショップですから,座学だけでなく,私が皆さんの前でデモンストレーションをしたり,グループワークで皆さんにロールプレイをしてもらったりしていました。アンケートを取ると,なかなか好評で,今後も毎年,このような形式でワークショップを開催し続けようと考えておりました。

その計画を頓挫させたのが2020年に世界を襲ったコロナ禍です。コロナ禍によって,集合型のワークショップが開催不可能になってしまいました。飛沫を飛ばしながらデモンストレーションをしたり,ロールプレイをしたりすることはもってのほか,という世界になってしまったのです。私は困ってしまいました。というのも,ワークショップは私が運営するカウンセリングルームにとって重要な収入源でもあったからです。しかし,こういうときこそ「問題解決」です。私は解決策としてオンラインでワークショップを行うことを決意しました。そして自粛生活を送っていた2020年5月頃,たっぷりあった時間を活かして,認知再構成法と問題解決法のワークショップを全面的にリニューアルしました。オンラインなので,デモンストレーションやロールプレイを実践するのは難しく,そういう実践を交えずに,でもこれらの技法を実践的に伝える工夫をこらしました。そして2020年12月6日に認知再構成法のオンラインワークショップを,2021年1月17日に問題解決法のオンラインワークショップを開催するところまでこぎつけました。幸い,どちらのワークショップもともに定員の100名に達し,アンケートは好評でした。それらを動画に撮ったものを遠見書房の山内俊介さんに見ていただき,「書籍化しましょう」と言っていただきました。そこでそれぞれのワークショップをベースに全面的に書き下ろしたのが,『世界一隅々まで書いた認知行動療法・認知再構成法の本』と,本書です。これでようやく私自身が開催しているワークショップの書籍化が全て終わったことになります。「II」や「(2)」の本は出せませんでしたが,結果的には当初の野望が叶ったことになります。自分が世に出したいと願った本を全て出版できるとは,なんと幸せなことでしょうか。もう思い残すことはありません! これらの2冊の出版を引き受けてくださった山内さんには,感謝の念しかありません。ありがとうございました。

問題解決法は行動変容をもたらすとってもパワフルな技法です。読者の皆様にはぜひ,本書を通じて,この技法の魅力とパワーを感じ取っていただき,皆様の生活や臨床実践に活かしていただければと思います。

2022年3月12日
自宅にて 伊藤絵美

 

 

 

 

 

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