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児童精神科医が教える
子どものこころ Q&A 70』

(きょうこころのクリニック)
姜 昌勲(きょう・まさのり) 著

定価2,000円(+税)、208頁、四六版、並製
C3011 ISBN978-4-904536-38-4

入門! 子どもと思春期の精神医学

子どものこころの問題と支援に関連するトピックスをQ&A形式でまとめたものです。
ご家族の方だけでなく,医療・教育・福祉の専門家,必読のヒントが満載。
子どものこころの問題について,サクッとわかる1冊です。

本書の詳しい内容


おもな目次

1 児童精神科外来について教えてください
2 児童精神科における採算性について
3 児童精神科で受ける相談にはどんなものがありますか
4 児童精神科における診療の流れについて教えてください
5 児童精神科における治療って何をするのでしょうか
6 医師の診察(精神療法)とカウンセリング(心理療法)の違い
7 精神科で用いる薬にはどんなものがありますか
8 向精神薬の種類について教えてください
9 睡眠薬について教えてください
10 睡眠障害のタイプと薬の使い分けは

11 認知行動療法について
12 精神科でみられる病気とはどのようなものがありますか。精神科で用いられる診断ツールとあわせて教えてください
13 DSMついて
14 ICD-10につい
15 脳の構造・働きについて教えてください
16 子どもの発達の問題について教えてください
17 夜尿症について教えてください
18 チック障害について教えてください
19 精神遅滞について教えてください
20 発達障害について教えてください

21 注意欠如多動性障害について教えて
22 注意欠如多動性障害の治療について
23 ペアレントトレーニングについて教えて
24 学習障害について教えてください
25 広汎性発達障害について教えてください
26 高機能自閉症とアスペルガー障害とは
27 構造化とは
28 AD/HDとアスペルガーの合併について
29 特別支援教育について教えてください
30 発達障害支援法について教えてください

31 発達障害の二次障害とはなんでしょうか。二次障害を予防する・治療するためにできることを教えてください
32 発達障害の告知について教えてください
33 心理検査とはどのようなものでしょうか。何を調べるもので,どんなことが分かるのでしょうか
34 子どものうつについて
35 統合失調症について
36 不安障害について
37 子どものPTSDについて
38 強迫性障害について
39 緘黙について
40 摂食障害について

41 パーソナリティ障害について
42 心身症と身体表現性障害について
43 防衛機制,心理的規制とは
44 不登校について
45 ひきこもりについて
46 思春期外来でみられる依存について
47 ゲーム依存への対応を教えてください
48 スクールカウンセラーの役割について
49 不良行為や家庭内暴力に対する対応は?
50 性の問題について

51 自殺・リストカットの問題について
52 愛着の問題について
53 少年事件について
54 児童精神科を訪れる保護者に対するアドバイス
55 子どもの問題に立ち向かう学校の先生に対するアドバイス
56 精神科医から同僚として臨床心理士へのアドバイス
57 若き精神科医へのアドバイス
58 具体的事例:二次障害をきたした思春期のAD/HD
59 具体的事例:不登校
60 具体的事例:睡眠障害

61 家族の対応:きょうだいに配慮すべきこと
62 家族の対応:父親の役割について
63 家族の対応:がんばりすぎな母親
64 家族の対応:同居する祖父母
65 児童精神科外来診療のTIPS
66 子どもにうける超簡単な手品を教えてください
67 子育ての問題:虐待について
68 保護者活動について
69 児童福祉領域で利用できるサービスについて
70 就労支援について


