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心理臨床における遊び──その意味と活用

(山王教育研究所所長/前 明治大学教授)弘中正美 編著

定価2,800円(+税)、220頁、A5判、並製 C3011 ISBN978-4-86616-004-7

遊びとは何だろうか? それが臨床に顕在する意味は?

遊びは,児童心理学のみならず,さまざまな領域からアプローチされている,人間にとってきわめて身近な活動,現象であり,日本語においては,遊びの意味は単なる「子どもの遊戯」を超え,さまざまな意味を持つ言葉である。また心理臨床の実践においても,遊戯療法のみならず,成人や高齢者にいたるまで,遊びのもつ意義は大きい。
本書は,遊戯療法のみならず心理臨床全般においてクライエントが媒体となる遊び,あるいはセラピストが活用する遊び,グループのなかで行われる遊びの意味や機能を,多くの治療現場での事例を通して論じたものである。
遊びをセラピーの現場に活かすことは,多くのクライエントにとって福音となるかもしれない。遊戯療法やプレイセラピー,児童臨床にかかわるセラピストだけでなく,多くの臨床家に読んでいただきたい1冊である。

本書の詳しい内容


おもな目次

序章 遊びについて ◆ 弘中正美

第Ⅰ部 理論編
第1章 子どもの発達と遊び ◆ 中澤 潤
第2章 心理療法と遊び
第1節 遊戯療法における「遊び」の意味 ◆ 太田智佐子
第2節 子どもの行動療法と遊び ◆ 岡安孝弘
第3節 子どもが描くこと・描画法と遊び ◆ 佐藤至子
第4節 子どもの集団精神療法における遊び ◆ 清水真理
第5節 集団精神療法と遊び:グループセラピストの遊ぶ機能を考える ◆ 高良 聖
第6節 プロセス指向心理学と遊び ◆ 諸富祥彦
第7節 箱庭療法と遊び──「砂遊び」を伴う心理療法の観点から ◆ 竹松志乃
第8節 心理テストにみる遊び──テスト体験における治療的な意味 ◆ 高瀬由嗣
第3章 発達障害の問題と遊びの治療的意味 ◆ 齊藤万比古

第Ⅱ部 現場編
第4章 教育相談の現場における遊び ◆ 竹村周子
第5章 大学付属心理相談室の現場における遊びの意味──初心者が遊戯療法を担当することを巡って ◆ 濱田祥子
第6章 スクールカウンセリングの現場における遊び ◆ 橋本元子
第7章 不登校・ひきこもり支援の現場における遊び ◆ 笠井孝久
第8章 非行臨床の現場における遊び──対人援助職に求められるもの ◆ 鉄島清毅
第9章 成人の病院臨床の現場における「遊び」 ◆ 中里容子
第10章 子どもの病院臨床の現場における「遊び」 ◆ 高橋未央
第11章 地域支援臨床の現場における遊び ◆ 加藤尚子
第12章 情緒障害児短期治療施設における遊び ◆ 竹下洋子
第13章 虐待を受けた子どもと遊び──遊べない子ども達 ◆ 増沢 高
第14章 総括:心理臨床における遊びの普遍的機能 ◆ 弘中正美


はじめに

遊びは,私たちにとってきわめて身近な活動,現象である。イメージしやすいのは,子どもの遊びであろう。子どもの仕事は遊ぶことであると言われるほど,子どもと遊びは日常の現象として深く結びついている。また,子どもの自我成長にとって遊びが大きな役割を果たすことは,心理学の知識を借りるまでもなく,よく知られたことである。
ところで本書では,遊びに関する厳密な定義を行うことを避けることにしたい。それは,遊びはあまりにも広範な視点から捉えることのできる現象であり,臨床心理学は無論のこと,発達心理学,社会心理学などの心理学の観点からだけではなく,医学なかんずく児童・思春期精神医学,文化人類学や民俗学,あるいは,社会学,哲学の観点からもアプローチできるからである。また,遊びは子どもだけでなく,大人にとっても意味のある活動である。さらに言えば,動物にも遊びの活動があり,動物生態学などの領域も無関係とは言えない。このような膨大な知の領域にわたる知見を包括しながら遊びについて論じることは,本書が目標とするところではもとよりないのである。それぞれの章において,そこでのテーマに応じて「遊び」を定義することはあっても,遊びをどのように捉えるべきかを本書全体を通じて統一することは,あえて行っていない。むしろ,もともと多面的な性質のものであることを前提としたほうが,「遊び」の本質を捉えるために有効に働くと思われる。一つひとつのテーマを丁寧に扱っていきさえすれば,遊びの多様な現象に通底して流れているものは,おのずと明らかになるはずである。
本書では,主として,心理臨床において遊びがさまざまな意味や機能を持っていることを論じたい。すなわちクライエントは,遊びを媒体として心理的な治癒や自我成長,あるいは生きやすさをもたらされる。またセラピストは,遊びを活用してクライエントとの間に有効な治療的関係――クライエントを理解し,クライエントに働きかけ,クライエントにとって意味のある影響を与える関係――を成立させることができる。もっとも典型的には子どもを対象とした遊戯療法において,遊びが大きな役割を果たすのであるが,実際にはそれに止まらず,心理臨床およびそれに隣接するさまざまな活動において,遊びがそうとうに有効な機能を発揮することを指摘できるのである。

弘中正美


編著者略歴・執筆者一覧

編者略歴
弘中正美(ひろなか・まさよし)
一般社団法人山王教育研究所代表,臨床心理士
1948年山口県生まれ。1976年東京大学大学院人文科学研究科心理学専攻博士課程中退。1995年千葉大学教育学部教授。2001年明治大学文学部教授。2007年より一般社団法人山王教育研究所代表。

執筆者一覧(50音順)
太田智佐子    (おおた・ちさこ)    明治大学心理臨床センター
岡安 孝弘    (おかやす・たかひろ)    明治大学文学部心理社会学科
笠井 孝久    (かさい・たかひさ)    千葉大学教育学部
加藤 尚子    (かとう・しょうこ)    明治大学文学部心理社会学科
齊藤万比古    (さいとう・かずひこ)    恩賜財団母子愛育会愛育研究所愛育相談所
佐藤 至子    (さとう・よしこ)    仁愛大学大学院人間学研究科
清水 真理    (しみず・まり)    国立国際医療研究センター国府台病院
高瀬 由嗣    (たかせ・ゆうじ)    明治大学文学部心理社会学科
高橋 未央    (たかはし・みお)    地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター
高良  聖    (たから・きよし)    明治大学文学部心理社会学科
竹下 洋子    (たけした・ようこ)    横浜いずみ学園
竹松 志乃    (たけまつ・しの)    明治大学文学部心理社会学科
竹村 周子    (たけむら・ちかこ)    明治大学心理臨床センター
鉄島 清毅    (てつしま・きよたけ)    横浜少年鑑別所
中里 容子    (なかさと・ようこ)    神奈川県立精神医療センター
中澤  潤    (なかざわ・じゅん)    千葉大学教育学部
橋本 元子    (はしもと・もとこ)    埼玉スクールカウンセラーほか
濱田 祥子    (はまだ・しょうこ)    明治大学文学部心理社会学科
弘中 正美    (ひろなか・まさよし)    一般社団法人山王教育研究所
増沢  高    (ますざわ・たかし)    子どもの虹情報研修センター
諸富 祥彦    (もろとみ・よしひこ)    明治大学文学部