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『ハンドテストとロールシャッハ法』
──投影法バッテリーを学ぶ

佐々木裕子(福岡教育大学講師,米国在住臨床心理士)著

定価3,000円(+税)、210頁、A5版、並製
C3011 ISBN978-4-904536-24-7

心の次元をとらえる心理アセスメント

この本は,投影法検査「ロールシャッハ」と「ハンドテスト」を,実際の臨床現場でのクライエント理解のためにテストバッテリーとして用いることを模索した臨床実践の1冊です。
一般にテストバッテリーというと「意識水準を捉える質問紙法と無意識水準を捉える投影法の組み合わせ」と理解されていますが,本書によってこうした心理検 査法に関する誤解を解消することができればと思っています。そのために,心理検査法が捉える人格側面についての基礎的な理論枠として「投影次元」概念を提 案しました。これによって,心理検査法として最も重要な技法とされるロールシャッハ法と,新しく開発された投影法検査であるハンドテストの投影法バッテ リーを組むことで,心理アセスメントを非常に有意味なものとすることができます。
本書を通して,読者の皆様に投影法を用いた事例解釈の手ごたえの深さ,反応プロトコルを辿っていく中で立ち上がってくる,被検者(クライエント)の人となりを味わうことの醍醐味も伝えられたらと願っています。

※誤植あり;該当ページのダウンロード

本書の詳しい内容


おもな目次

第?T部 理論編――心理検査法と投影次元

第1章 心理検査法が捉える人格側面
(1)心理検査法における投影水準概念
1.投影法検査の意識・無意識概念
2.投影法検査の分類と投影水準概念
(2)心理検査法のための人格論──構造分析
1.Wagner博士による構造分析理論とは
2.構造分析と心理検査法

第2章 テストバッテリーのための理論枠──「投影次元」
(1)「投影次元」概念の提起
1.「投影次元」概念の定義
2.他の理論との関係
(2)「投影次元」の違いによる心理検査法の再位置づけ
1.心理検査法の位置づけ
2.ハンドテストとロールシャッハ法のテストバッテリー

第3章 新しい投影法検査ハンドテストが捉えるもの
(1)ハンドテストの概要
1.ハンドテストの成り立ちと理論的背景
2.スコアリング・システムと解釈方略
(2)ハンドテストの図版継列と現実適応次元
1.ハンドテストの図版特性(カードプル)の基礎的データ
2.ハンドテストの図版継列の臨床可能性
第?U部 事例編──ハンドテストとロールシャッハ法

第4章 投影次元概念によるハンドテストとロールシャッハ法の統合─事例A子
(1)ハンドテストとロールシャッハ法の統合
(2)事例A子の投影法バッテリー解釈
1.事例概要
2.検査時の様子と検査目的
3.A子のハンドテスト反応と解釈
4.A子のロールシャッハ反応と解釈
(3)投影次元の違いからみた投影法バッテリーの解釈

第5章 ハンドテストとロールシャッハ法の対人反応の意味──事例Eさん
(1)ハンドテストとロールシャッハ法における対人反応
(2)事例Eさんの投影法バッテリー解釈
1.事例概要
2.検査時の様子と検査目的
3.Eさんのハンドテスト反応と解釈
4.Eさんのロールシャッハ反応と解釈
(3)投影法バッテリーに表れる対人反応の違い

第6章 ハンドテストとロールシャッハ法に表れた摂食障害者の両価性──事例Rさん
(1)摂食障害者における両価性と投影次元
(2)事例Rさんの投影法バッテリー解釈
1.事例概要
2.検査時の様子と検査目的
3.Rさんのハンドテスト反応と解釈
4.Rさんのロールシャッハ反応と解釈
5.Rさんのハンドテストとロールシャッハ法の統合解釈
(3)摂食障害者の両価性についての投影次元による検討

第7章 投影法バッテリーによる治療効果のアセスメント──退院時の事例Rさん
(1)投影法による治療効果のアセスメント
(2)退院時の事例Rさんの投影法バッテリー解釈
1.事例概要
2.検査時の様子と検査目的
3.退院時のRさんのハンドテスト反応と解釈
4.退院時のRさんのロールシャッハ反応と解釈
(3)Rさんの入院時と退院時の投影法バッテリー比較
1.Rさんのハンドテスト反応の比較
2.Rさんのロールシャッハ反応の比較
3.Rさんの投影法バッテリーによる治療効果理解
4.投影次元による治療効果の理解