はじめに

かつて日本では「精神科は暗い・危険だ」「受診しにくい」「精神科医になるような医者は変わり者」など,精神医療に対して多くの偏見がありました。 しかし,うつ病や不安障害患者の増加,社会情勢の不安定化により,精神科受診の敷居はずいぶん低くなりました。気軽に受診できるメンタルクリニックも増加 しています。
その一方で,小児科医師不足や病院産科の廃止など医療崩壊が叫ばれるような科もあります。精神科医は増加していますが,依然として児童精神科医は少ない状 況で,児童精神科外来では数カ月から数年(!)の予約待ちも珍しくありません。児童精神科においても「医療崩壊」は顕著です。
平成20(2008)年から児童精神科は,ようやく正式に標榜科として認められることとなりました。先進諸国の中で児童精神科の標榜が認められていなかっ たことは恥ずべきことでありました。標榜科として認められたということは,「児童精神科医療崩壊」を食い止め,児童精神科医療の充実に向けてのスタートラ インに立ったと言えるでしょう。
しかし,児童精神科は採算が取れないと言われ,児童精神科の専門外来を設けている病院・診療所は全国的に非常に少ないのが現状です。診察は子どもと大 人,2人分の時間と労力を要します。それでも,診療報酬として請求できるのは子ども1人分です。子どもの診察を終えて良いクロージングができたとほっとし ていたのもつかの間,すぐに診察室がノックされて,保護者が必死の形相で「子どもはなんて言ってましたか?」と入ってこられます。そして保護者さんへの説 明が始まるのです。
ある先輩児童精神科医は,親子同席の診察で子どもの発言をさえぎってまくしたてる保護者の話を15分聞いたあと,「はい,タイムオーバーです。今日はお子 さんのお話を聞くことはできません。ここには誰の診察で来ているのですか?   お母さんですか?   お子さんですか?   よく考えてください」と説明したら,お母さんも「そうですね……」と納得されて,次からはお子さんとの診察に時間をさけるようになったとのことです。
このように,なかなか効率のいい仕事とは言えませんが,では,児童精神科は大変なだけなのでしょうか?   いえ,そこには大きなやりがいと可能性があります。僕が児童精神科医療にかかわるようになって最初に驚いたのは,次から次へと「良くなっていく子どもた ち」の姿です。そして,「子どもの発達する力」に大きな感動をおぼえました。大人になるとパーソナリティも確立されますが,子どもはパーソナリティも未熟 な分,変化する大きな可能性があるのです。その可能性を信じて応援し見守っていくことができる児童精神科医は,なんとやりがいのある仕事ではないかと感じ るようになったのです。
人間の仕事のやりがいは,次の3つで計ることができると思います。金銭的報酬,仕事の質量,人間関係の3つです。児童精神科医療は,金銭的報酬はその労力 に見合うほど恵まれているとは言いがたく,仕事量も多いですが,仕事の質としてこれほど充実した質はないのではないでしょうか?   そして,多くの良き仲間に出会うことができます。
多くの研修医,若手精神科医,臨床心理士などが,児童精神科医療に携わってくれることを願っています。
臨床心理士の資格を取得したときに使用したテキスト(『臨床心理士・心理学試験対策標準テキスト』徳田英次著)に,知識を深めるためのプロセスについて書かれていたことが興味深かったので,引用します。

「勉強のはじめにやるのに良い本は,それから勉強する分野のできるだけよい地図になる本です。心理学の専門用語でいうと,有意味受容学習が重要で す。有意味受容学習では先行オーガナイザーが重視されます。学習は,以前からの知識に新たに学習された知識が捉えられ,記憶の場所を見つけて定着すること で成立します。そこで前もって持っている知識の網の目,適切な先行オーガナイザーが重要になるのです」

この本は,70のQ&Aからなります。どこから読んでいただいても結構です。1つの「児童精神科医療」全体の地図を知るためのガイドブックと考えてください。そして,自分が行ってみたい場所がみつかったら,また新たなガイドブック(専門書)を買って,旅してください。
専門家向けの本ですが,保護者さんが読まれても理解できるように分かりやすく書きました。専門用語も多いですが興味を持たれた方はぜひお読みください。
この本が,そんな方々への「先行オーガナイザー」としてささやかな道しるべとなれば,こんなにうれしいことはありません。児童精神科医療に携わる方が増えて,多くの悩んでいる親子,先生たちの助けとなってくれることを願って。

きょう こころのクリニック院長 姜 昌勲
(医学博士,臨床心理士)


