対人援助職の仕事のルール──医療領域・福祉領域で働く人の1歩め,2歩め

対人援助職の仕事のルール
──医療領域・福祉領域で働く人の1歩め,2歩め

野坂達志 著
2,200円(+税) 四六判 並製 192頁
C3011 ISBN978-4-86616-165-5
2023年4月発行

 

この本は,医療から行政の福祉まで幅広い仕事をしてきたソーシャルワーカー+セラピストの野坂達志先生による,対人援助職の仕事の教科書です。
専門的な勉強をしてきた人だけではなく,そうではない人も,ひょんなことから対人支援の仕事に就くことがあります。専門職だって現場が違えば,戸惑うものです。こうした人たちの研修を何度も重ねてきた野坂先生は,「ああ,みんなにわかる教科書を作りたい。それも,すごい現実的なやつ」と自ら書いてみることにしました。
どうすれば伝わるかと頭をひねりつつ,鉛筆なめなめ,まとまった本がこの本です。
最低でも知っておきたい「お作法」から,「臨床的な知識」「こころに問題を抱えた人たちとの付き合い方」「よりプロフェッショナルに近づくための応用編」まで,対人援助職の基本がわかる,あり方がわかる,スキルがわかる1冊です。


おもな目次
第1章 対人援助の「ルール」と「技法」──初級コース
第2章 家族療法の援助技術──中級編
第3章 統合失調症スペクトラム障害の症状とケア
第4章 精神科受診を勧める際の難しさ
第5章 自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)について
第6章 コラボレーションのお作法
第7章 地域医療における精神障害者の尊厳と理解
第8章 アウトリーチにおける危機介入
第9章 クライエントのスキルを育むために
第10章 職場においてのメンタルヘルス
第11章 「休職」から「復職」にかけての支援
第12章 中途退職の前に知っておくこと
第13章 メンタル強化法について
第14章 Q&A:あなたの悩みにお答えします


著者経歴
野坂達志(のさかたつし)
鳥取県生まれ。群馬・埼玉・広島等の民間精神科で精神保健福祉士,公立病院と自治体で公認心理師として勤務。令和3年,産業保健担当監で定年退職。
学んできた技法:精神分析,生活臨床,集団療法,内観,システムズアプローチ,エリクソン催眠,EMDR,TFT
主な著書:「家族はこんなふうに変わる」(昭和堂),「新訂 統合失調症とのつきあい方」(金剛出版,単著),「事例で学ぶ統合失調症援助のコツ」(日本評論社,単著),「家族療法のヒント」(金剛出版,共著),「高齢者のこころのケア」(金剛出版,共著),「孤立を防ぐ精神科援助職のためのチーム医療読本」(金剛出版,共編著),「カウンセリングテクニック入門」(金剛出版,共著),「実践! アウトリーチ入門」(日本評論社,共著),「生活臨床の基本」(日本評論社,共著),「ブリーフセラピー入門」(遠見書房,共著) など


はじめに


いきなりですが,人は出会う人や物によって人生の展開が大きく変わります。それは家族(生い立ち)や仲間によってもありますが,就職後の出会いや生き方を決定させるような書物であったりするかもしれません。
私の場合は,書物でいえば故中井久夫先生の『精神科治療の覚書』という一冊であり,人でいえば家族療法の師匠である東豊先生との出会いです。
今から40年前になりますが,フロイド派の精神分析を学び,群馬県の単科の精神科病院で朝から晩まで面接をしていました。アパートに帰ると床に崩れるように2時間眠り,それから夕飯を作るような生活でした。自分の臨床にはある程度自信はありましたが,依存症の治療には精神分析だけでは時間がかかり過ぎ,患者の増加に対応し切れず申し訳なさを抱えていました。
そんなある日,中井先生のご著書を読んで「ああ,そうだったのだ」と腑に落ちました。さらにその10年後,嗜癖問題の研修で偶然に東先生からスーパーバイズを受けました。それまで「家族療法」という言葉も聞いたことがない私が,「システムズアプローチ」の大家から教わったのですから,それはもう「目からうろこ」どころではありません。外敵の侵入を知った免疫細胞が一斉に動き出し,しばらくは茫然自失だったことを思い出します。
しかし,その日を境に私の臨床は確かに変わったのです。昔から「何かを得るには,何かを捨てる必要がある」といいますし。
さて前フリが長くなりましたが,何が言いたいかと言うと私は読者の皆さんの臨床に役立つ本が書きたかったということです。しかも分厚くなくて,手帳くらいのサイズで。困ったらすぐに取り出せて調べることが出来るような,そんな本が作りたかったのです。読者対象はもちろん誰でも歓迎なのですが,できれば道に迷っている「医療や福祉領域で働く対人援助職」に読んで欲しい。特に福祉領域では個々が多忙ですから,事例検討会やスーパーバイズといった研修の磯会がない。あっても足りていないのではないでしようか。そう考えて中身は,「対人援助職のルール」「家族療法の援助技術」「精神科受診の勧め方」「自閉症スペクトラム障害」「連携のお作法」「地域医療の尊厳」「メンタルヘルス」「復職支援」「中途退職の前に知っておくこと」など多岐に渡ります。いささか「手帳」というサイズではなくなってしまいましたが,きっと役に立つところがあるはずです。本書が援助職の皆檬のお役に立ってくれることを願つています。

2023年
野坂達志


 

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