臨床心理検査バッテリーの実際

臨床心理検査バッテリーの実際

高橋依子・津川律子編著

定価2,800円(+税)、248頁、A5判、並製
C3011 ISBN978-4-904536-89-6

改訂版が出ていますhttps://tomishobo.com/ca177.html

適切なテストバッテリーを多彩な事例を挙げて解説
現場感覚に即した臨床心理テストバッテリーの理論と実践

本書は,多くの臨床心理検査と,さまざまな対象年齢,臨床現場に即したテストバッテリーの考え方とその実践を,多彩な事例を通してわかりやすく描いたものです。執筆には,それぞれの臨床領域で心理検査を活用している第一人者に依頼しました。
いろいろな臨床場面があるなかで,実際にどのような検査バッテリーが組まれ,活用されているのか,それを知ることはあまりありません。ですが,この本では,心理検査の理論と職人技とが織り成す高度な専門性の世界をさまざまな面からひも解いていきます。
初学者だけでなく最前線で活躍する臨床家までの,あらゆるレベルの読者それぞれにとって,多くのヒントが散りばめられた1冊になりました。

関連本,『投映法研究の基礎講座』(津川律子編)

本書の詳しい内容


おもな目次

第1部 臨床心理検査バッテリー論

第1章 臨床心理検査とは
高橋依子・津川律子

第2章 臨床心理検査バッテリーに関する考え方
高橋依子

第2部 発達に沿った検査バッテリー

第3章 乳幼児期
大島 剛

第4章 児童期(教育場面)
明翫光宜

第5章 児童期(医療場面)
久野節子・田中千代・前田志壽代

第6章 思春期(教育場面)
小山充道

第7章 思春期(医療場面)
神谷栄治

第8章 青年期(私設心理相談場面)
寺沢英理子

第9章 青年期(医療場面)
篠竹利和

第10章 矯正領域
渡邉 悟

第11章 成人期
尾山千春

第12章 高齢期
松田 修

第3部 臨床心理検査結果のフィードバック

第13章 検査結果のフィードバックに関する考え方
津川律子

第14章 医療場面における検査結果のフィードバック
糸井岳史

第15章 私設心理相談場面における検査結果のフィードバック
宮木ゆり子

ほか


はじめに

臨床心理検査は,対象者の心理支援において極めて有用であり,いくつかの心理検査を組み合わせて得た多角的・多層的な検査結果から,対象者が生きる世界が立体的に浮き彫りになり,それが心理支援に直接的につながっていく一連の過程は,臨床心理検査の真骨頂である。
しかし,いろいろな臨床場面があるなかで,実際にどのような検査バッテリーが組まれ,活用されているのかに関する書籍はあまり見かけない。長く医療現場を 中心に臨床心理アセスメントとサイコセラピーの実践と教育に携わってきた津川は,臨床現場で役に立つ,検査バッテリーの本を著したいと考えた。そして,多 くの場面における心理検査活用の実際に広げたいと思い,かねてよりロールシャッハ関係の学会を通じて親しくしている高橋を誘った。高橋も臨床の現場は広 く,また津川と同様に,大学院生と修了生の教育を行ってきている。二人はともに,医療場面や教育場面だけでなく,私設心理相談施設を開いて,アセスメント とそれに基づくサイコセラピーを実践してきたので,二人でカバーできる領域は広いが,それ以上に多岐にわたる臨床現場の最前線における最新の心理検査実施 の実際に触れたいと思った。そこで多くの臨床家に協力を求めることにした。
心理検査を中心に総合的なアセスメントがどのように行われ,それぞれの臨床場面でどのような臨床心理検査バッテリーが組まれ,実際にどのように活用されて 支援につながっているのかを,幅広く,そして深く,具体的にまとめていくことで,実際の臨床実践に役立つものにしたいと考えて,本書を企画した。
臨床心理検査の種類は多く,用いられている臨床現場も多様である。臨床の場面が医療場面であるか教育場面であるか,福祉の領域か産業か矯正かによって, バッテリーの組み方は異なるし,対象者が幼児か青年か,または高齢者かによっても,用いられる心理検査は全く違ってくる。そこで,これらの場面で,異なる 対象者に対して,どのような心理テストがバッテリーとして組まれ実施されているのかを紹介したいと思った。そして単なる例示でなく,実際に実施された心理 検査の結果を元に,どのようなことが明らかになり,心理支援にどのように繋がっていくかまでも明示したいと考えた。
さまざまな臨床場面における幅広い対象者を想定したいので,それぞれの臨床領域で心理検査を活用している第一人者に依頼した。二人でお願いした著者の方々は,すべて臨床家であり,全員の方々に本書の趣旨をご理解いただき,執筆を快諾していただいた。
読者対象としては,臨床現場に出て10年目ほどをイメージして編集したが,刊行直前のいまは,臨床経験が浅い読者でもベテランでも役立つのではないかと感 じている。それぞれの章で,実際の心理テストが明示され,丁寧に解説がなされているので,若い読者にも理解しやすく,また,ベテランにとっても,ほかの臨 床家がどのようなバッテリーを組んで,その結果をどのように活用し,フィードバックしているのかは興味のあるところであろう。
本書が,多くの心理臨床家に読まれ,より密度が濃くきめ細やかな心理支援へと還元されることを切望している。
本書の出版に際しては,遠見書房社長の山内俊介氏に大変お世話になった。心から謝意を表したい。

