エンカウンター・グループの理論と実践――出会いと成長のグループ体験を学ぶ

エンカウンター・グループの理論と実践――出会いと成長のグループ体験を学ぶ

(九州大学名誉教授,跡見学園女子大学名誉教授) 野島一彦 著

定価2,800円(+税),200頁,A5判並製
ISBN978-4-86616-200-3 C3011
2024年8月刊行

本書は,50年以上にわたって日本のエンカウンター・グループの実践と研究を牽引してきた著者による論文集です。
エンカウンター・グループは,ロジャーズらの実践から始まり,近年ではコミュニティ・アプローチの方法論としても再評価されています。
本書では,エンカウンター・グループの方法論を余すところなく伝えるとともに,グループのダイナミズムや特長を生き生きと描き出しています。グループ・アプローチを学ぶ最初の一歩として,グループ体験の魅力に出会える一冊となるでしょう。
グループ・アプローチに関わる専門家の方にも,エンカウンター・グループ未体験の方にもぜひお読みいただきたい論集となりました。


目 次

第1章 エンカウンター・グループ構成論
第2章 エンカウンター・グループ・プロセス論
第3章 エンカウンター・グループにおける個人過程―概念化の試み
第4章 エンカウンター・グループのファシリテーション
第5章 三タイプのエンカウンター・グループについての検討
第6章 構成的エンカウンター・グループにおけるHigh LearnerとLow Learnerの事例研究
第7章 構成的エンカウンター・グループと非構成的エンカウンター・グループにおけるファシリテーター体験の比較
第8章 精神科デイケアにおける心理ミーティング25年の検討
第9章 心理ミーティングとエンカウンター・グループの比較検討
第10章 大学院におけるエンカウンター・グループ・ファシリテーター養成プログラム
第11章 わが国のエンカウンター・グループの歴史的変遷


著者略歴
野島一彦(のじま かずひこ)

1947年熊本県生まれ。九州大学名誉教授,跡見学園女子大学名誉教授,臨床心理士,公認心理師。
1970年九州大学教育学部卒業,1975年九州大学大学院教育学研究科博士課程単位取得後退学,1988年博士(教育心理学,九州大学)。1980年〜1985年福岡大学人文学部助教授,1985年〜1996年福岡大学人文学部教授,1996年〜1998年九州大学教育学部助教授,1998年〜1999年九州大学教育学部教授,1999年〜2000年九州大学大学院人間環境学研究科教授,2000年〜2012年九州大学大学院人間環境学研究院教授,2012年〜2018年跡見学園女子大学文学部教授,2018年〜2022年跡見学園女子大学心理学部教授。

主な著書:『エンカウンター・グループ』(共著,1977,福村出版),『エンカウンター・グループから学ぶ―新しい人間関係の探究』(共編著,1991,九州大学出版会),『パーソンセンタード・アプローチ―21世紀の人間関係を拓く』(共編,1999,ナカニシヤ出版),『エンカウンター・グループのファシリテーション』(単著,2000,ナカニシヤ出版),『エンカウンター・グループと国際交流』(共編,2005,ナカニシヤ出版),『グループ臨床家を育てる―ファシリテーションを学ぶシステム・活かすプロセス』(監修,2011,創元社),『心理臨床のフロンティア』(監修,2012,創元社),『ロジャーズの中核三条件〈共感的理解〉』(監修,2015,創元社),『臨床心理学中事典』(監修,2022,遠見書房),『公認心理師の職責 第2版』(編集,2023,遠見書房)ほか


まえがき

エンカウンター・グループはわが国では1970年から実践されている。筆者も同年から今日(2024年)に至るまで50年以上にわたり,福岡人間関係研究会(村山正治らの会),人間関係研究会(畠瀬稔らの会)を中心に,その実践と研究に携わってきた。1971年には日本心理学会で「エンカウンター・グループの基礎的研究」を口頭発表した。これはわが国で最初のエンカウンター・グループの研究発表となっている。1972年には九州大学の修士論文で「エンカウンター・グループの臨床心理学的研究」というテーマで書いた。1998年には九州大学で「エンカウンター・グループの発展段階におけるファシリテーション技法の体系化」と題する博士論文を書いた。この論文は2000年にナカニシヤ出版から『エンカウンター・グループのファシリテーション』として出版された。
振り返ってみると,これまでに筆者はエンカウンター・グループ関連の学術論文(単著)54本,学術論文(共著)55本,小論(単著)26本,学会での口頭発表97回という形で発表をしてきた。このようなことが認められて,2003年には日本カウンセリング学会で「育てるカウンセリング國分記念賞」,2013年には日本人間性心理学会で「学会賞」,2019年には日本心理臨床学会で「学会賞」を受賞した。
本書では,筆者の多様な研究論文のなかから,エンカウンター・グループの研究で特に重要であると考える11本を取り上げた。第1章~第4章ではエンカウンター・グループの原点であるベーシック・エンカウンター・グループ(非構成的エンカウンター・グループ)研究の4つの基本的枠組み(グループ構成論,グループ・プロセス論,個人プロセス論,ファシリテーション論)に関するものを取り上げた。第5章では現在展開されているエンカウンター・グループの三タイプ(非構成的グループ:1970年から展開,構成的グループ:1970年後半から展開,半構成的グループ:2005年頃から展開)について取り上げた。第6章では構成的エンカウンター・グループの事例,第7章では構成的エンカウンター・グループと非構成的エンカウンター・グループの比較を取り上げた。第8章では精神科病院での25年間にわたるエンカウンター・グループ的取り組み,第9章ではそのエンカウンター・グループ的取り組みとエンカウンター・グループの比較を取り上げた。第10章ではエンカウンター・グループのファシリテーター養成について取り上げた。そして最後の第11章では50年以上(1970年~2013年)にわたるわが国のエンカウンター・グループの歴史的変遷を取り上げた。
エンカウンター・グループは,50年以上が経過した今日でもその実践と研究は脈々と続けられている。そこにはいろいろな意味での魅力があるからだと思う。本書が,その魅力を広く深く追求して実践と研究がさらに今後も展開されていくことに多少でも貢献できれば幸いである。
最後に本書の出版に当たり,遠見書房の山内俊介氏,駒形大介氏には大変お世話になった。感謝申し上げる。

2024年6月吉日
野島一彦

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