公認心理師の基礎と実践⑫ 発達心理学

公認心理師の基礎と実践⑫ 発達心理学

野島一彦・繁桝算男監修   (東北大学)本郷一夫 編

2,600円(+税) A5判 並製 224頁 C3011 ISBN978-4-86616-062-7

人の発達に対する理解を深める

発達は,受精直後から始まり,死に至るまでの心と体の変化のプロセスです。発達心理学を学ぶということは,①個々人の発達の多様性を学び,②人の発達に影響を与える要因を知り,③発達を時間的な連続の過程として理解し,④発達の遅れや歪みについて知ることです。人の発達に対する理解を深めるうえで,最適の一冊です。


目次

第1章 発達の過程と変化のメカニズム (東北大学名誉教授)本郷一夫

第2章 知覚・認知の発達 (北海学園大学経営学部)進藤将敏

第3章 言語・コミュニケーションの発達 (尚絅学院大学総合人間科学部)小泉嘉子

第4章 知能の発達 (東北福祉大学総合福祉学部)平川昌宏

第5章 運動の発達 (筑波大学体育系)澤江幸則・(弘前大学教育学部)増田貴人

第6章 感情の発達 (石巻専修大学人間学部)平川久美子

第7章 気質と性格の発達 (常磐会短期大学幼児教育科)糠野亜紀

第8章 遊びの発達 (宮城教育大学教育学部)飯島典子

第9章 親子関係の発達 (桃山学院教育大学人間教育学部)八木成和

第10章 仲間関係・きょうだい関係の発達 (東北学院大学文学部)高橋千枝

第11章 自己の発達 (仁愛大学人間生活学部)鈴木智子

第12章 発達障害と非典型発達 (京都教育大学特別支援教育臨床実践センター)相澤雅文

第13章 青年期の発達 (弘前大学教育学部)吉中 淳

第14章 成人期・老年期の発達 (東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)稲垣宏樹


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はじめに
「発達」と聞くと,赤ちゃんから成人までの時期における変化をイメージする人もいるかもしれません。たしかに,この時期に起こる変化も発達には違いありませんが,発達心理学が扱う発達は人の一生における変化です。すなわち,発達は受精直後から始まり,死に至るまでの心と体の変化のプロセスです。その点で,発達には何かを獲得していくだけでなく,何かを失っていく過程も含まれます。しかし,高齢者になったからといって,すべての能力が失われていくわけではありません。経験を通して豊かになった知識は熟達化され,英知となることも知られています。また,高齢者になるに従って,自分の生活をより充実したものだと捉える傾向が増すことも知られています。これは,エイジング・パラドクスといわれる現象です。
それでは,発達心理学を学ぶということはどのようなことでしょうか。大きく4つあります。第1に,個々人の発達の多様性を学ぶということです。「何歳になったら〇〇ができる」といった発達の標準的年齢を知ることも大切ですが,標準的年齢は多くの人の平均です。すべての人が標準的年齢通りに発達するわけではありません。むしろ,発達の標準的年齢通りに発達する人の方が少ないと考えられます。
第2に,人の発達に影響を与える要因を知るということです。一般に,人の発達に影響を与える要因としては遺伝と環境が考えられます。しかし,遺伝と環境の関係は単純ではありません。どの能力を取り上げるか,どの年齢段階かということによって,遺伝と環境の関わり方が違うと考えられます。また,ある種の遺伝的特徴をもっているとある種の環境を引きつけやすいといったような関係もあります。
第3に,発達を時間的な連続の過程として理解することです。すなわち,現在の発達は過去の発達から影響を受けると同時に未来の発達に影響を与えます。しかし,初期に劣悪な環境で育つと後の発達はうまく進まないわけではありません。その後,適切な働きかけがなされれば,十分に回復します。その点で,どの人も逆境に立ち向かう力,すなわちレジリエンスをもっています。
第4に,発達の遅れや歪みについて知ることです。その際,発達の遅れや歪みをその個人にとって固定的なものとして捉えるのではなく,変化する可能性があるものだと理解し,支援することが重要となります。すなわち,人は常に変化に対して開かれた存在だということです。
この本で発達心理学を学ぼうとしている人の多くは,公認心理師を目指す人でしょう。公認心理師には,人を尊重する基本的態度と多様な知識とが求められます。そのような観点から,本書を通して,人の発達に対する理解を深めていただければと思います。
(後略)

2018年7月 本郷一夫


編者略歴
本郷 一夫(ほんごう・かずお)
1955年生まれ。東北大学大学院教育学研究科教授。
1984年,東北大学大学院教育学研究科博士課程退学。
主な著書:『実践研究の理論と方法』(編集,金子書房,2018),『「気になる」子どもの社会性発達の理解と支援―チェックリストを活用した保育の支援計画の立案』(編集,北大路書房,2018),『子どもの理解と支援のための発達アセスメント』(編集,有斐閣,2008)ほか

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