混合研究法の手引き――トレジャーハントで学ぶ研究デザインから論文の書き方まで

混合研究法の手引き
――トレジャーハントで学ぶ研究デザインから論文の書き方まで

マイク・フェターズ,抱井尚子 編

本体2600円+税 ISBN978-4-86616-120-4 B5判並製 136頁 C3011

質的研究と量的研究を統合する実践研究アプローチである混合研究法。本書は,優れた混合型研究論文を10のポイントを押さえて読み解くことで,混合研究法を実践するためのノウハウが学べる本です。なんのために混合研究法を用いるのか,どのように研究をデザインするか,質的・量的データをいかに統合するか,そこにどんな相乗効果が生まれるのか。
研究計画から論文執筆まで,質的研究と量的研究のハイブリッドでより真実に迫る混合型研究の進め方を,トレジャーハント(宝探し)感覚で一から学べるユニークな入門書です。
さあ,あなたも本書をガイドに混合研究法の世界に乗り出そう!


目 次
第1章 トレジャーハント(宝探し)で学ぶ混合研究法 マイク・フェターズ
第2章 収斂デザイン論文のトレジャーハント 抱井尚子
第3章 説明的順次デザイン論文のトレジャーハント 河村洋子
第4章 探索的順次デザイン論文のトレジャーハント 稲葉光行
第5章 コミュニティを基盤とした参加型デザイン論文のトレジャーハント 井上真智子
第6章 介入デザイン論文のトレジャーハント 抱井尚子
第7章 多段階評価デザイン論文のトレジャーハント 河村洋子/尾島俊之
第8章 事例研究型デザイン論文のトレジャーハント 本原理子/榊原 麗/エレン・ルビンスタイン/マイク・フェターズ
第9章 複合型評価研究デザイン論文のトレジャーハント エレン・ルビンスタイン/榊原 麗/本原理子/マイク・フェターズ
第10章 トレジャーハントで学ぶ混合型研究論文の執筆と査読 マイク・フェターズ/抱井尚子


編者略歴
マイク・フェターズ(Michael D. Fetters)
ミシガン大学メディカルスクール家庭医療学科教授。
オハイオ州立大学メディカルスクール修了。医学博士。
ノースカロライナ大学チャペルヒル校公衆衛生大学院 修士課程修了。修士(臨床疫学)。ミシガン州立大学Interdisciplinary Program in Health and Humanities大学院修士課程修了。修士(人類学及び医療倫理学)。米国家庭医療専門医。ミシガン大学混合研究法プログラム共同創設者兼ディレクター(2015-現在)。ミシガン大学日本家庭健康プログラムディレクター(1994-現在)。混合研究法国際学術誌Journal of Mixed Methods Research(SAGE発行)共同編集長(2015-現在)。日本混合研究法学会特任理事(2015-現在)。
主な著書に『The Mixed Methods Research Workbook: Activities for Designing, Conducting and Publishing Projects』(単著,2020,SAGE)。

抱井尚子(かかい ひさこ)
青山学院大学国際政治経済学部国際コミュニケーション学科教授。
ハワイ大学大学院教育研究科 博士後期課程修了。博士(教育心理学)。
混合研究法国際学術誌 Journal of Mixed Methods Research(SAGE発行)常任編集査読委員(2007年-現在),International Journal of Social Research Methodology(Routledge発行)常任編集査読委員(2008-2013),日本混合研究法学会理事長(2015-現在)。
主な著書に『混合研究法入門―質と量による統合のアート』(単著,2015,医学書院),『コミュニケーション研究法』(共編著,2011,ナカニシヤ出版),翻訳に『グラウンデッド・セオリーの構築―社会構成主義からの挑戦』(共監訳,2008,ナカニシヤ出版)など。


