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147-4谷口発達臨床

発達臨床心理学―脳・心・社会からの子どもの理解と支援

谷口 清 著

定価2,800円(+税) A5判 208頁 並製
ISBN978-4-86616-047-4 C3011
2018年3月発行

子どもの成長過程で出合うさまざまな困難(不適応)――アタッチメントの形成不全や虐待,学習症(LD)・注意欠如・多動症(ADHD)・自閉症などの発達障害,いじめや不登校――をいかに支援するか。
本書は,長く自閉症者の脳機能研究やスクールカウンセラー等教育相談に携わってきた著者が,生物・心理・社会の視点から子どもの発達と困難を明らかにし,その支援のあり方を探った。
子どもの健やかな成長と家族および社会の幸福に寄与することを目指す発達臨床心理学の入門書。


目次
第1章 発達臨床心理学の対象
第2章 コミュニケーションと対人関係の発達
第3章 発達における遺伝と環境の相互作用―発達のしくみ
第4章 アタッチメントの形成と障害
第5章 発達と障害
第6章 限局性学習症と注意欠如・多動症
第7章 自閉症の情報処理
第8章 学童期・思春期における心の発達と学校不適応
第9章 発達臨床とアセスメント
第10章 社会の変化と発達臨床


著者略歴
谷口 清(やぐち きよし)
文教大学教授。教育学博士,臨床心理士。
1974年,東京教育大学心理学科卒業,1981年東北大学教育学研究科博士後期課程退学。
秋田大学助教授・教授,東京慈恵会医科大学教授を経て2005年より現職。
専門は生理・神経心理学,発達心理学,発達臨床心理学。

主な著書
『スクールカウンセラー活用マニュアル』(細川・藤原・谷口編著,コレール社),『生理心理学と精神生理学(第Ⅰ巻)』(坂田・山田編,北大路書房;分担),『講座臨床心理学3 異常心理学Ⅰ』(下山・丹野編,東京大学出版会;分担),『障害児心理学』(松野・茂木編,全障研出版部;分担)


はしがき
今年は公認心理師元年である。この年に本書を刊行できることを喜んでいる。本書は著者が担当している同名授業の講義録をまとめたものであり,大学のテキストとして使われることを意図している。あわせて教育相談や発達臨床に関わる多くの人の手に取っていただけることを願っている。また,学校の先生方や幼児教育・保育,小児医療,精神医療,児童福祉,犯罪・非行など,子どもの発達に関わる多くの方々の目に留まることができれば幸いである。
(略)
本書は「脳・心・社会」という副題が示すように,生物・心理・社会という集学的,統合的アプローチを図っている。その意味では小嶋の接近法より,やや広い。発達科学の立場に立っているが,発達臨床の観点からは個人への支援に焦点があり,あえて発達臨床心理学の名称とした。アタッチメントの視点を中核とするところは小嶋の書と変わらない。
本書は対人関係能力(コミュニケーション能力)の形成を基本的視点とし,発達障害をもう1つの座標軸として,両者の交絡の中に現れる適応,不適応の現象を,自我の発達と防衛という観点から,可能な限り統一的に理解しようとした。それが果たせているかどうかは読者のご批判に委ねるしかない。
私自身は心理学を個人や集団の判断・意思決定の仕組みに関する学問と理解している。心理学を学び,研究する目的は人の情報処理システム(判断,意思決定システム)としての心のしくみを明らかにし,その心のしくみから判断や意思決定の特性や限界を知り,決定的な誤解・錯誤を予防して正確な意思決定と円滑なコミュニケーションの実現を図ることにある。
子どもはこの意思決定システムの形成過程上にあり,当然認識・判断の及ぶ範囲には限界がある。持てる判断能力を的確に発揮するためにはアタッチメントを基礎とする安全感・安心感が担保されていなければならない。本書では子どもたちの問題行動や不適応行動の現れをこの安心感・安全感を脅かすストレスとの関係で理解しようとした。
発達とその障害を脳科学の観点から解説した書籍は最近増えているが,本書の特色は脳科学に基礎を置きつつ,発達臨床の観点から子どもの内面に踏み込んで支援の在り方を考察しようとしているところにあると自負している。ただし考究すべき要因は多岐にわたるところから,当然最新の知見を網羅するのは個人の力では無理がある。この領域で概括的に理解されている知識を整理し,その理解の骨格を示したに過ぎない。必要な事項が適切に取り上げられているかどうかについては,読者のご叱正に待ちたい。
(略)
子どもの不適応行動の背景を見てみると,子どもを取り巻く人々の間に重要な点で理解のズレがあることが多い。まずは子どもの生活の成り立ち,組み立てという観点から,起こっていることの正確な理解を共有し,相互に無理のない範囲で向き合い方を自然に改善していくことが肝要である。その正確な理解のための分析と情報提供が心理臨床家(公認心理師)等の専門家の役割である。そのような観点から,それぞれの不適応行動に対してどのような配慮が望ましいかについては可能な限り触れ,読者の参考に供することにした。
本書に重なる問題を取り上げる領域としては教育臨床心理学や学校(臨床)心理学があり,また障害児心理学も重なる部分が多いと思われる。類書と共に本書が子どもの健やかな発達を願う多くの方々の目に留まり,お役に立つことを願いたい。

 

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