学校で使えるアセスメント入門 ――スクールカウンセリング・特別支援に活かす臨床・支援のヒント

ブックレット:子どもの心と学校臨床(5)
学校で使えるアセスメント入門
――スクールカウンセリング・特別支援に活かす臨床・支援のヒント

(聖学院大学教授)伊藤亜矢子 編

1,600円(+税) A5判 並製 116頁 C3011 ISBN978-4-86616-149-5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スクールカウンセラーだけではなく,学校教員,養護教諭などすべての学校教職員に必須なのは,子どもを見る力。表情や学力はもちろん,置かれた環境や身体の問題,こころのあり様,友人関係,クラスでの立ち位置,家族の問題,潜在能力まで,アセスメントは多岐にわたります。本書は,教育心理学や学校心理臨床のプロフェッショナルたちが集まって,学校でのアセスメントをまとめた本です。児童生徒本人から学級,学校,家族,地域までさまざまな次元と方法で理解ができるアセスメントの知見と技術が満載の1冊。


主な目次
第1章 学校で見立てる,学校を見立てる──援助職のための学校アセスメント総論/伊藤亜矢子
第2章 学校でする子どものアセスメント①感覚統合・発達の偏り・不得意を見つけ得意を伸ばす/高橋あつ子
第3章 学校でする子どものアセスメント②絵画・表現・情緒表現の本質を見つめて/古池若葉
第4章 学校でする子どものアセスメント③知能検査・認知検査結果の教育現場への報告/安住ゆう子
第5章 学校でする子どものアセスメント④アセスメントに活かせる多様なツール/小山充道
第6章 学校での保護者のアセスメント──家族システム・格差・背景/安江高子
第7章 学校のアセスメント──そのポイント/長谷川智広
第8章 学級のアセスメント①学級風土を見立てる/伊藤亜矢子・宮部 緑
第9章 学級のアセスメント②教師の指導スタイルと学級経営の見立て/弓削洋子
第10章 いじめのアンケートを作る・読む・活用する/大西彩子
第11章 学校の緊急支援とアセスメント/窪田由紀


編者略歴

伊藤亜矢子(いとう・あやこ)
聖学院大学教授。東京大学大学院博士課程満期退学。臨床心理士・公認心理師。北海道大学,札幌学院大学,お茶の水女子大学,名古屋市立大学を経て,現職。訳書に『いじめっ子・いじめられっ子の保護者支援マニュアル』(金剛出版,2015),編著に,『改訂版 学校臨床心理学』(北樹出版,2009),『エピソードでつかむ児童心理学』(ミネルヴァ書房,2011),『臨床心理学地域援助特論』(放送大学出版,2021)など。


はじめに


学校は,支援のチャンスやアセスメントの機会にあふれている。学校にいる時間は長く,子どもの成長に心を砕く大人が大勢いる。授業や休み時間,特別活動,部活動……。多種多様な活動があることは,それだけ多様な支援とアセスメントが可能になる。また,学校は,子どものために心を砕く大人が大勢いる環境だから,アセスメントがしっかりしてれば,複数の大人が少しずつ関わることで,大きな支援が可能になる。見立てと方針が共有されれば,スクールカウンセラーも教師も,力を合わせて,それぞれの立場から子どもを支援できる。しかし反面,学校では,大勢の子ども達と大勢の大人が動きまわり,多種多様な活動をするために,情報があふれすぎてしまう。情報が何を意味するのか,多くの情報から何をピックアップしたらよいのか,情報を繋ぎ合わせて,子どもや子ども集団をどう理解したらよいのか。あるいは,情報の舞台となっている学校や学級そのものを,どう捉えたらよいのか。情報があふれすぎると,流れていく情報の「地」から,必要な情報を選択して見立ての「図」を描くことが難しくなる。そのようななかで,学校で使えるアセスメントの技や工夫を集めたのが本書である。学校では,子ども個人をじっくり見つめ理解する時間は確保しにくく,子どもひとりに関われる時間も少ないかもしれない。しかし,上記のようなあふれる情報を整理できれば,あるいは,そこで何らかのツールを想定して関わることができれば,子どもを理解する手がかりはたくさんある。アセスメントは心理職の得意技である。教師には教師独自の,子どもを理解する目があり,手立てがある。同時に,心理職には,臨床心理学・発達心理学・教育心理学などの知識や,臨床経験,各種のアセスメントツールなど,心理職ならではの「技」がある。「技」があるからこそ,教師の見立てに心理職の見立てが重なることで,相互により的確な見立てができる。そうした見立ては,もちろん,スクールカウンセラーや特別支援教育の個別の対応を効果的なものにし,多職種連携の鍵になる。また,個別の支援だけでなく,校内の教育活動全般を考えても,子どもの成長を促す関わりには,子ども「集団」に「何を教えるか」,も大切だが,同時に,子ども各人が「潜在的に何を必要としているか」,つまり潜在的な「支援ニーズ」の把握も欠かせない。個人の「支援ニーズ」を適切に把握できれば,個人への関わりはもちろん,そうしたニーズのある子どもがいる「集団」に何を投げかけ,どう導くのかも見えてくる。もしも,個々のニーズや状態の把握がうまくいかなければ,集団への投げかけは,やみくもで一方通行なものになり,子どもも大人も疲弊してしまう。アセスメントは,そうしたリスクを回避して,教育活動全般を効果的にする手立てにもなる。このように,的確なアセスメントは,学校内の誰にとっても重要で有益であり,学校でのさまざまな子どもへの関わりに活かすことができる。本書は,多様な立場の執筆者が,それぞれに学校で活用しているアセスメントの切り口を,各章のテーマごとに,具体的に示すことを意図した。子ども個人のアセスメントだけでなく,学校や学級そのものをアセスメントしながら,成長の場と個人の双方に働きかけられるように,個人・学級・学校のアセスメントの工夫が含まれている。

アセスメントは,スクールカウンセラーと学校の大きな「力」になる。毎日の関わり,毎日の学校生活は,子どもにとって大きな成長の支えである。的確に「理解」されることで,子ども達一人ひとりの成長が,さらにしっかりと支えられ促進されるよう,本書が少しでも役立てば,心より幸せである。

著者

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