第8章 病理的反応に表れる安心感のなさと投影次元──事例Tさん
(1)病理的反応と図版との体験的距離
(2)事例Tさんの投影法バッテリー解釈
1.事例概要
2.検査時の様子と検査目的
3.Tさんのハンドテスト反応と解釈
4.Tさんのロールシャッハ反応と解釈
(3)投影次元の違いから理解した病理的反応
第?V部 展望編──投影法バッテリーのすすめ

第9章 ハンドテストとロールシャッハ法の投影法バッテリー
(1)投影法バッテリーにおける運動反応
1.ロールシャッハ法における運動反応
2.運動反応を捉えるための投影法ハンドテスト
(2)ハンドテストを要としたテストバッテリー

第10章 心理検査法の臨床的意味
(1)臨床的ツールとしての心理検査法理解
(2)心理検査場面の臨床的意味


はじめに

本書は,筆者の学位論文「投影次元の違いによる心理検査法の理解―ハンドテストとロールシャッハ法のテストバッテリーを中心に」(筑波大 学,2008年)を大幅に修正・加筆したものです。この学位論文には,筆者の投影法検査に関する博士課程以降の研究のほとんどが含まれていたのですが,そ れをそのまま出版するにはあまりにもテーマが多岐にわたりすぎていました。本書を出版するにあたり,筆者が一番書きたかったのは,ハンドテストとロール シャッハ法をテストバッテリーとして組んだときの,事例理解の面白さでした。
投影法検査,いえ心理検査の代表とでもいえるロールシャッハ法と比べて,ハンドテストはまだまだほとんど知られていない心理検査法なので,ハンドテストを 取り上げただけで,本書は“ハンドテストの本”と認識されるのだと思いますが(もちろん,ハンドテスト・マニュアルの翻訳者の一人として,筆者としてもハ ンドテストの普及にはやぶさかではないのですが……),私としては,本書によってハンドテストの有用性を紹介するというよりも,ロールシャッハ法を含めた 投影法を用いた事例解釈の手ごたえの深さ,反応プロトコルを辿っていく中で立ち上がってくる,被検者の人となりを味わうことの醍醐味を伝えたかったので す。
そこで出版にあたり,本書は投影法バッテリーの理論的背景とその解釈事例の紹介に焦点を絞って再構成しました。ただし,どうしても捨てがたかったのが,ハ ンドテストのカードプルに関する研究でした。ロールシャッハ法に関しては,すでにロールシャッハ図版の刺激価に関する多くの研究がなされており,中でも中 井久夫先生の「ロールシャッハ・カードの美学と流れ」(『アリアドネからの糸』1997年,みすず書房に再録)は,ロールシャッハ図版の“継列”理解の奥 深さを教えてくれます。同じように,ハンドテストにもカードの配列順は,これでなければならない何かがあります。それを理解していないと,プロトコルを 辿っていく面白さ,興味深さは解釈できないと思われました。そのため,ハンドテストのカードプルに関する研究については残すことにしました。こうして本書 は,第?T部として,投影法バッテリーの基礎理論となる投影次元に関する解説と,ハンドテストのカードプルに関する研究成果について紹介した『理論編』 を,第?U部には,ハンドテストとロールシャッハ法のテストバッテリー事例をまとめた『事例編』,そして最後に,第?V部『展望編』を加えた3部構成とし て出版することにしました。
第?T部の『理論編』は,以下に記載する紀要および雑誌掲載論文,そして博士論文を修正・加筆したものです。検査法の分類概念や心理検査法のための人格理 論である構造分析理論,そして筆者の提起する投影次元概念について紹介しました。理論的概念の説明のため,少々退屈な内容になってしまいましたが,しか し,有名なシュナイドマンの検査法分類概念が,心理学の教科書などで微妙に誤解されて紹介されていることなどは,投影法を学ぶ上でぜひ知っておいてもらい たいことだと思っています。また,すでに述べましたが,ハンドテストのカードプルに関する第3章については,ハンドテストをやってみようという方には,ぜ ひとも知っておいていただきたい興味深いデータです。ハンドテストなんて初めて聞いたという方には,ぜひこの章だけでも読んでから第?U部に進んでもらえ たらと思います。
〈第?T部 筆者執筆関連論文一覧〉
第1章
佐々木裕子(2001)「構造分析」理論の紹介(1)―投映法検査「ハンドテスト」の解釈から.静岡大学人文学部人文論集,第51号の2, 77-92.
佐々木裕子(2001)「構造分析」理論の紹介(2)―摂食障害事例の投映法検査統合解釈から.静岡大学人文学部人文論集,第52号の1, 83-108.
第2章
佐々木裕子(2009)投影法バッテリーによる治療効果のアセスメント―ロールシャッハ法とハンドテストによるテストバッテリー.ロールシャッハ法研究,第13巻, 1-9.
第3章
佐々木裕子・伊藤宗親・小川俊樹(1996)ハンドテストに関する研究?T―施行方法が反応に及ぼす影響.筑波大学心理学研究,第18巻, 199-207.
佐々木裕子(1997)ハンドテストに関する研究?U―集団記入法による日本人大学生の反応特徴の検討.福岡教育大学紀要,第46号,第4分冊, 199-207.
佐々木裕子(1999)日本におけるハンドテストのカード特性について.福岡教育大学紀要,第48号,第4分冊, 215-228.
佐々木裕子(2007)投映法検査ハンドテストにおける反応内容の評価―新しい質的カテゴリーと統合反応の紹介.ロールシャッハ法研究,第11巻, 49-60.

