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『DVDでわかる 家族面接のコツ(3)P循環・N循環編』

東 豊 著 (解説・黒沢幸子・森 俊夫)

定価6,600円(+税)、180頁、A5版、並製(DVDつき・箱入り)
C3047 ISBN978-4-904536-92-6

「東豊は失敗からいかにして回復したか」

初回と2回めの面接を収録したDVDと,書籍にはケースの逐語,東豊と黒沢幸子,森俊夫による詳細な解説等を収録。そして,東臨床のコアをなす「P循環・N循環」の書き下ろし論考等を収録。今回の解説は,黒沢・森の登場でシステムズアプローチvs.ソリューション・フォーカスト・アプローチに火が付く??

DVDは,マルチアングル機能による3アングル(セラピスト+クライエント,セラピスト,クライエント)の構成で立体的にわかる。
才能あふれるセラピスト東豊による家族面接DVDシリーズの第3弾。

姉妹編→『DVDでわかる 家族面接のコツ(1)夫婦面接編』姉妹編→『DVDでわかる 家族面接のコツ(2)家族合同面接編』もよろしくお願いします。よろしくお願いします。

映像見本↓(画像をクリックしてください;youtubeで見たい方はhttp://www.youtube.com/watch?v=dcZ7_81Yd8A

DVDの集団視聴をされたい方へ

◆ 本書の詳しい内容


おもな目次

DVDを観る前に P循環とN循環について

逐語編 深田家のケース〔1回目〕

逐語編 深田家のケース〔2回目〕

解説編:システムズアプローチ,ソリューション・フォーカスト・アプローチ,それぞれの解決〔1回目を解き明かす〕

システムズアプローチ,ソリューション・フォーカスト・アプローチ,それぞれの解決〔2回目を解き明かす〕

付録:深田家役4人のコメント


DVDを観る前に P循環とN循環について

1 考え方
家族合同面接であれ個人面接であれ,システムズアプローチにとってもっとも重視されるべきことは面接中に観られるコミュニケーションの相互作用です。特にセラピストと対象者の相互作用,つまりバーバル・ノンバーバル合わせての会話が最も重視されなければなりません。家族間の会話は,もちろんこれも大事ではありますが,優先順位としては二の次でよろしかろうと思います。
(ここでいう「対象者」とは当事者,家族・友人,学校の先生等,面接室にやってくるすべての人のことです。)
会話を用いて「現実の再構成」を行うのがセラピストの仕事ですが,方法としてもっともシンプルであるのは,手前みそながら,近年私が提唱しているP循環療法であろうと思っています。P循環のPはpositiveのPです。この方法はセラピスト・対象者間の相互作用をポジティブなものにすることだけを目的としています。これにより,対象者の感情や行動に良い影響を与えようとするのです。

この方法の前提(仮説)は次の通りです。
基本的にクライエントは「困ったこと」「悩み」「怒り」「恨み」「妬み」「哀しみ」「恐怖」「不安」などをセラピストに表出するものです。
これらの要素をN(negative)要素と名付けます。N要素はクライエント個人の内部で還流してクライエントの心と身体にダメージを与えます。心身医学で言うところの心身交互作用はこれにあたります。たとえば強い「怒り」がうつや心疾患につながる等。これを個人内N循環と呼ぶことにします。
またクライエントはセラピストに限らず周囲の対人関係でN要素を表出する機会が多いので,その相手からN要素をぶつけられる可能性が高くなります。相手を責めることで責められる。いやそのような積極的なものではなくとも,その場にクライエントが存在しているだけで相手から拒否されるということもありえるでしょう。これは対人N循環と呼びますが,結果的にクライエントのN要素を一層強めることになります。このようにクライエントの対人関係と内面とは相互作用するわけです。
つまり,「クライエントと命名された存在」は内的にも対人的にもN循環の渦の中にいる人であると考えることができます。NはNを呼ぶことになりやすいのです。その際,クライエント個人個人の生育歴や生活歴などの背景・事情,あるいは表出されるN要素の種類や強度等はいったん不問とします。内容は問わず,「N循環の中にいる人」とひとくくりにします。そして,そのようなN循環の渦からP循環の渦に移行することこそがクライエントが回復する道であるとシンプルに考えてみたいのです。対人関係においても心身の健康においても,P循環の渦の中にいてこそ良好なものが得られるということです。
このように考えるとセラピストの一番の仕事は「まずは自分とクライエントの間にP循環を生じせしめること」だということになります。また,セラピストに余裕と能力があるならば,家族合同面接や学校の先生等の関係者との面談を行うことで,彼らともP循環を形成し,結果的にクライエントと彼らの間にP循環が波及していくような工夫をすることが望ましいでしょう。クライエントの変化がいっそう早くなることを請け合いたいと思います。(以下略)

