心理支援のための臨床コラボレーション入門―― システムズアプローチ、ナラティヴ・セラピー、ブリーフセラピーの基礎

(関内カウンセリングオフィス代表) 田中 究 著

本体2,800円(+税) ISBN978-4-86616-121-1 C3011 四六判並製 320頁

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心理療法を学んだけれど、現場でうまく使えない……それはクライアントの枠組みにうまく合わせられていないからかもしれません。
本書は、家族療法やシステムズアプローチ、ナラティヴ・セラピー、ブリーフセラピーなどの技法を臨床でどのように用いたらうまくいくのかを、セラピストとクライアントの協力関係(コラボレーション)の観点から解き明かしていきます。多くの図版や事例、比喩を用いた解説で初学者にもわかりやすく学べる入門書です。諸技法を横断した臨床の基礎がじっくり身につく、心理支援に関わる方必読の一冊。


主な目次
第Ⅰ部 基礎編
序 章 インターパーソナルなアプローチ
パート1 フレーム
第1章 フレーム
第2章 フレームのバリエーション
第3章 パンクチュエーション
第4章 ダブルバインド
第5章 ストーリー構成
第6章 ジョイニング
第7章 リフレーミング
パート2 パターン
第8章 コミュニケーション・パターン
第9章 MRIのコミュニケーション公理
第10章 臨床実践におけるパターン

第Ⅱ部 応用編
第11章 家族療法をコラボレイティヴに活用する①
第12章 家族療法をコラボレイティヴに活用する②

第Ⅲ部 理論編
第13章 諸理論をコラボレイティヴに活用する
第14章 ナラティヴ・セラピーをコラボレイティヴに活用する
終 章 知りえないこと、を超えて


著者紹介
田中 究(たなか きわむ)
1974年、東京都生まれ。
慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了。修士(社会学)。公認心理師、臨床心理士。
現在、関内カウンセリングオフィス代表。慶應義塾大学保健管理センター非常勤カウンセラー。跡見学園女子大学大学院、大妻女子大学、東京大学大学院等非常勤講師。日本家族療法学会認定スーパーヴァイザー、同認定ファミリー・セラピスト、日本ブリーフサイコセラピー学会常任理事。

著 書
『不登校・ひきこもりに効くブリーフセラピー』(分担執筆、日本評論社、2016)
『ワークで学ぶ学校カウンセリング』(分担執筆、ナカニシヤ出版、2019)
『みんなのシステム論―対人援助におけるコラボレーション入門』(共編著、日本評論社、2019)
『ブリーフセラピー入門―柔軟で効果的なアプローチに向けて』(分担執筆、遠見書房、2020)


はじめに

コラボレーション、あるいは「コラボ」は近年、すっかり世の中に定着しています。ちびまる子ちゃんとハローキティーの夢のコラボ、ロックバンドと演歌歌手の奇跡のコラボと、世の中、コラボだらけです。
対人援助の分野でコラボレーションというと、「多職種間連携」を指すこともありますし、セラピストとクライアントの協力関係を表すこともあります。
ちびまる子ちゃんであれハローキティーであれ、セラピストであれクライアントであれ、特定のキャラクターだけが目立っているようでは、それはコラボレーションとは言えません。相手の立場を十分に活かすことが、結局は互いの力を活かすことにつながり、単独ではなしえない成果が得られる、それがコラボレーションのエッセンスでしょう。
それでは、セラピストがクライアントとコラボレーションを行うには、どうすればいいでしょうか?
「良い仕事をしたい」「事態を改善したい」、善意にあふれ、熱意に満ちたそのようなセラピストの想いは、支援におけるエネルギーの源になります。その一方で、それはあくまでセラピスト側のものであって、クライアントのものではありません。また、セラピストが拠って立つ理論、技法、アプローチの方法といった専門知識も、やはりセラピスト側のものです。このような当たり前の前提から、次の3ステップが導き出されます。

ステップ1:セラピストの立場、知識、経験等をいったん脇に置くこと
ステップ2:クライアントの主張を知ること
ステップ3:セラピスト自身を変えること

専門性に基づいて、セラピストが先導するのではありません。あくまでも、クライアントの主張、価値観、態度、考え方等を活かしきること、そして何より大事なのは、クライアントを変えようとするのではなく、セラピスト自身を変えること。「え? セラピストを変えるの?」そうなのです、その結果として、クライアントにクライアントの望む変化が訪れることを期待します。
そんなふうに心がけていると、まるでクライアントに導かれているかのように支援が展開するようになります。臨床現場では、「そうそう! そういう感じ!」といったクライアントの反応をたびたび耳にするようになるでしょう。

コラボレーションがひとつ目のキーワードだとすると、もうひとつ本書のキーワードとなるのが「システム」です。システムという視点を持つと、ものごとをセットでとらえるのが上手になります。システム論的なアプローチは、臨床実践に登場する人と人とをひとつのセットとして考え、関係者同士がどうしたらより良く関われるようになるのか、研究を重ねてきました。コラボレーションも関係者相互の協力を意味する言葉ですから、「コラボレーション」と「システム」は、相性が良いのです。
さて、コラボレーションの仕方は様々です。本書では、家族システムにアプローチしてきた家族療法、諸システムへとアプローチを拡大したシステムズアプローチ、言語システムにアプローチするナラティヴ・セラピーにブリーフセラピーを加え、こうしたアプローチをクライアントとのコラボレーションに活かす方法について、お話ししていきたいと思います。

本書は「基礎編」「応用編」「理論編」によって構成されています。基礎編ではコラボレーションを実践する上での基本について述べます。基礎編は「パート1 フレーム」と「パート2 パターン」に分かれます。臨床実践に必要なことは、基礎編をご覧いただければ一通りおさえることができるでしょう。
続く応用編では、家族療法の知見をコラボレイティヴに活用するための考え方、また複数面接などやや高度な実践を取り上げます。
最後の理論編は、コラボレーションに関わる重要なポイントを厳選しました。多少難しいパートかもしれませんが、理論はセラピストの「体質」を決める、いわば基礎の基礎。ご一読いただけますと幸いです。


 

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