あとがき

この本を書き始めたのは2009年の1月です。いまから3年前になります。
僕が匿名でブログをしていた時代にやりとりのあった「ロテ職人の臨床心理学的blog(http://blog.rote.jp/)」から遠見書房さんを知り,編集の山内さんに連絡をとったことからこの本の企画が動き出しました。
読みやすいわかりやすい『とりあえず』児童の全体像をみれる本を書きたいと『衝動的に』思ったのです。
山内さんからすぐに返事がきてぜひやりましょう,ということで書籍出版決定,と気分が非常に高揚し,ほうぼうで本を出版すると宣伝したのはいいものの,なかなか本が書けない!
これは自分のAD/HD的特性ゆえの事態でした。締め切りがないと書けないし,200ページ以上の本を書き下ろすという作業はあまりに遠大すぎてモチベーションが途中きれることもありました。
いろいろなことをためしました。作家よろしく,沖縄にこもってホテルで執筆することもありました。結局は日々の診療のあいまにコツコツ書くより他なかった のです。遅筆の遅筆でしたが,温かく見守ってくれた山内さんがいなければこの本は出版できなかったでしょう。本当に感謝申し上げます。

さて,ここからはこれまでの人生で僕を支えてくれた皆様への謝辞を述べたいと思います。
青春時代をともにすごし,現在もさまざまな分野で活躍し僕に刺激を与え続けてくれている大阪星光学院33期生の友人たち。人間は何歳でも成長できる。一緒に成長していこう,そして日々励ましてくれてありがとう。
奈良県立医大で留年を2回したおちこぼれ医大生であった僕を見捨てず仲良くしてくれた平成7年卒,平成8年卒,平成9年卒の友人たち。おかげで普通の医大 生より3倍友人ができました。これからはつながりの時代。つながり,ネットワークを大切に奈良の医療を良くしていきましょう。
おちこぼれ学生であった自分を温かく迎え入れてくださり,精神科医というより社会人としてのイロハを教えてくださった岸本年史教授。奈良医大精神科医局はいつになっても僕のふるさとです。
医師2年目から常勤医として赴任した島根県の昌林会安来第一病院のみなさま。島根の4年間で,結婚し,子どもが産まれ,育児をし,忘れることのできない土地になりました。
ひよっこであった僕を辛抱強く指導いただいた狭間秀文名誉院長,松下棟治名誉院長,杉原克比古院長,感謝申し上げます。
復光会垂水病院のみなさま。山本訓也院長,麻生克郎副院長。薬物依存,アルコール依存の臨床は刺激的でした。
そして児童精神科医として,研究と臨床を指導していただいた飯田順三教授。いつも身体をきづかってくださりありがとうございます。ぼちぼち頑張ります。
なにより先輩として研究をともに行い,手取り足取り児童精神科のイロハを教えてくださり,今もきょうこころのクリニックの一員として子どもの臨床にともに 立ち向かっている根來秀樹先生。先生との出会いが無ければ,児童精神科医としての今の僕は存在し得なかったでしょう。本当にありがとうございます。
きょうこころのクリニックでともに働くドクター,心理士,看護師,スタッフのみんな。クリニックでは二次予防と三次予防がメインですが,一次予防やアウトリーチの活動としての執筆講演活動を応援してくれてありがとう。
そして,子どもたちと保護者さま。至らないところもありますが,僕も日々の診療から勉強させてもらっています。学んだことは必ず活かして,今後の診療にさらにフィードバックしていきます。

最後に。昔から本を書くのが大好きで,幼少時は自作の小説を楽しみに読んでくれた,兄弟。ありがとう。
僕を一生懸命育ててくれ,いつも応援してくれている両親。感謝しています。
そして,毎日温かいご飯を用意して僕を支えてくれる妻,笑顔を絶やさない息子,愛犬ラブとピノコ。安心して帰れる家庭があるから,僕は仕事に頑張ることができています。
ありがとう。すべての人々への感謝を忘れず,これからもぼちぼち頑張ります。子どもたちの明るい未来を信じて。

2012年3月
子どもたちのこころをささえる居場所である
きょうこころのクリニック,診察室にて。

姜 昌勲


著者略歴

姜 昌勲(きょう・まさのり)
医療法人きょう理事長,児童精神科医,医学博士,臨床心理士,精神保健指定医,日本医師会認定産業医,日本精神神経学会精神科専門医。奈良県立医科大学卒業後,安来第一病院,垂水病院をへて奈良県立医科大学精神医学講座助手(助教),病棟医長。
2005年,奈良市学園前にてきょうこころのクリニックを開院。2010年には,大和西大寺きょうこころのクリニックを開院。現在は学園前と西大寺の2院体制で診療にあたっている。