東 豊


あとがき

本書冒頭の小論でも述べたように,私の心理療法では,個人面接であろうが家族合同面接であろうが,面接の最初から最後まで自分と対象者の間にP循環を作ろうとする意識が大変強くあると思います。
ただ,このDVDの面接はロールプレイなので,実はP循環を作るのは至極簡単だったのです。なぜならそこで提示されたどのような「問題」や「悪い現象」もしょせん「作り物」だったので,セラピストは「目の前の現象に惑わされる」=「N循環に巻き込まれる」ことが非常に起きにくかったのです。「問題」や「問題の人」などどこにもない。このような哲学・観法がその場に簡単に浸透したということです。
しかしながら,現実の臨床場面ではさまざまに「問題」や「問題の人」と意味付けられたものが,まさにそのように見える現象として眼前に現れます。そして,これらに対してまさにそのようなものとして分析・診断・治療する訓練を受けて来たのが伝統的な専門家であります。これらをつかまないでいるのは(ひっからないでいるのは)実のところ大変難しい。しかしそのあたりが,P循環が上手に作れるか否かに直結する最大ポイント,勘所となるわけです。まずは現象の捉え方であり,ものの見方の切りかえが重要なのです。本書を手にとられた方のうち,何人かでも伝統的な心理療法の枠組みから自由になることがかなったならば,筆者としてこれ以上の喜びはありません。
「伝統的な心理療法の枠組みから自由」と言えば,今回のディスカッションにご登壇いただいた森先生,黒沢先生の臨床の在り方こそ,私とはまたタイプが違うとは言え,まさにそれを具現化したもののように日頃より感じ取っております。今回,そのお二人とさまざまにディスカッションできたことは読者や私にとって大きな財産になりました。厚く御礼申し上げたいと思います。
またさまざまな役割を演じてくれた人たち,ロールを仕込んでくれた神戸松蔭女子学院大学の坂本真佐哉先生,録画スタッフの皆さん,そして遠見書房・山内俊介にも心からお礼を申し上げたいと思います。

追記
森俊夫は,今年(平成25年)3月,急逝した。
自分の命がもう長くないと知ったあとも,最後まで楽しい人だった。

「東さん,これで私の方が男前だとはっきりしたね。美人薄命」
「おい,それは女だけだろ」

「私はね,生まれ変わったら建築家になりたいんよ」
「それはいいけど,すぐに生まれ変わらず,私がそっちに行くまで待ってなさいよ,あなたはせっかちだから困る」

生前の彼と最後に別れる時,私はひとつのお願いをした。
「肉体から離れたらさ,必ず私の所まで教えに来なさいね。そうだ,何か独特の香りで知らせてよ」

それから1カ月程たったある夜,温かな布団の中で私は何とも言えない香しい気配に包まれていた。彼の訃報を受け取ったのはその翌日であった。

森俊夫さん,まずは良い所でゆっくりとお休みください。そして私達の天命がまっとうされるよう,ひきつづきご指導くださることをお願いしたいと思います。
東 豊


著者略歴

東 豊(ひがし・ゆたか)

龍谷大学文学部臨床心理学科教授(2012年4月~)
臨床心理士,医学博士(鳥取大学)
1956年滋賀県生まれ。
関西学院大学文学部心理学科卒。
九州大学医学部心療内科,鳥取大学医学部精神神経科,神戸松蔭女子学院大学人間科学部心理学科などを経て現職。
専門はシステムズアプローチ・家族療法。