序 文
本書は,混合研究法を用いた経験的研究(以下,混合型研究)を実施する際と評価する際に重要となるキーポイントをわかりやすく解説する目的で書かれました。それぞれのキーポイントは宝探しの「宝」にたとえられ,すでに出版された混合型研究論文をお読みいただき,そこからゲーム感覚で宝(キーポイント)を読者に探していただくという形をとっています。
混合型研究論文の宝探しというコンセプトは,2016年8月に東邦大学看護学部で開催された第2回日本混合研究法学会のプレカンファレンスワークショップを実施するにあたり,講師であった第一編著者のマイク・フェターズによって考案されました。当時同学会の理事長を務めていた第二編著者の抱井が,大会のプレカンファレンスワークショップで混合型研究論文の評価方法をご教示いただきたいとリクエストしたところ,このようなユニークかつ楽しいエクササイズがフェターズによって考案されました。いうまでもなく,当日のワークショップは大変盛り上がり,参加した方々には大変満足していただけたことが事後アンケートからもわかりました。その後,評価のポイントは,研究を実施する上で留意するポイントでもあるということに気づきました。そして,私たちは偶然生まれた混合型研究論文のこの宝探しゲームを,混合研究法を用いて研究を実施してみたいと考えている多くの研究者に届けるために,本書の執筆に取り組んだというわけです。
混合研究法の日本語の書籍は,年々その数を増やしています。2015年の日本混合研究法学会創立以降,特にそのペースが加速しました。2015年には,本書第二編著者の抱井が日本人の研究者として日本語で上梓した『混合研究法入門―質と量による統合のアート』(医学書院)が出版され,立命館大学大阪いばらきキャンパスで開催された第1回国際混合研究法学会アジア地域会議(2015年)の基調講演,パネルディスカッション,ワークショップを収載した日本混合研究法学会編集の『混合研究法への誘い─質的・量的研究を統合する新しい実践研究アプローチ』(遠見書房)が2016年に出版されています。続いて2017年にはJohn W. CreswellによるA Concise Introduction to Mixed MethodsResearch(2014, SAGE)の訳本『早わかり混合研究法』(抱井尚子訳,ナカニシヤ出版)と,Abbas M. Tashakkori&Charles B. TeddlieによるFoundations of Mixed Methods Research: Integrating Quantitative and Qualitative Approaches in the Social and Behavioral Sciences(2009, SAGE)の邦訳である『混合研究法の基礎:社会・行動科学の量的・質的アプローチの統合』(土屋敦・八田太一・藤田みさお共訳,西村書店)が出版されています。これらの書籍ならびに日本混合研究法学会が開催する年次大会,同学会が国際混合研究法学会と共同で隔年開催するアジア地域会議が提供するワークショップやセミナー,本書第一編著者のフェターズが2012年以来静岡県掛川市で定期的に開催してきた医療者向けのワークショップや第二編著者の抱井の本務校である青山学院大学にて不定期に開催してきた混合研究法セミナーといったさまざまな学びの機会を通して,混合研究法の基礎知識は日本においても広く浸透し始めているのではないかと推察します。
そのような中で,混合型研究の具体的な実施方法について解説した日本語の書籍は管見の限りありませんでした。本書がその第一号となることは間違いないと思います。また,混合型研究のキーポイントをゲーム感覚で学べるという点も他には類を見ない本書の特徴であると言えます。この宝探しゲームを,インストラクターの方々に授業内のアクティビティとしてお使いいただくこともできますし,ワークショップなどでお使いいただくこともできます。本書を媒介に学習者の間に協調学習の場を構築することもできるでしょう。チームに分かれて競争するというのも,ワクワク感があって学習動機が高まりそうです。また,宝探しは対面授業のみならずオンライン授業にも利用可能です。
本書の構成は次のとおりです。まず,第1章で宝探しのポイントを説明しています。ここでは,混合型研究を実施する上で,また混合型研究論文の査読をする上で,押さえなければならない10のキーポイント(宝)を解説しています。この章は,続く第2章から第9章の宝探しゲームのルールブックに相当するものですので,飛ばさずに必ず,そして注意深く読むようにしてください。第2章から第9章は,混合研究法のデザイン別にサンプルとなる研究事例を取り上げ,宝探しのポイントを解説しています。第2章から第4章までの3章は混合研究法の基本型デザインをカバーしています。第2章は収斂デザイン,第3章は説明的順次デザイン,そして第4章は探索的順次デザインを取り上げています。続く第5章から第9章までは混合研究法の応用型デザインを扱っています。第5章はコミュニティを基盤とした参加型研究(CBPR)デザイン,第6章は介入研究デザイン,第7章は多段階評価研究デザイン,第8章は事例研究デザイン,そして第9章はさまざまな基本型デザインを複雑に組み合わせた複合デザインです。混合研究法デザインは研究の目的によってさまざまな形になり得ると思いますが,まずはこれらの7つのデザインを足がかかりに,混合型研究の構造を理解していただければと思います。なお,第1章をお読みいただいた後は関心のあるデザインの章に飛んでいただいても構いませんが,初学者の方は第1章から順を追って読み進めるとよいでしょう。
本書は混合研究法初学者からある程度経験をおもちの方まで,幅広く役立てていただける内容になっております。初学者の方は,ご自分の混合型研究を計画する前に本書をお読みいただき,研究の中に含むべきポイントを確認していただきたいと思います。また,混合研究法経験者の方々には,本書を混合研究法の教育や論文査読の際にお役立ていただけたらと思います。
最後に,本書の執筆にあたっては多くの方々のお力添えを頂きました。ミシガン大学図書館著作権局及び同局Xu Yuanxiao(许远箫)氏には,著作権に関するさまざまなアドバイスをいただきました。遠見書房の駒形大介氏には本書の完成を辛抱強く見守っていただきました。この場をお借りして改めてお礼を申し上げます。最後に,常に私たち日本の研究者に寄り添い,その学びのプロセスに惜しみなく手を差し伸べてくださるJohn W. Creswell先生に敬意と感謝を表したいと思います。

著者一同を代表して
マイク・D・フェターズ
抱井尚子


 

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