『学生相談カウンセラーと考えるキャンパスの危機管理 ――効果的な学内研修のために』

『学生相談カウンセラーと考えるキャンパスの危機管理 ――効果的な学内研修のために』

全国学生相談研究会議 編

編集代表 杉原保史

編集委員 今江秀和・太田裕一・小島奈々恵・堀田 亮・山川裕樹・吉村麻奈美

2,800円(+税) A5判 並製 208頁 C3011 ISBN978-4-86616-146-4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生を被害者にも加害者にもしないために,学生に関わるみなさんが今知っておくべきこと。 突然の事故,災害,性被害,ハラスメントなどのトラブルに見舞われる学生。そのような危機に直面する学生をどのように理解し,どう対応すればよいのか。これは学生相談カウンセラーだけではなく,すべての教職員に必要な知識となっています。 本書は,現場で多くの困難に向き合い,対応してきた経験豊富な学生相談カウンセラーたちが,学生生活のさまざまなリスクについて解説し,トラブルを未然に防ぐための予防策や緊急支援などの実践ですぐに活かせる対応策をきめ細かに説明した1冊です。 教職員・学生向け学内研修に使える13本のダウンロード可能なプレゼンテーション・データ(Microsoft Power Point(R))付き。


目 次

目次
第1部 教職員向けの研修
第1章 学生の性被害への対応 河野美江
第2章 学内でのストーカー問題への対応 小島奈々恵
第3章 刑罰の対象になりうる問題行動がある学生への対応 太田裕一
第4章 親からの問い合わせや苦情への対応 加野章子
第5章 学生に自殺が起きたときの対応 杉原保史
第6章 事故が来たときの心のケア 今江秀和
第7章 災害があったときの心のケア 黒山竜太
第8章 連絡がとれない学生への対応 石金直美
第9章 SNSトラブル対応 吉村麻奈美
第10章 ハラスメントの予防 松下智子 
第11章 学生からのハラスメントの訴えへの対応 堀田 亮

第2部 学生向けの研修
第12章 学生生活上のさまざまなリスク ―――カルト,薬物,アルコール,ブラックバイト,デートDVなど 酒井 渉
第13章 「気持ちに気づき,伝える」レッスン ―――ハラスメントやブラック研究室の被害に遭わないために 山川裕樹

 

まえがき

 大学においては,教室での講義,研究室でのディスカッション,実験室での実験,フィールドでの調査などを通して,日々,高度の学術的な知識や技術が教えられ,新たな知が生み出されている。しかし,大学教育は,こうした正課の教育だけではない。学生は学生生活を通して,学内外でさまざまな人と関わり,さまざまなことを経験し,刺激を受けて成長していく。部活動やボランティア活動に参加したり,アルバイトやインターンシップを経験したりする。よりプライベートな領域では,恋愛関係や性関係を発展させることもあるだろう。大学教育には,こうした多様な経験を通して学生が全人的に成長する過程を見守り,サポートすることが含まれている。
誰しも,こうした学びの過程が安全に建設的に進むことを願っているわけだが,そこに一定のリスクが伴うことは避けられない。それは学生にとってのリスクであるとともに,場合によっては大学にとってのリスクともなる。
本書は,大学などの高等教育機関で学生相談に従事しているカウンセラーが,学生生活のさまざまなリスクについて解説し,予防策や対応策を示したものである。本書にはダウンロード可能なパワーポイントのスライドも用意されており,本書の内容をベースに,スライドを用いて学内研修ができるようになっている。
学生相談カウンセラーというと,一般には,面接室で悩める学生の相談を静かに聴いている人というイメージが強いだろう。しかし近年,大学の学生相談室に寄せられる相談は,ますます多様化しており,学生相談カウンセラーに求められる役割もいっそう幅広くなっている。学生の悩みが,キャンパス内で現在進行中の事件と関わっていることもしばしばある。学生がキャンパス内でトラブルを引き起こし,当の学生自身は悩んでいないが,周囲の学生や教職員が悩まされているということもしばしばある。学生相談のカウンセラーが,こうした事件に対応し,事態の収拾のために関係者に助言したり,サポートしたりすることが増えている。事件や事故,災害などのリスクについて,学生や教職員に研修や啓発活動を行うことも増えている。重大な事件や事故,災害などが起きた際には,大学運営に責任のある立場の教職員に向けてレクチャーを依頼されることもある。
本書は,学生相談カウンセラーが,その豊富な経験に基づいて,現在の学生の状況における重要なトピックを選定して執筆したものである。本書は,各大学が学生生活上のさまざまなリスクについて学内研修を行う際に,力強い助けとなるはずである。
本書は,全国学生相談研究会議によって編集された。ここで簡単に全国学生相談研究会議について説明し,出版に至る経緯についても触れておきたい。
全国学生相談研究会議は,大学の学生相談室のカウンセラーの研究会として50年以上の歴史を持つ団体である。学生相談カウンセラーの相互研鑽の場として,昭和43(1968)年以来,現在に至るまで,50年以上にわたって,毎年,研究会を開催している。会員数150名ほど(2022年現在)の小さな団体であるが,志気は高く,長年にわたって学生相談カウンセラーの崇高なスピリットを引き継いできた。
本書の出版企画は,2020年に開催された第53回学生相談研究会議の総会において,杉原が提案し,承認を得て,スタートした。その後,研究会議内でワーキング・グループを募り,そのグループで企画を練り,編集作業を行った。ワーキング・グループのメンバーは,今江秀和,太田裕一,小島奈々恵,堀田亮,山川裕樹,吉村麻奈美,杉原保史の7名である。
現在,日本の大学は大学の外側の社会から変革を求められており,大きな曲がり角にある。多くの大学は財政的に圧迫されており,教職員は余裕を失っている。しかし,たとえどのような状況に置かれたとしても,大学の第一のミッションは,あらゆる機会をとらえて学生の成長を促すことにある。本書は学生生活における危機を扱うものであるが,危機は同時にチャンスでもある。大学関係者が危機をとらえて,学生に向き合い,学生とともに自らをも変化させるチャンスとしていくことを願うものである。そのために学生相談カウンセラーが,そして本書が役立つことを信じている。

ワーキンググループを代表して
杉原保史


執筆者一覧(執筆順)

河野美江(こうの・よしえ:島根大学保健管理センター)
小島奈々恵(こじま・ななえ:東北大学 高度教養教育・学生支援機構 学生相談・特別支援センター)
太田裕一(おおた・ゆういち:静岡大学保健センター・学生支援センター)
加野章子(かの・あきこ:愛知工科大学工学部 基礎教育・学務部 学生相談・総合教育センター,愛知工科大学自動車短期大学 学生相談)
杉原保史(すぎはら・やすし:京都大学学生総合支援機構学生相談部門)
今江秀和(いまえ・ひでかず:広島市立大学国際学部・心と身体の相談センター)
黒山竜太(くろやま・りゅうた:熊本大学大学院教育学研究科)
石金直美(いしかね・なおみ:大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター)
吉村麻奈美(よしむら・まなみ:津田塾大学ウェルネス・センター)
松下智子(まつした・ともこ:九州大学キャンパスライフ・健康支援センター学生相談室)
堀田 亮(ほりた・りょう:東海国立大学機構岐阜大学保健管理センター)
山川裕樹(やまかわ・ひろき:成安造形大学共通教育センター)


 

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