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197-9生徒指導小学校編

事例で学ぶ 生徒指導・進路指導・教育相談 小学校編 [改訂版]

長谷川啓三・花田里欧子・佐藤宏平 編

2,800円(+税) B5判 並製 200頁 C3011 ISBN978-4-86616-097-9

問題探しから解決志向の学校のために
この本は,学校教員にとって授業や学級経営とともに重要な仕事である「生徒指導」「進路指導」「教育相談」の基本と実践をまとめた一冊です。
いじめ,不登校,発達障害,こころの問題,学級崩壊など,子どもたちの周りにある問題が多様になっている現在,生徒指導・進路指導・教育相談には,教育学だけでなく,心理学的・福祉学的な知識が必要になっています。また子どもたちへの個別支援でもあることから,解決志向をベースにした臨床心理の技法も有用です。
本書は,学際的な知識や現代社会における家庭の状況など幅広い視点をまとめた上で,解決に至ったさまざまな事例を検討し,生きた生徒指導・進路指導・教育相談を学べるようになっています。
出来うる限りの生きた知恵を詰めた必読の一冊です。(本書は小学校向けになります。種々の統計データをアップデートした改訂版です。)


主な目次
第1章 生徒指導・進路指導・教育相談とは――意義と役割
長谷川啓三・花田里欧子・佐藤宏平
第2章 児童理解の基礎
奥野誠一
第3章 児童期の発達課題
藤岡久美子
第4章 不登校・ひきこもり
花田里欧子・佐藤宏平・若島孔文・横谷謙次・上西 創
第5章 いじめ
若島孔文・張 新荷・板倉憲政
第6章 児童期の非行にまつわる問題
三澤文紀・久保順也
第7章 児童期における発達障害の理解と対応
宮崎 昭
第8章 児童期における精神医学的問題
山中 亮・田上恭子
第9章 学校における緊急支援
若島孔文・森川夏乃
第10章 学校組織と関係機関・家庭との連携
奥野雅子・三谷聖也・生田倫子
第11章 カウンセリングの理論と技法
石井佳世・石井宏祐・松本宏明
第12章 進路指導の理論と方法
吉中 淳・高綱睦美・中村 修

コラム
「ふるさと」という文脈を生かした子どもの自己形成 ◆ 浅井継悟・赤木麻衣
動物介在教育と学校での動物飼育 ◆ 藤岡久美子
関係機関との連携をスムーズにする工夫 ◆ 小林 智・高橋恵子
小学生の社会形成・社会参加支援 ◆ 古澤あや
小学生の健康と安心の確保――性教育 ◆ 宮崎 昭
“いじめ”と“いじり”―楽しい雰囲気の裏に隠された“いじり特有のリスク”とその対応策 ◆ 坂本一真
困難な状況ごとの取り組み──小学生の貧困問題への対応 ◆ 古澤雄太
外国人児童の支援について──在籍学級担任の役割 ◆ 張 新荷・兪 幜蘭
小学校の被害防止・保護――社会的養護の充実:里親委託・里親支援の推進 ◆ 竹田里佳・花田里欧子
解決志向短期療法と子どもの問題解決 ◆ 高木 源
子どものトラウマ―PTSDとPTG ◆ 千葉柊作
インターネットにおけるコミュニケーションの特徴 ◆ 三上貴宏
家庭,小学校および地域の相互の関係の再構築──外部の力も活用した「開かれた学校」 ◆ 松田喜弘
第三者委員会 ◆ 長谷川啓三
小学校における多様な主体による取り組み ◆ 赤木麻衣・三道なぎさ
フランスの学校心理士制度 ◆ ニコラ・タジャン(立木康介訳)
小学生の「ゲーム」の問題とその対応 ◆ 加藤高弘
教員加配を活用した学校不適応児への支援 ◆ 三道なぎさ・高橋恵子
虐待する親だけが悪いのか? 親と子どもと社会の相互作用 ◆ 浅井継悟・板倉憲政
親との死別を経験した子どものサポート ◆ 長谷川素子


編者略歴
長谷川啓三(はせがわ・けいぞう)
東北大学名誉教授,日本家族カウンセリング協会理事長,ITC家族心理研究センター代表,日本ブリーフセラピー協会代表。教育学博士,臨床心理士。
主な著訳書:「ソリューション・バンク」(金子書房,単著),「震災心理社会支援ガイドブック」(金子書房,共編),「解決 志向介護コミュニケーション」(誠信書房,編著),ワツラウィック他著「変化の原理」(法政大学出版局,単訳),ド・シェイザー著「解決志向の言語学」(法政大学出版会,監訳)ほか多数。

