『認知療法・マインドフルネス・潜在的価値抽出法ワークブック』セラピスト・マニュアル──行動分析から次世代型認知行動療法までを臨床に生かす

『認知療法・マインドフルネス・潜在的価値抽出法ワークブック』セラピスト・マニュアル
──行動分析から次世代型認知行動療法までを臨床に生かす

(鳥取大学医学部教授・公認心理師・臨床心理士)竹田伸也

本体1,800円(+税) ISBN978-4-86616-128-0 C3011 四六判並製 112頁

 

 

 

 

 

 

第一世代から第三世代の認知行動療法──応用行動分析,認知療法,マインドフルネス,アクセプタンス&コミットメント・セラピーなど──を,一般の方でもわかりやすく,独習が可能なように使いやすくしたものが『認知療法・マインドフルネス・潜在的価値抽出法ワークブック』。本書では,ワークブックの特徴,理論,臨床におけるポイントなどを専門家向けに書きました。また,潜在的価値抽出法という「豊かさ」をキーワードにした新しい認知行動療法についても詳述がされています。
『認知療法・マインドフルネス・潜在的価値抽出法ワークブック』を臨床場面で使われる前にぜひご一読ください。

関連書→『認知療法・マインドフルネス・潜在的価値抽出法ワークブック』


主な目次

(1)支援を機能させるための準備の章
(2)生きづらさの章
 認知的紐づけ編
  体験の回避編
(3)心の柔軟性の章
 認知療法編──考え方の幅を広げる力を育むことを目指す──
 マインドフルネス編──今を存分に味わう力を育むことを目指す──
(4)価値にかなった暮らしの章
  価値にそった行動編──豊かさに向いた行動変容を支える──
 潜在的価値抽出法編──マイナス思考に潜在する価値を見出す──


著者紹介

竹田伸也(たけだ・しんや)
 鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻教授。博士(医学),公認心理師,臨床心理士,認知行動療法スーパーバイザー。香川県丸亀市生まれ。鳥取大学大学院医学系研究科医学専攻博士課程修了。

 鳥取生協病院臨床心理士,広島国際大学心理科学部講師,鳥取大学大学院医学系研究科講師,准教授を経て現職。日本老年精神医学会評議員,日本認知症予防学会代議員等を務める。
 「生きづらさを抱えた人が,生まれてきてよかったと思える社会の実現」を臨床研究者としてもっとも大切にしたい価値に掲げ,研究や臨床,教育,執筆,講演等を行っている。
 主な著書に,『認知行動療法による対人援助スキルアップ・マニュアル』(遠見書房,2010),『マイナス思考と上手につきあう認知療法トレーニング・ブック─心の柔軟体操でつらい気持ちと折り合う力をつける』(遠見書房,2012),『対人援助職に効くストレスマネジメント―ちょっとしたコツでココロを軽くする10のヒント』(中央法規,2014),『心理学者に聞くみんなが笑顔になる認知症の話─正しい知識から予防・対応まで』(遠見書房,2016),『対人援助の作法―誰かの力になりたいあなたに必要なコミュニケーションスキル』(中央法規,2018),『クラスで使える! アサーション授業プログラム―自分にも相手にもやさしくなれるコミュニケーション力を高めよう』(遠見書房,2018)など多数。

 