第?U 部の『事例編』は,偶然にも思春期・青年期の女子事例のみになってしまいました。実際には,男性事例はもちろん,さらに幅広い年齢層の患者さ んを対象としたデータもあったのですが,ハンドテストとロールシャッハ法の両方のプロトコルを詳細に紹介する事例として選んだ結果,この4事例になりまし た。ハンドテストとロールシャッハ法のバッテリーは,さまざまな被検者を対象として(臨床群ばかりでなく,健常群の能力開発などに)も十分に役立つものだ と思っています。そうした広範囲な事例紹介については,これからの課題とさせてください。本書に収録した事例は,下記の紀要や雑誌にて掲載されたもので す。
〈第?U部 筆者執筆関連論文一覧〉
第4章
佐々木裕子(2001)ハンドテストとロールシャッハ法の統合解釈の試み―構造分析理論を用いた事例理解.ロールシャッハ法研究,第5巻, 67-80.
第5章
佐々木裕子(2010)ロールシャッハ法とハンドテストにおける対人反応の意味.ロールシャッハ法研究,第14巻, 1-9.
第6章・第7章
佐々木裕子(2001)「構造分析」理論の紹介(1)―投映法検査「ハンドテスト」の解釈から.静岡大学人文学部人文論集,第51号の2, 77-92.
佐々木裕子(2001)「構造分析」理論の紹介(2)―摂食障害事例の投映法検査統合解釈から.静岡大学人文学部人文論集,第52号の1, 83-108.
佐々木裕子(2009)投影法バッテリーによる治療効果のアセスメント―ロールシャッハ法とハンドテストによるテストバッテリー.ロールシャッハ法研究,第13巻, 1-9.
第8章
佐々木裕子(2008)第6章 安全空間発見の心理テスト法.In:小谷英文編:ICU 21世紀COEシリーズ第3巻『ニューサイコセラピィ―グローバル社会における安全空間の創成』風行社,東京, pp.117-133.
第?V部の『展望編』は,これまでに執筆した運動反応の意味に関する考察や,心理検査法と心理療法のつながりについての筆者の考え方について,改めて書き 直したものを収録することにしました。これによって,ハンドテストとロールシャッハ法の投影法バッテリーの臨床的意味とその可能性の広さを読者に伝えられ ればと願っています。
〈第?V部 筆者執筆関連論文一覧〉
第9章
佐々木裕子(2001)ハンドテストとロールシャッハ法の統合解釈の試み―構造分析理論を用いた事例理解.ロールシャッハ法研究,第5巻, 67-80.
第10章
佐々木裕子(2008)第6章 安全空間発見の心理テスト法.In:小谷英文編:ICU 21世紀COEシリーズ第3巻『ニューサイコセラピィ―グローバル社会における安全空間の創成』風行社,東京, pp.117-133.