花田里欧子(はなだ・りょうこ)
東京女子大学現代教養学部准教授,日本家族心理学会理事,日本ブリーフセラピー協会理事ならびに京都支部長。教育学博士,公認心理師,臨床心理士。
主な著訳書:「パターンの臨床心理学―G.ベイトソンによるコミュニケーション理論の実証的研究」(風間書房,単著),「ナラティヴからコミュニケーションへ」(弘文堂,共著),「学校臨床―子ども・学校をめぐる教育課題への理解と対応」(金子書房,共著),「心理療法の交差点―精神分析・認知行動療法・家族療法・ナラティヴセラピー」(新曜社,共著),日本家族心理学会編「家族心理学ハンドブック」(金子書房,共著),ソバーン&セクストン著「家族心理学―理論・研究・実践」(遠見書房・共訳)ほか多数。

佐藤宏平(さとう・こうへい)
山形大学地域教育文化学部准教授,日本家族心理学会理事(事務局長),日本カウンセリング学会編集委員。教育学博士,公認心理師,臨床心理士。
主な著訳書:「事例で学ぶ家族療法・短期療法・物語療法」(金子書房,共著),「学校臨床ヒント集」(金剛出版,共著),「社会構成主義のプラグマティズム」(金子書房・共著),日本家族心理学会編「家族心理学ハンドブック」(金子書房,共著),フランクリンら編「解決志向ブリーフセラピーハンドブック」(金剛出版,共訳),ソバーン&セクストン著「家族心理学―理論・研究・実践」(遠見書房・共訳)ほか多数。


はじめに

教育相談の中で活躍するものの一つに「カウンセリング」があります。本書の編者のひとりの,これまでの経験では,この方法の習得を目的としたワークショップで,もっとも熱心でかつ協力的に学ばれるのは,小学校で教鞭をとられる先生方でした。日本を含む世界のカウンセリング技法は,受容的で非指示的な技法から始まりましたが,今日では,その反対の指示的技法やCBTと略称される認知行動療法,集団カウンセリング,家族カウンセリングなどを加えて大きく展開をしています。
その展開の中で最も重要なものの一つは「解決志向」という,技法というよりは,カウンセリング上のパラダイムといえる,大きなスタンスです。
本書を企画した者たちは,そのスタンスが,「教育相談」の方法として,実に有効なものであることを1986年以来,我が国で検証してきました。今日,教育相談が対象とする諸問題は,心理的問題を超えた複雑なもののように見えるものもあります。それらに,どう向かうのか? その向かい方如何で,解決は近くもなるし,遠いものにもなってしまう。解決志向は,「メソドロジー/方法論」と呼んでもよいものです。
どの学問にも特有の問題と方法があります。本書では,私たちは「教育相談」という分野に「解決志向」という「方法」が有効なものの大きな一つであることを,これまでの実践の積み重ねから,主張します。教育相談の教科書であろうとする本書は,その分野の基礎知識に加えて,できるだけ実践的な知識も提供したいと思っています。その一つが「解決志向」という方法です。
その詳細と具体事例は全章に挙げて検討を加えていますが,それは,問題の原因を,事細かに摘出して取り除く──という直線的な発想を大いに補うものであります。
対人関係の問題で,その原因を「過去の,より小さな,より単純なもの」に,求めようとすること自体が困難であることが,よく体験されます。教育相談が対象とする問題の多くが同様であります。例えば保健室に,「常連」と呼ばれる子どもがよく来る場合があります。授業に出ないわけです。それで保健室の先生もクラス担任も困っています。先生が親身に世話をすること自体が問題を支えているようにも感じます。
「いじめ」という問題や体罰問題,依然多い不登校。これらの相談に,受容的な方法のみでは不十分な場合が少なくありません。「常連」さんの話を聴く,いじめられっこの話を聴く。これらは,まずは有効です。しかしいずれゆきづまり解決に至らないことをよく経験します。どの技法も無効ではありません。それらを「解決志向」という枠組みで使う方法が有効なんです。
私たちは,つい「直線的」に考えてしまう。例えば「いじめ」という問題があって,その原因をいじめっこ側かいじめられっこ側か? と考えて,次に,いじめっこ側の「性格」のせいに帰して,さらにその性格の生みだされたと推測される生育歴へと,一見,「理解」は進む。が,仮に,いじめっこの生育歴が分かったところで,いじめが停止するまでの予想される経緯は,とても実際からは遠くなってしまいます。
ところが,「解決志向」という大きな枠組みの下に「受容的に話を聴く」というアプローチをして成功した事例で,教頭がいじめっこと目された子どもを1日,授業を休ませて,話をしたことがあります。彼の興味,進路,家庭のことなど話せることは,全て話したのです。子どもの良いこと,良いところは大いに評価しました。いじめの話は一切しない。これでいじめが止まりました。何が効いたのか? それは,いじめの原因を特定する方向では全くありませんでした。
また同様に,いじめられたと,担任に訴えて来た女子がいました。「クラスのみんなに無視される」というのです。ある担任は,まず受容したうえで,クラス名簿を渡し,無視されていない子どもに赤鉛筆で印をつけさせました。それだけで子どもはクラスに戻った。どうして改善したのでしょうか?
本書では,そうした事例を検討しつつ,深く広く学べるようになっています。
生徒指導・進路指導・教育相談においては,教育学や心理学,社会学などの幅広い学際的な知識が必要になっています。また子どもたちや親たち,大人たちの置かれている状況も多様になっており,さまざまな知恵が必要になります。本書にも出来うる限り,生きた知恵を詰めたつもりです。

