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158-0学習・言語心理学

公認心理師の基礎と実践⑧
――学習・言語心理学

野島一彦・繁桝算男監修
(京都大学)楠見 孝 編

2,600円(+税) A5判 並製 208頁 C3011 ISBN978-4-86616-058-0

学習と言語に関する知識と考え方を身につける

「学習・言語心理学」は,「学習心理学」と「言語心理学」の2つを併せた科目である。本書では,学習と言語に関する認知心理学の重要な事項を幅広く取り上げ,専門家養成のための専門科目としての内容と水準をもつようにし,最新の研究成果も含めた。「学習心理学」と「言語心理学」を統合的に捉えた最良のテキスト。


目 次

第1章 学習・言語心理学とは
楠見 孝
第2章 学習の基礎
嶋崎恒雄
第3章 技能学習と熟達化
楠見 孝
第4章 社会的学習
渡辺弥生
第5章 問題解決と学習の転移
鈴木宏昭
第6章 動機づけ
後藤崇志
第7章 言語の習得
小林春美
第8章 非言語的・前言語的コミュニケーション
西尾 新
第9章 言語使用と知識
久野雅樹
第10章 言語理解と産出
猪原敬介
第11章 言語と推論
服部雅史
第12章 言語,思考,文化
今井むつみ


はじめに

本書は,将来,心理学の専門知識を活かして社会で活躍することや,公認心理師を目指す人が,学習と言語に関する心理学の知識と考え方を身につけるためのテキストである。また,学習と言語に関する心理学理論と方法について,学びや研究を深めたい読者にも応える内容を目指している。
「学習・言語心理学」は,公認心理師の国家試験を受験するための学部で修得する25科目のうち,心理学の基本的理論に関する科目として,2018年度から設定された新科目である。それ以前は,「学習心理学」「言語心理学」あるいは「認知心理学」という科目の中で教えられてきた内容である。「学習心理学」と「言語心理学」が合わさって「学習・言語心理学」となった理由は,公認心理師となるために必要な科目数を多くしすぎないようにしたためである。
こうした科目の成り立ちを踏まえて,本書は次の3つの特徴をもたせた。
第1は,公認心理師のカリキュラムにおける「学習・言語心理学」の以下の2つの到達目標を達成できるようにした。
・経験を通して人の行動が変化する過程を説明できる。
・言語の習得における機序について概説できる。
さらに,公認心理師試験設計表(ブループリント)の項目を網羅するとともに,教育,保健医療,福祉,産業などの実社会における実践に役立てることができる内容にしている。
第2は,「学習心理学」と「言語心理学」の2つを併せた科目であるため,心理学の専門家育成のための専門科目としての内容と水準をもつようにし,さらに,最新の研究成果を取り入れている点である。したがって,本書は,これまでの「学習心理学」「言語心理学」「認知心理学」のテキストとしても使うことができるように,学習と言語に関わる認知心理学の重要な事項を幅広く取り上げ,その考え方と方法論を理解できるようにしている。
第3に,従来は異なる科目であった「学習心理学」と「言語心理学」を,言語は,学習の対象であるとともに,学習を支える心的機能であるという視点から,統合的に捉えた点である。この点については,第1章において述べている。
具体的な内容は以下の通りである。
冒頭の「学習・言語心理学とは」(第1章)では,19世紀末の実験心理学のスタートから,学習と言語の研究がいかに展開し,認知心理学,認知科学,学習科学として展開してきたかを,国内外の研究の展開を踏まえて解説している。また,第1章は,イントロダクションとして,各章との関連づけについても述べている。ただし,はじめて心理学を学ぶ人には,全体のまとめとして,最後に読むことや,授業においてはまとめの回で取り上げることも考えられる。
本書の前半(第2章から第6章)では,学習分野を取り上げる。「学習の基礎」(第2章)では,生得的行動から,条件づけ,さらに,これらの教育や臨床などにおける応用について解説する。続く,「技能学習と熟達化」(第3章)では,技能の学習やそのための練習,仕事場などの状況における学習や熟達者になる過程について述べる。「社会的学習」(第4章)では,直接の刺激を受けた学習とは異なる,他者の行動の観察による学習(モデリング)を取り上げ,自分の行動をコントロールする自己調整機能について述べる。さらに,より高次な学習として,「問題解決と学習の転移」(第5章)を取り上げ,前半の最後には,学習された行動の目標達成や新たな学習のための「動機づけ」(第6章)について解説する。
本書の後半(第7章から第12章)では,言語分野を取り上げる。まず,「言語の習得」(第7章)とそれに続く「非言語的・前言語的コミュニケーション」(第8章)では,子どもの言語およびコミュニケーション能力の獲得と,言語獲得に困難を抱える子どもについて解説する。さらに,「言語使用と知識」(第9章)では,言語使用を支える単語などの知識や神経基盤,その障害について述べる。続く,「言語理解と産出」(第10章)では,文章の理解や発話や作文などの認知プロセス,「言語と推論」(第11章)では,推論における言語の問題,「言語,思考,文化」(第12章)では,言語と思考の文化的相対性と普遍性について述べる。
読者のみなさんは,本書とともに,本シリーズの『知覚・認知心理学』を併せて読むことで,認知心理学の全体像を学ぶことができる。また,『発達心理学』を読むことで,学習や言語の発達と他の発達の関連を学び,さらに,学習や言語を支える脳の神経基盤について『神経・生理心理学』を通して学んでほしい。
最後になりますが,本書の執筆を,学習や言語の心理学において,すぐれた研究活動をしている先生方に担当いただいたことを感謝申し上げます。また,編集を担当した,ちとせプレス櫻井堂雄氏にお礼申し上げます。
2019年6月
楠見孝


編者略歴
見 孝(くすみたかし)
1959年生まれ。
京都大学大学院教育学研究科教授。
1987年,学習院大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(心理学)。
主な著書:『現代の認知心理学3 思考と言語 』(編著,北大路書房,2010),『ワードマップ 批判的思考―21世紀を生きぬくリテラシーの基盤』(共編著,新曜社,2015),『教職教養講座第8巻 教育心理学』(編著, 協同出版,2018)ほか