公認心理師の基礎と実践⑩――神経・生理心理学

公認心理師の基礎と実践⑩――神経・生理心理学

野島一彦・繁桝算男監修
(慶應義塾大学)梅田 聡 編

2,800円(+税) A5判 並製 272頁 C3011 ISBN978-4-86616-060-3



神経心理学と生理心理学の融合

公認心理師カリキュラムにおける「神経・生理心理学」に対応した内容を網羅。
統合的な観点から神経心理学と生理心理学の基礎知識が身につき,学問そのもの
への興味も喚起する最良のテキスト。


目次

第1章 中枢神経系の構造
小嶋祥三
第2章 神経システムの基礎
一谷幸男
第3章 神経心理学の方法論
緑川 晶
第4章 生理心理学の方法論
坂田省吾
第5章 視覚・聴覚の障害と評価方法
鈴木匡子・軍司敦子
第6章 体性感覚と運動の障害の評価方法
河村 満・赤池 瞬・菊池雷太
第7章 言語の障害と評価方法
大槻美佳
第8章 情動の障害と評価方法
寺澤悠理・梅田 聡
第9章 記憶の障害と評価方法
朴 白順・月浦 崇
第10章 注意の障害と評価方法
前島伸一郎・大沢愛子
第11章 遂行機能の障害と評価方法
田渕 肇
第12章 神経疾患のタイプと障害
武田克彦
第13章 認知リハビリテーション
坂爪一幸
第13章 脳波研究
片山順一
第15章 画像研究
小野田慶一・皆川泰代・尾上浩隆・田中慶太
第16章 自律神経のメカニズムと測定法
朝比奈正人
第17章 睡眠の生理
北村真吾


編者略歴
梅田 聡(うめだ・さとし)
慶應義塾大学文学部教授。
1998年慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。2002年博士(心
理学)。
主な著書:『感情―ジェームズ/キャノン/ダマシオ(名著精選 心の謎から心の
科学へ)』(共監修,岩波書店,2020),『共感(岩波講座 コミュニケーショ
ンの認知科学 第2巻)』(共編,岩波書店,2014),『「あっ,忘れてた」はな
ぜ起こる―心理学と脳科学からせまる』(岩波書店,2007)ほか

 

執筆者一覧
梅田聡(うめださとし:慶應義塾大学文学部)=編者

小嶋祥三(こじましょうぞう:京都大学名誉教授)
一谷幸男(いちたにゆきお:東京成徳大学応用心理学部)
緑川晶(みどりかわあきら:中央大学文学部)
坂田省吾(さかたしょうご:広島大学総合科学部)
鈴木匡子(すずききょうこ:東北大学大学院医学系研究科)
軍司敦子(ぐんじあつこ:横浜国立大学教育学部)
河村満(かわむらみつる:奥沢病院名誉院長,昭和大学医学部名誉教授)
赤池瞬(あかいけしゅん:国立精神・神経医療研究センター病院脳神経内科)
菊池雷太(きくちらいた:汐田総合病院神経内科)
大槻美佳(おおつきみか:北海道大学大学院保健科学研究院)
寺澤悠理(てらさわゆうり:慶應義塾大学文学部)
朴白順(ぱくぺくすん:京都大学大学院人間・環境学研究科)
月浦崇(つきうらたかし:京都大学大学院人間・環境学研究科)
前島伸一郎(まえしましんいちろう:金城大学)
大沢愛子(おおさわあいこ:国立長寿医療研究センターリハビリテーション科)
田渕肇(たぶちはじめ:慶應義塾大学医学部,医療法人康生会)
武田克彦(たけだかつひこ:文京認知神経科学研究所)
坂爪一幸(さかつめかずゆき:早稲田大学教育・総合科学学術院)
片山順一(かたやまじゅんいち:関西学院大学文学部)
小野田慶一(おのだけいいち:追手門学院大学心理学部)
皆川泰代(みながわやすよ:慶應義塾大学文学部)
尾上浩隆(おのえひろたか:京都大学大学院医学研究科附属脳機能総合研究センター)
田中慶太(たなかけいた:東京電機大学理工学部)
朝比奈正人(あさひなまさと:脳神経内科津田沼)
北村真吾(きたむらしんご:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部)