改訂にあたって
今回の改訂にあたって,昨今の教育事情に鑑み,「“いじめ”と“いじり”」,「(いじめの)第三者委員会」,「親との死別を経験した子どものサポート」等,新たに5つのコラムを追加した。
この他,種々の統計データの一部を最新のものにアップデートするとともに,適宜内容の加筆,修正を行った。

編者を代表して
東北大学名誉教授 長谷川 啓三


著者一覧(50音順) *は編者

赤木麻衣((独)国立病院機構仙台医療センター)
浅井継悟(北海道教育大学釧路校)
生田倫子(神奈川県立保健福祉大学)
石井佳世(熊本県立大学文学部)
石井宏祐(佐賀大学教育学部附属教育実践総合センター)
板倉憲政(岐阜大学教育学部学校教育講座)
上西 創(仙台城南高等学校)
奥野誠一(立正大学心理学部)
奥野雅子(岩手大学人文社会科学部)
加藤高弘(米沢市立病院)
久保順也(宮城教育大学教職大学院)
小林 智(新潟青陵大学福祉心理学部)
坂本一真(東北大学大学院教育学研究科)
佐藤宏平(山形大学地域教育文化学部)*
三道なぎさ(東北女子大学家政学部)
高木 源(東北大学大学院教育学研究科)
高綱睦美(愛知教育大学)
高橋恵子(みやぎ県南中核病院がん診療相談支援室/尚絅学院大学非常勤講師)
田上恭子(愛知県立大学看護学部)
竹田里佳(旧姓三好 元福井県こども療育センター)
千葉柊作(東北大学大学院教育学研究科)
ニコラ・タジャン(訳・立木康介)(ともに京都大学)
張 新荷([中国]西南大学心理学部講師)
中村 修(東北福祉大学総合福祉学部)
長谷川啓三(東北大学名誉教授)*
長谷川素子(東北大学大学院教育学研究科)
花田里欧子(東京女子大学現代教養学部)*
藤岡久美子(山形大学地域教育文化学部)
古澤あや(公立学校共済組合東北中央病院)
古澤雄太(山形県福祉相談センター)
松田喜弘(山形県南陽市立宮内小学校)
松本宏明(志學館大学人間関係学部)
三上貴宏(山形県立こころの医療センター)
三澤文紀(福島県立医科大学総合科学教育研究センター)
三谷聖也(東北福祉大学総合福祉学部)
宮﨑 昭(立正大学心理学部)
森川夏乃(愛知教育大学)
山中 亮(名古屋市立大学大学院人間文化研究科)
兪 幜蘭(作新学院大学人間文化学部)
横谷謙次(徳島大学大学院社会産業理工学研究部)
吉中 淳(弘前大学教育学部)
若島孔文(東北大学大学院教育学研究科)