ところで,何度も述べている通り,本書はハンドテストとロールシャッハ法という投影法同士のテストバッテリーを提案しているのですが,その前提とし て両検査を繋ぐ“投影次元”という鍵概念を提起しています。これは,ハンドテストの創始者でもあるWagner博士の構造分析理論(The Structural Analysis)を基にしたもので,わが国では投影水準として当たり前に理解されている,心理検査法が捉える人格側面についての理解を,筆者なりに明確 に図式化し直そうと試みただけの概念です。というのも,一般にテストバッテリーというと「意識水準を捉える質問紙法と無意識水準を捉える投影法の組み合わ せ」といった誤った捉え方がなされており,こうした心理検査法に関する大きな誤解が,テストバッテリーの選択や検査結果の統合に大きな障害となっているよ うに感じたからです。
投影法検査を深く学習する中で,こうした誤解は自然に解消されていくように思われますが,もし心理検査法が捉える人格側面について,すべての検査法を包括 した基礎的理論枠があったなら,これまで見過ごされがちであったテストバッテリーについての誤解を解消することができるのではないでしょうか。また,投影 法検査を理解する視点から,すべての心理検査法を概観できるような概念があれば,投影法検査に対する偏見や誤解を今よりも少なくすることができるかもしれ ません。筆者が“投影次元”概念をまとめた背景には,こうした思いがあったように思います。そこには,昨今の投影法検査に対する批判や,臨床心理士を目指 す大学院生のロールシャッハ法に対する抵抗感を少しでも軽くしたいという意図もあったのかもしれません。とにかく,臨床心理学を学んでいる多くの大学院生 に,投影法検査が“テスト”ではなく,心理療法や臨床心理的援助の流れの中の一過程として理解できることに気づいてもらいたいという思いがあるのは確かで す。
こうしたことから,本書の読者として,投影法検査を学習し始めた大学院生や,臨床現場で心理検査法の解釈に悪戦苦闘している若手臨床家の方々を想定し, 第?U部の事例編では,解釈所見の具体的な例にもなるように心がけました。筆者のこれまでのロールシャッハ法の学習過程を考えてみると,学部3年から大学 院の計7年間に渡って,毎週のようにロールシャッハプロトコルや解釈所見に触れることができたことが,非常に大きな糧になっていると思っています。自分の 事例以外にも可能な限り多くの事例に触れるということは,投影法検査の学習において欠かすことのできないことです。しかし,多くの大学院生にとって,心理 検査の事例検討を体験する機会は,なかなか得られないのが現状のようです。そこで,本書によって少しでもそうした機会を作ることができればと願っていま す。
心理療法の実践には一種の訓練が必要なように,投影法検査の実施にも訓練が必要です。筆者の恩師である筑波大学心理学系教授小川俊樹先生は,「ロール シャッハ法を習得するということは,『包丁一本♪さらしに巻いて~♪』の世界と同じ。これ一つで修行の旅に出て生きていけるから」といったようなことを 言っておられました。まさに料理人としての腕とその道具である包丁は,臨床家としてロールシャッハ法を通してクライエントを理解する実践力(=腕)と,道 具であるロールシャッハ図版(=包丁)との関係そのものといえます。ロールシャッハ法を使いこなすことは,「これ一つで生きていける」といえるほど,最低 限の臨床家としての役割を果たすことにつながるのではないでしょうか。心理検査所見から有用な患者理解を提供できれば,心理学の専門家であるという非常に 大きな強みを持つことができるのです。
筆者は,小川俊樹先生の下でロールシャッハ法の“包丁さばき”を修行しながら,幸運にも先生からハンドテストをも授かることができました。ロールシャッハ 法を“包丁”に例えるなら,ハンドテストは“ぺティナイフ(小包丁)”といったところでしょうか。ロールシャッハ法ほど万能とはいえないまでも,小回りが 利いて,さまざまに利用することができ,料理に幅を持たせることが可能となる貴重な小道具です。この二本は本当に相性の良いワンセットの道具のように思い ます。筆者がそれを実感できたのは,2002年にハンドテストの創始者であるWagner博士を訪問し,ご自宅に滞在させていただきながら,直接ハンドテ ストの事例解釈指導を受けてからだと思います。Wagner先生は,多重人格障害のロールシャッハ・ワグナー指標として知られるロールシャッハ法の専門家 でもあります。ロールシャッハ法を前提としたハンドテスト理解は,文化や言葉の壁を越えて,非常にすんなりと筆者の喉に入っていきました。
小川先生のロールシャッハ法が,じっくりと味わうような,全体をバランスよく統合した洗練された日本料理なら,Wagner先生のハンドテストは,個性的 なそれでいて全体を引き締めてくれるような前菜やデザートのようです。一品料理なら,日本酒を引き立ててくれる絶品の肴,付きだしです。ハンドテストは, 簡便な検査であるがゆえに,鋭く解釈の要点だけを抽出してくれます。ただし,Wagner先生は,検査結果を拡大解釈しすぎないようにと厳しく諭してくれ ました。ロールシャッハ法もハンドテストも,包丁に例えたように,使い方を誤れば非常に危険なものになります。それは,被検者にとってだけでなく,検査者 自身にとってもです。そのことをいつも肝に銘じつつ,料理したものを検査者(セラピスト)だけが味わうのではなく,被検者自身にサーブすることで,被検者 が自らの世界をおいしく味わうことができるように,ハンドテストとロールシャッハ法をそのように用いられるようになることが,現在の私の目標です。

