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088TAT

TAT〈超〉入門
──取り方から解釈・病理診断・バッテリーまで

赤塚 大樹・土屋 マチ著

定価2,500円(+税) 四六判 206頁 並製

ISBN978-4-86616-088-7 C3011
2019年5月発行

類書→『投映法研究の基礎講座』『誘発線描画法実施マニュアル

ロールシャッハに次ぐ投映法検査と言われるTAT(マレー版)。31枚の図版からなるこの検査は,絵を被検査者に見てもらい,そこに浮かぶ物語りを聞くことで,クライエントの病理診断や性格特性など多くのことが理解できる有効なツールの1つ。
本書は,「TATに興味はあるものの,まわりに実践者がいない」「TATはやったことがあるが,もう一段階理解を深めたい」といった初学者から中級者に向けて書かれたTATの入門書です。TATの本当に基本的な行い方や,各図版に現れやすい臨床情報,分析や解釈の方法,フィードバック面接,他の心理検査とのテスト・バッテリーの組み方など,TATにかかわるすべてのことがわかりやすく解説されています。


目 次

第0章 TATへの超入門の章
第1章 TATへの誘い
第2章 臨床判断学としての心理アセスメント
第3章 TATという方法
第4章 TAT図版から捉えられる臨床情報
第5章 TATで病態水準を捉える試み
第6章 精神病理学的アセスメントをするための情報
第7章 TATの分析と解釈の進め方
第8章 事例──TAT分析・解釈の実際
第9章 TATでのアセスメントを心理療法へ繋げる──フィードバック面接
第10章 テスト・バッテリー論
第11章 テスト・バッテリーの実際─双極Ⅱ型障害をTATとロールシャッハ法のバッテリーで捉える


著者紹介

赤塚大樹(あかつか・だいじゅ)
名古屋大学大学院修了
中部労災病院,中京女子大学,愛知県立大学,岐阜聖徳学園大学を経て
現在,愛知県立大学名誉教授
専門は,精神分析学的臨床心理学,投映法による心理アセスメント
〈主要著書〉「心理臨床アセスメント入門」培風館,共著(1996),「精神保健の見方,考え方」培風館,共編著(2000),「高齢者の心理と看護・介護」培風館,共編著(2002),「TAT解釈論入門講義」培風館(2008),「医療・看護系のための心理学〔改訂版〕」培風館,共編著(2010)

土屋マチ(つちや・まち)
名古屋大学大学院教育発達科学研究科心理発達科学専攻博士課程修了
博士(心理学)
愛知淑徳大学を経て,山梨英和大学人間文化学部専任講師(臨床心理学・心理臨床アセスメント)
〈主要論文〉土屋マチ(2012)ロールシャッハ法とTATを用いた双極Ⅱ型障害のアセスメント/「心理臨床学研究」29, 739-749,土屋マチ(2016)双極Ⅱ型障害のアセスメント~ロールシャッハ法,TATが捉える病態像の比較検討/「心理臨床学研究」34, 173-183,土屋マチ(2018)訪問カウンセリングにおける治療構造の検討~教育相談としての一つの試み~/「岐阜聖徳学園大学紀要・教育学部編」57, 95-111。


第0章 TATへの超入門の章(抜粋)

この章は,この「TAT入門」の第1章から始まる流れ,すなわち臨床の場で,私たちの目の前にいる臨床心理学的援助を求めている人(クライエント)のTATによる臨床心理学的アセスメントをどのように進めていくのかというTATを使って心理臨床的判断をするというプロフェッショナルな流れとは別の目的のために設定した特別な章です。
この章が必要でない方は,普通に第1章から入っていただき,この章が必要な方は丁寧にこの章から始めてください。この章が必要な方とは,「TATって,どんなものでどういう風に実施するのか知らない人」「心理学を勉強しているけれど,TAT図版を見たことない人」「臨床心理アセスメントの講義は受けたけれど,投映法検査にはロールシャッハ法とTATがあると教えてもらっただけですという人」たちのことです。
TATへの導入部分について,まるで講義をするように説明してある書物はありません。そればかりでなく,TATへの導入から分析・解釈まで教えられる教師の数は極めて少ないのが現状です。TATは現状においては,ロールシャッハ法のように記号化して,TATストーリィを分析していくという一定の方法論を基本的に持っていません。ある特定な心理特性については,分類して記号化するという分析をしていく立場から理論化(本書第1章2節参照)している人はいますが,TATストーリィの全体を記号化していくという分析・解釈理論はありません(私は,そういう分析・解釈のための便利な記号化する方法は,TATの世界にはない方がよいと考えています。全体を記号化してある程度数量化して分析・解釈するならば,TATではなくロールシャッハ法を実施すればよいし,その方がはるかに優れていると感じています)。
以下は私が,心理学科の3年生で心理臨床に関心を持ち始めた超入門段階の学生に対して実際に行っている講義の方法とその内容です。実際に講義している口調で綴りました。そのため,研究者の名前も,私との距離感によって○○先生という風になったりしています。