はじめに
本書は,公認心理師カリキュラムにおける「神経・生理心理学」に対応させた内容を網羅している。この領域は,心理学の下位分野の中でも,学問としての発展が著しい領域であり,網羅すべき内容も幅広く,ボリューム感のあるテキストになっている。
神経心理学と生理心理学は,歴史的にも異なった背景で発展を遂げてきた学問である。神経心理学は,脳損傷による心理・行動的な影響に焦点を当てる学問領域であり,必然的に患者を対象とした研究が多く,おもに医学分野で発展を遂げてきた。一方,生理心理学は,健常者や動物を対象として,中枢神経や自律神経の機能が心理や行動にどのような影響を及ぼすかに焦点を当てる学問領域である。そのため,さまざまな生理学的測定法を用いる点が特徴であり,おもに心理学・生理学・神経科学の分野で発展してきた。このような背景の違いがあるため,この2つの学問は比較的独立しており,対象とする「心の現象」が類似しているにもかかわらず,融合的な観点から議論されることは限定的であった。しかし,近年になり,この2つの学問は急速に距離感が狭まり,非常に有意義な議論が展開されつつある。その一方で明らかになってきたのは,それぞれの領域の基礎知識を十分に身につけておく必要があるということである。そうはいっても,両学問領域はそれぞれ習得すべき基礎知識の幅も広いため,初学者向けのテキストが出版されたとしても,単独の書籍になる場合がほとんどである。この度,公認心理師のカリキュラムの制約もあり,「神経・生理心理学」という枠組みで,その集大成を融合的,かつコンパクトにまとめられたのは,統合的な視点から基礎知識を身につけるという意味では,非常によい機会であったと考えている。
本書は,それぞれの専門分野において高名な先生方に執筆を依頼し,非常にレベルの高い内容となっている。いずれの章も俯瞰的な観点から慎重に吟味されたうえで重要なトピックが選択されており,簡潔にまとめられていると同時に,豊かな内容を含んでいる。全体を見通すと,公認心理師養成のためのテキストとしての位置づけにとどまらず,当該領域の専門書の内容をも兼ね備えた書籍に仕上がっている。まず,本書の第1章から第4章では,脳や神経システムの基礎的な知識をカバーし,2つの学問の方法論についてまとめられている。それに続く,第5章から第11章までは,各論として,各心理的側面の障害と評価方法についてわかりやすく述べられている。取り上げた側面は,視覚・聴覚,体性感覚と運動,言語,情動,記憶,注意,遂行機能である。続く第12章では,これらの領域にまたがる神経疾患のタイプと障害について,第13章では,上記の障害を対象とした認知リハビリテーションの方法論について触れられている。第14章と第15章では,脳波および脳機能画像法(MRI,NIRS,PET,MEG)の方法論と当該領域における活用方法などについて,コンパクトにまとめられている。最後に,第16章では,自律神経のメカニズムと測定法,および第17章では,睡眠の生理学的機構について,その基礎的な知識が網羅されている。
公認心理師の試験対策としては,関連情報を正確に覚えることが必要であり,その意味では,本書は範囲も広く内容も多いために,学習に時間を要する可能性は高い。しかしながら,本書の編集においてこだわった点は,試験対策としての勉学にとどまらず,それをきっかけとして,学問そのものに興味をもっていただきたかった点にある。公認心理師が活躍する臨床の現場では,臨床的なアセスメントや心理療法の技法に加え,精神疾患や神経疾患に関する基礎知識や,その背景にある神経科学的な理解が必要とされ,それに基づく対処方法の考案が求められる。そのような実践的かつ柔軟な対応には,臨床的な演習のみならず,十分な基礎知識を身につけておくことが必要不可欠である。本書がその手段として,少しでも役立てられるならば,編集者冥利に尽きる。最後に,ご多忙ななか,本書の執筆をお引き受けいただいた著者の先生方に深く感謝申し上げたい。
2020年12月
梅田聡


 

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