本書を執筆している間,私は家族の都合で大学教員の職を離れ,アメリカ・カリフォルニア州で家族とともに生活しています。臨床から離れてしまい,二 本の包丁が錆付いてしまうのではないかと心配していたところ,本書の出版を引き受けていただいた遠見書房の山内俊介氏から家族療法を専門とされている生田 倫子先生を紹介してもらいました。生田先生はパロアルトにある戦略的家族療法・短期療法のメッカであるMRI(Metal Research Institute)にて研修を受けられ,現在も日本とMRIを仲介する貴重な役割を担っておられます。なんと,そのMRIは今住んでいるカリフォルニア (サニーベール)の自宅から車で15分ほどのところにあるのです。学部時代に書籍から必死で学んでいた家族療法の発祥の地であるMRI。そこで自分が研修 を受けることができるとは,これまで考えたこともなかったことでした。現在は心理検査法を専門にしている筆者にとって,Strategic Family Therapyなど,全く未知の領域への新たなチャレンジに等しいのですが,投影法検査と心理療法をつなぐ新しい可能性や方向性を探っていければと願って います。
最後になりましたが,本書の出版には,本当にさまざまな方々にお世話になりました。ここで改めて御礼を申し上げたいと思います。まず,貴重な検査データを 提供していただいた被検者の方々,今となっては直接お礼を述べることのできない私のクライエントの皆様に心よりお礼を申し上げます。心理検査は,心理面接 と同じように被検者との共同作業です。その中で本当に多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。そして,ハンドテストを日本に紹介す る大きな仕事に私を迎えてくださった学習院大学教授吉川眞理先生と,神戸学院大学講師山上榮子先生には,公私にわたりいつも私を励まし支えていただいてい ます。吉川先生は,本書の出版を迷っていた私の背中を押して下さり,遠見書房の山内氏を紹介して下さいました。お二人のお力添えがなければ,本書の出版は かなわなかっただろうと思います。心より感謝申し上げます。また,米国での私のハンドテスト研究を支えて下さったアクロン大学(The University of Akron)のウィラー博士(Dr. Charles A. Waehler)と,研究職は引退されながらも,自らのロールシャッハ解釈システムの追求を続けておられるハンドテストの創始者ワグナー博士(Dr. Edwin E. Wagner)には,今でもまだ感謝の言葉が見つかりません。米国での私のハンドテスト体験は,言葉や文化の枠を超えた人の手の温かさで占められていま す。お二人に心からお礼を申し上げたいと思います。
そして何よりも,恩師である筑波大学心理学系教授小川俊樹先生には,本書のご報告を一番にさせて頂かなければなりません。博士論文の執筆にあたり,鍵概念 となる投影次元構想のヒントを頂いたのは先生からでした。小川先生には,研究や臨床ばかりでなく,いつも様々なご相談にのって頂いています。これからも先 生には,投影法を用いた心理臨床実践のための修行の道を照らし続けていただきたいと切に願っています。あちこちと寄り道をしながらの不肖の弟子ですが,先 生の示してくださる道を外れることなく歩き続けていくことが,せめてものご恩返しだと思っています。最後に,私の拙い博士論文の出版を快く引き受けていた だき,執筆に関する様々な疑問や問題を素早く的確に解決して頂いた遠見書房の山内俊介氏に深く感謝申し上げます。

2010年12月5日
佐々木裕子


著者略歴

佐々木裕子(ささき・ひろこ) 臨床心理士

1968年 広島県生まれ
1991年 筑波大学第二学群人間学類卒業
1996年 筑波大学大学院博士課程心理学研究科単位取得退学
1996年 福岡教育大学教育学部心理科助手,講師,助教授
2000年 静岡大学人文学部社会学科助教授(~2004年退職)
2002年 文部科学省在外研究員(若手教官)(長期甲種)
(米国オハイオ州立アクロン大学心理学部留学)
2005年 国際基督教大学教養学部特任講師
2006年 了?コ寺大学健康科学部助教授・准教授(~2009年退職)
2008年 筑波大学大学院人間総合科学研究科 博士(心理学)取得
2011年現在 米国カリフォルニア州サニーベールに家族とともに在住。

主な著訳書
共訳書「ハンドテスト・マニュアル」(誠信書房,2000年)
共著書「臨床ハンドテストの実際」(誠信書房,2002年)
分担訳「基本からのロールシャッハ法」(小川俊樹監訳,金子書房,2005年)
分担執筆「ニューサイコセラピィー-グローバル社会における安全空間の創成」(小谷英文編,風行社,2008年)