公認心理師の基礎と実践③ 臨床心理学概論

公認心理師の基礎と実践③ 臨床心理学概論

野島一彦・繁桝算男監修  (跡見学園女子大学)野島一彦・(文教大学)岡村達也編

2,400円(+税) A5判 並製 192頁 C3011 ISBN978-4-86616-053-5

心理学およびその周辺領域の知識を網羅
公認心理師カリキュラムに沿った全23巻シリーズの第3巻「臨床心理学概論」

公認心理師養成のための臨床心理学分野のテキスト。野島先生と岡村達也先生(文教大学教授)による1冊です。アメリカ心理学会のテキストと方向性を合わせ,世界基準の1冊として本書を編み上げました。400を超えるといわれる臨床心理学の学派を,大別して9つのアプローチごとに分け,斯界で最高の書き手に,それぞれのアプローチの理論から手法,歴史,今後の展開までまとめてもらった。初めて学ぶ大学生や学び直しにぴったりの内容です。

*【2023年3月】本書の第2版が刊行されました。詳細はこちらまで。


目次
第1部 臨床心理学の成り立ち
1章 日本の臨床心理学 ◆ (跡見学園女子大学)野島一彦
2章 世界の臨床心理学 ◆ (文教大学)岡村達也
3章 臨床心理学の全体像 ◆ (文教大学)岡村達也

第2部 臨床心理学の代表的な理論
4章 精神分析的アプローチ ◆ (東京国際大学)妙木浩之
5章 分析心理学的アプローチ ◆ (京都大学)河合俊雄
6章 行動論・認知論的アプローチ ◆ (中京大学)坂井 誠
7章 ヒューマニスティック・アプローチ ◆ (関西大学)中田行重
8章 システミック・アプローチ ◆ (東北大学)若島孔文
9章 グループ・アプローチ ◆ (南山大学)坂中正義
10章 コミュニティ・アプローチ ◆ (上智大学)久田 満
11章 ナラティヴ・アプローチ ◆ (立命館大学)森岡正芳
12章 非言語的アプローチ ◆ (学習院大学)伊藤良子
13章 統合的アプローチ ◆ (京都大学)杉原保史


はじめに
「公認心理師の基礎と臨床」シリーズへ,ようこそ! 第3巻「臨床心理学概論」へ,ようこそ!
本巻は「公認心理師のカリキュラム」の中でも「大学における必要な科目」のうち「③臨床心理学概論」に対応します。そこに「含まれる事項」は「1.臨床心理学の成り立ち,2.臨床心理学の代表的な理論」の2つと規定されており,本巻第1部「臨床心理学の成り立ち」,第2部「臨床心理学の代表的な基礎理論」がそれぞれに対応します。
第1部では,通常,臨床心理学とは何か,世界の臨床心理学,日本の臨床心理学といった順になるところ,これを逆転し,あえて「日本の臨床心理学」を巻頭とすることにしました。「公認心理師のカリキュラム」の中における臨床心理学概論を考えたとき,まずはこの資格成立における臨床心理学の歩みを記さないわけにはいかないと考えたからです。「国民の心の健康の保持増進に寄与すること」(公認心理師法第1条)を願って,ようやく成立した資格だからです。
第2部については「臨床心理学の代表的な理論」をどう考えるか,議論を重ねました。専門職としての臨床心理学の技能の2本柱は“ リサーチ技能” と“ 臨床技能” です。そして臨床技能の2本柱は“ アセスメント” と“ 心理療法” ですが,それぞれに対応する「必要な科目」があり(「④心理学研究法」「⑤心理学統計法」「⑥心理学実験」,「⑭心理的アセスメント」,「⑮心理学的支援法」),本シリーズでもそれぞれに対応する巻があります。これらを含めた“ 概論” にすれば,通常の臨床心理学の“ 教科書” ができあがります。が,私たちは議論の末,「公認心理師のカリキュラム」がその中にすっぽり“ 臨床心理学の体系” を含むことから,別の考えを採用することにしました。
1つの動因となったのは『APA 臨床心理学ハンドブック(全5巻)』(2016 年)です。その第2巻は「理論とリサーチ」と題され,第1部「理論的アプローチ」では,“ 病理論”“ アセスメント論”“ 治療論” を包含する10 の“ 臨床心理学の基礎理論” が取り上げられており,これに倣うことにしました。日本語版を作りたいという野心のようなものもあったかもしれません。本巻第2部のタイトルを「臨床心理学の代表的な基礎理論」とした所以です。
本巻第2部の構成について付言します。本巻の中心を成す部であり,各章執筆者の尽力に見合う読み方をしてほしいからです。まず『ハンドブック』が取り上げている10 のアプローチは次のとおりです。(A)歴史的に確立しているアプローチ=(1)精神分析,(2)精神力動論,(3)行動論,(4)人間性-実存論,(5)認知論,(B)関係指向・システム指向のアプローチ=(6)対人関係論,(7)システム論,(8)多文化理論,(C)行動療法“ 第3の波” =(9)マインドフルネス・アクセプタンス理論,(D)単一理論の軛を超えるもの=(10)統合理論。
本巻ではこれを出立点とし,上記のいくつかを統合して1章とした上で,上記にはない「分析心理学」「グループ」「コミュニティ」「ナラティヴ」「非言語」各アプローチの章を立てました。
次に『ハンドブック』の各アプローチは次のフォーマットにしたがって記されています。(1)定義,(2)歴史,(3)病理論,(4)アセスメント論,(5)治療論,(6)リサーチ・エビデンス,(7)臨床心理学への寄与,(8)今後の課題。各章執筆者には,これらを記述形式の参考としてもらうこととし,こうした記述形式を採用しない場合でも,これらを記述内容として含むよう依頼しました。各章はそのように執筆されており,当面最良の日本語版が出来したと確信します。
よき臨床心理学の“ 良識” を備えた公認心理師になられますよう健闘を祈ります。

野島一彦
岡村達也


編者略歴
野島 一彦(のじま・かずひこ)
1947 年,熊本県生まれ。跡見学園女子大学教授,九州大学名誉教授,臨床心理士。
1975 年,九州大学大学院教育学研究科博士課程単位取得後退学,1998 年,博士(教育心理学)。
1975 年より九州大学教育学部助手,久留米信愛女学院短期大学助教授,福岡大学人文学部教授,九州大学大学院人間環境学研究院教授を経て,2012 年より現職。
主な著書:『エンカウンター・グループのファシリテーション』(ナカニシヤ出版,2000),『心理臨床のフロンティア』(監修,創元社,2012),『ロジャーズの中核三条件〈共感的理解〉』(監修,創元社,2015),『公認心理師入門─知識と技術』(編集,日本評論社,2017 年)ほか

岡村達也(おかむら・たつや)
1954 年,新潟県生まれ。文教大学人間科学部心理学科教授。
1985 年,東京大学大学院教育学研究科教育心理学専攻第一種博士課程中退。
1985 年より東京都立大学学生相談室助手,1990 年専修大学文学部講師・助教授,1998 年文教大学人間科学部助教授を経て,2000 年より現職。
主な著書:『思春期の心理臨床』(共著,日本評論社,1995),『カウンセリングを学ぶ』(共著,東京大学出版会,1996,2 版2007),『カウンセリングの条件』(日本評論社,2007),『カウンセリングのエチュード』(共著,遠見書房,2010)など。

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