ママたちの本音とグループによる子育て支援──子どもがカワイイと思えない」と言える場をつくる

ママたちの本音とグループによる子育て支援
――「子どもがカワイイと思えない」と言える場をつくる

(相談室「みみずく」主宰,北星学園大学名誉教授)相場幸子 著

1,800円(+税) 四六判 並製 200頁 C0011 ISBN978-4-86616-134-1

子育てが辛いのはあなただけじゃありません──
お母さんたちの思いを聴くグループセラピーの記録

この本は,子育てに悩む母親のためのグループ活動の記録の中から心に残るやりとりを集めたものです。
子どもに対する怒りや悲しみ,かわいくないという思い,うまく行かないことへのいらだちなどが自由に語られたグループ・セラピーは,安心の場として機能し,多くの母親たちを救ってきました。
著者の相場幸子さんは,家庭裁判所調査官として心理療法家のキャリアをスタートし,大学教員や専門家向けの研修講師などで多くの支援者を育てつつ,ヴォランティアを含めたさまざまな相談活動をしてきました。それらと並行して母子のための相談室「みみずく」を開設。本書では,「みみずく」の20数年間の活動のうち,母親グループの声をまとめたものです。
「母親であれば,母性愛があるはず」「子どもためにすべてを犠牲すべき」などの社会通念の中で,母親たちは苦しい思いをしてきました。母親たちの本当のこころを聞いてください。


主な目次
第1章 「みみずく」のこと
立ち上げまでのさまざまな出会い/児童虐待問題との出会い/ソリューションとの出会い/「みみずく」と名付けた理由/相談室の開始から,グループの出発まで

第2章「我が子を愛したい母のグループ」──最初の三年間
グループを始める(一年目九~十二月)/二年目/三年目/三年間のまとめ

第3章 我が子を愛したい母のグループ(第二世代)
一年目春(四月~七月)/一年目秋(九月~十二月)/二年目春/二年目秋

第4章 第二世代グループ・続き
三年目春(四月~七月)/三年目秋(九月~十二月)/三年目冬(一月~三月)/四年目春・秋・冬/その後のグループ

第5章 一人ぼっちの魂の叫び(詩集)

第6章 グループ21(思春期以降の子を持つ母のグループ)
もう一つのグループ/初年度(七月~翌年三月)/二年目(四月~翌年三月)/十年の歳月を経て

第7章 カウンセラーの呟き

児童虐待と親/「みみずく」の統計から/グループを続けてこられた要因 46版並製横書き


著者略歴

相場幸子(あいばさちこ)
臨床心理士,相談室「みみずく」主宰・カウンセラー,北海道解決のための面接研究会代表,北星学園大学名誉教授。
早稲田大学文学部哲学科心理専修卒。札幌家庭裁判所調査官,米国カリフォルニア大学人間発達研究所研究助手,札幌市児童相談センター相談員等を経て北星学園大学文学部,社会福祉学部で教鞭をとり2003年退職。1975から2007年まで,北海道クリスチャンセンター家庭福祉相談室(ヴォランティア・スタッフおよびスーパーヴァイザー)。
1998年,母子相談室「みみずく」開設
著書(共著):「みんな元気になる 対人援助のための面接法─解決志向アプローチへの招待」(相場幸子・龍島秀広編,2006,金剛出版),「読んでわかる やって身につく 解決志向リハーサルブック─面接と対人援助の技術・基礎から上級まで」(龍島秀広・阿部幸弘・相場幸子編・解決のための面接研究会著,2017,遠見書房)


はじめに

 

この本は(母子)相談室「みみずく」における二十数年間の活動のうち主として、子育てに悩む母親のためのグループ活動の記録をまとめたものです。
この本を読んで頂きたい読者として、私は、主に次の3群の方たちを想定し、その方たちのことを思いながら、その方たちに宛てて書きました。

まず第1は、現在子育て中のママたち、中でも特に子育てが辛いとか、うまく行かないとかで悩んでおられるお母さんたちです。本の中のママたちのホンネをさらけ出した対話を読んで、「私だけじゃないんだ」と安堵し、彼女たちの変化していく様子に「私も変われる。いつか変わって行く」と確信してください。先輩たちの経験話の中に何かヒントが見つかるかもしれません。そしてできれば、貴女の間近にきっといるはずの、同じ思いを持つお仲間と繋がれる場所を探して下さると良いなと、心から思います。また、それほど悩んでいらっしゃらないにしても子育て中のママならば、グループの対話や、第5章の詩の中に共感できるコトバがたくさんあるでしょう。
同じように是非読んで頂きたい第2の読者群は、現在子育て支援に関わっている専門職、担当者の方たちです。保育園、幼稚園の先生、保健師、自治体職員、心理士、福祉職、地域ヴォランティア、その他子育て支援に関心のある方たち、そして学校現場で保護者対応に苦心していらっしゃる先生方など親との接点を持つ方々です。お母さんたちが何を考え、何に悩み、苦しみ、そしてどんなに努力しているかを是非知って頂きたいと思います。その中で支援者としてどう関わり、何をすれば支援になるのかを考える参考にして頂ければ幸いです、と言うと偉そうに聞こえますね。もちろん「みみずく」はほんの小さな相談室の、ささやかな、つたない試みに過ぎません。もっと役に立つ、もっと大変な支援をしていらっしゃる方々が大勢いらっしゃるのも知っています。支援の方法も一つではありません。状況や立場、そして対象となるお母さんの性格や事情によってすることもやり方も千差万別です。でも、そんな方たちにとってもこの本の中の何かが、何らかのヒントになれば嬉しいと思っています。
第3はそれ以外のすべての方を含みますが、特にお父さん方、男性の皆さま、あるいは男女を問わず子育て問題に関心を持っておられる方々です。児童虐待が増えているのは嘆かわしい、今の親は何を考えているのか、母親教育が必要、などと嘆いておられる方たちにも是非読んで頂きたいのです。今の母親たちがどんなに真剣に悩み、努力しているかをわかって頂きたい。そして、子育ての責任を母親だけに負わせるのでなく、父親はもちろんのこと、広く社会全体の責任として、「子育てのしやすい社会」に変えて行く努力に参加して頂きたいと思っています。

相場幸子

 

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