2015年5月
高橋依子・津川律子


編著者略歴

高橋依子(たかはし・よりこ)
専攻:臨床心理学
現在:大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科臨床心理学専攻教授・専攻長,附属カウンセリングセンター長,京都大学博士(文学),臨床心理士。日本描画テスト・描画療法学会会長
主著書:心理アセスメント関係では,『描画テスト』(北大路書房,2011/単著),『ロールシャッハ・テストによるパーソナリティの理解』(金剛出 版,2009/単著),『スクールカウンセリングに活かす描画法』(金子書房,2009/監修),『人物画テスト』(文教書院,1991/共著),『樹木 画テスト』(文教書院,1986/共著),『ロールシャッハ診断法Ⅰ・Ⅱ』(サイエンス社,1981/共著)など。

津川律子(つがわ・りつこ)
専攻:臨床心理学,精神保健学
現在:日本大学文理学部心理学科教授,日本大学文理学部心理臨床センター長,臨床心理士。心理アセスメント関係の学会では,包括システムによる日本ロールシャッハ学会副会長,一般社団法人日本心理臨床学会常任理事,日本ロールシャッハ学会理事
主著書:心理アセスメント関係では,『投映法研究の基礎講座』(遠見書房,2012/編著),『シナリオで学ぶ医療現場の臨床心理検査』(誠信書房,2010/共著),『精神科臨床における心理アセスメント入門』(金剛出版,2009/単著)など。

著者一覧(執筆順)
高橋 依子(たかはし・よりこ)上記参照
津川 律子(つがわ・りつこ)上記参照
大島  剛(おおしま・つよし)神戸親和女子大学発達教育学部心理学科・神戸親和女子大学大学院文学研究科心理臨床学専攻
明翫 光宜(みょうがん・みつのり)中京大学心理学部
久野 節子(くの・せつこ)大阪市民病院機構地方独立行政法人 大阪市立総合医療センター児童青年精神科
田中 千代(たなか・ちよ)大阪市民病院機構地方独立行政法人 大阪市立総合医療センター児童青年精神科
前田志壽代(まえだ・しずよ)神戸学院大学人文学部人間心理学科
小山 充道(こやま・みつと)藤女子大学人間生活学部
神谷 栄治(かみや・えいじ)中京大学心理学部
寺沢英理子(てらさわ・えりこ)広島国際大学心理科学部
篠竹 利和(しのたけ・としかず)日本大学文理学部心理学科
渡邉  悟(わたなべ・さとる)府中刑務所
尾山 千春(おやま・ちはる)一般社団法人おおさかメンタルヘルスケア研究所附属クリニック
松田  修(まつだ・おさむ)東京学芸大学総合教育科学系教育心理講座
糸井 岳史(いとい・たけし)路地裏発達支援オフィス
宮木ゆり子(みやき・ゆりこ)カウンセリングルームさいのみや

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