まえがき


本書は,『一人で学べる 認知療法・マインドフルネス・潜在的価値抽出法ワークブック──生きづらさから豊かさをつむぎだす作法』の支援者向けマニュアルです。
私は,2012年に認知療法を用いたセルフヘルプ本である『マイナス思考と上手につきあう認知療法トレーニング・ブック――心の柔軟体操でつらい気持ちと折り合う力をつける』(以下,『トレブック』)を遠見書房より上梓しました。これは,当時認知療法が保険適応されたものの,国内にはまだ十分に認知療法を実践できる支援者が育っていないことを背景とし,認知療法を用いたセルフヘルプを,ワークブックを通して誰もが行えることを意図して作り上げました。また,同時期に『「マイナス思考と上手につきあう認知療法トレーニング・ブック」セラピスト・マニュアル』を出版しました。こちらは,『トレブック』の名を冠しているものの,実際は標準的な認知療法をクライエントに応じてはじまりからおわりまで確実に行うための「支援者のための認知療法実践マニュアル」でした。大変ありがたいことに,『トレブック』は多くの方にお読みいただき(2021年2月現在,9刷21,500部),この本が狙いとしていた一定の役割を担うことができたのではないかと考えています。
あれから9年近くの年月を経て,このたび新たに一般向けの本と支援者向けの本を上梓することになりました。それが『認知療法・マインドフルネス・潜在的価値抽出法ワークブック』(以下,『ワークブック』)と本書です。『ワークブック』と『トレブック』の違いは何でしょうか。
まず,援用している技法の違いがあります。前作が認知療法に焦点を当てていたのに対して,今作は認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy;CBT)を全般的に援用しています。第一世代といわれる応用行動分析(Applied Behavior Analysis;ABA),第二世代といわれる認知療法,第三世代といわれるマインドフルネスやAcceptance and Commitment Therapy(ACT)を援用しているのが,『ワークブック』を読むとおわかりいただけると思います。このうち,ABAは行動と環境との相互作用を分析し,行動変容に影響した要因を明らかにしながら,問題解決を目指すアプローチを表わします。認知療法は,認知の変容を通して不快な感情の改善を始めとした問題解決を目指すアプローチを表わします。マインドフルネスは,「今ここ」での体験に評価を交えず注意を向けることにより得られる気づきを大切にするアプローチを表わします。ACTは,心理的柔軟性,すなわち「心を開いて」「今ここに集中しつつ」「自分が大切にしたいことをする」というスタイルを養うことによって,問題解決を目指すアプローチを表わします。そして,『ワークブック』の最後に,第一世代から第三世代のどのカテゴリーにも属さない“潜在的価値抽出法”を紹介しました。
このように多様なCBTを援用した理由は,『ワークブック』が狙いとしていることが『トレブック』とは大きく異なるからです。そしてそれこそが,『ワークブック』を上梓する大きな理由となりました。『トレブック』では,マイナス思考で苦しむ人を対象として,「つらさと折り合いをつける」ことを目的としていました。そのための方法として,認知療法は最適なアプローチの1つであることは間違いありません。それに対して,今回の『ワークブック』ではつらさと折り合いをつけるという立場を超えて,「豊かな人生をつむぎだす」ことを目的としています。前作が「つらさという穴を塞ぐ」というネガティブな世界を平らにするイメージなのに対して,今作は「人生という地平に豊かさを育てる」という,より積極的に人生に関わろうとするイメージを伴います。
そして,今作が対象とする人々は,マイナス思考や心の不調に苦しむ人を対象としていた前作と大きく異なります。なぜなら,「豊かな人生を送る」ことは,すべての人に開かれているからです。豊かな人生を送るためには,お金が十分になければならないとか,体が健康でなければならないなどの条件が前提となると信じている人は少なくないかもしれません。けれども,そうだとしたら豊かな人生を送るのは,一部の人にだけ開かれたハードルの高い営みとなってしまいます。裕福であろうがなかろうが,病気や障がいを得ていたとしても,残された時間がわずかだったとしても,そのほかどのような制限を抱えていても,豊かな人生に向かうことはできる。今作が読者に伝えたいメッセージとそのための営みはそこにあり,だからこそ今作はあらゆる人を対象としています。
したがって,『ワークブック』と本書で援用している認知行動療法のさまざまなモデルは,誰もが「豊かな人生を送る」ことを射程にとらえています。『ワークブック』をクライエントに「処方」していただき,本書では『ワークブック』にそった支援を進めるうえで支援者に理解してもらいたいことを中心に解説しています。ABAや認知療法,マインドフルネス,ACTの考え方や進め方については,本書の巻末に紹介している参考文献を参照してください。

 

 

 


 

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