(以下,略)

あとがき

やっと,TATの専門書の出版にこぎつけました。いろいろな思いが湧き上がります。
最初に私の本の中で,TATに触れたのは,1996年の『心理臨床アセスメント入門』(培風館)の中でした。その後,Stein, MIの”The Thematic Apperception Test”を訳したいと出版社に相談していた時,「自分で書いたら」と言われて,出来上がったのが『TAT解釈論入門講義』(2008年,培風館)でした。大学で多忙な時期だったので,この仕事には10年近くの時間がかかってしまいました。この本は,私のTAT論の足場となったもので,この『解釈論入門講義』の教科書を使って,非常勤先の大学で,お願いして通年開講にしてもらったTATの講義を担当しながら,私は教科書の余白に講義をしながら考えたこと,理論修正したいと思ったこと等の書き込みをしていきました。
まだ,教科書を使わないで手作りの資料のみでTATの授業をやっていた頃,学部3年生対象の授業であったにもかかわらず,毎年数人の大学院生が受講に来ていました。その大学院生たちは,投映法の勉強にとても熱心で,車で30分くらいかかる私の大学の研究室まで隔週の頻度で夕方以降に,勉強に通って来ていました。このような大学院生たちは,トータルで50人を超えるだろうと思います。みんなエネルギーに溢れており,私はこの大学院生たちに刺激されて今までやってこれたのだと思う時があります。今もこの時の大学院生の中の10人くらいとは,ほぼ毎月のように事例検討会を継続しています。
そういう元大学院生の中の一人に,精神科クリニックで担当している症例の相談に,皮革のライダーズジャケットをまとい,イタリア製の赤い大型バイクに乗ってやってくる女性がいました。それが今回の共著者,山梨英和大学の土屋マチさんでした。土屋さんが相談のために書いてくるレポートは,「今回は患者さんの何について相談したいのか,自分ではどのように考えてこのように対処しているけれど……という前提から始まって,ある治療セッションにおける言語的やり取り,その時の患者さんの様子,さらに自分が治療中に考えたこと,患者さんの退室後に残った印象と考えたこと」等が極めてしっかりとびっしり書かれていた。これは今でも,とても印象に残っている。
その後,土屋さんは大学院博士・後期課程に進学し,Rorschach法とTATをtest batteryにすることを通して双極Ⅱ型障害の特徴である「軽躁」をきめ細かく捉えるという挑戦的な研究で学位を取得しました。赤い大型バイクに乗って持ってきた「非常に丁寧な臨床レポート」を思わせる分析方法で「軽躁の病理」を捉えたものでした。その一部が本書に収められております。こういう入門levelを超えた内容を,本書に盛り込むことができました。そういう意味では,本書は超入門から超応用までの深みをもっていると考えています。
最後に,遠見書房社長の山内俊介さんには,こういう出版状況の超厳しい中で,多くの出版社が手を出したくないTAT本の出版を引き受けていただきました。3人でお酒を酌み交わしながら「なぜですか」と訊いたのですが,なぜ話に乗っていただけたのか曖昧なまま,予定から少し遅れましたが,一通り原稿作成を終えました。山内さんからの「第0章があるといい」とのadviceを受け,0章を書いたら,本全体が生きてきました。「あとがき」を1,200字くらいで書いてくださいと言われ,「あとがき」を書き,山内さんの温かさをしみじみと感じ入っているところです。私たちは,山内さんとの出会いを心から感謝しております。

2019年4月の終わり頃 著者を代表して 赤塚大樹