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性加害少年への対応と支援──児童福祉施設と性問題行動防止プログラム

(臨床心理士・元 児童福祉施設職員)埜崎健治著

定価2,200円(+税)、160頁、四六判、並製 C3011 ISBN978-4-86616-000-9

葛藤・不安・希望……
加害少年の犯した行為は許せない
でも,少年を支えなくてはならない

性問題行動防止プログラムに沿って展開した事例を中心に,児童福祉施設の心理職,加害少年,家族らの不安や葛藤,希望を描く。重い現実のなかで交錯する人間の生き様と臨床模様。

事件がマスコミで流れることも多い性加害少年は,警察で補導された後,家裁に送られ,その後,処遇が決まります。メディアに流れるような事件の場合,少年院に入るケースも少なくありませんが,児童福祉施設で生活をしながら性問題行動防止プログラムを施行されるケースもあります。こうした処遇には心理士や保護司などさまざまな大人が関わり,性問題行動を矯正されていきますが,家族や心理・福祉職,司法関係者との間で加害少年への対応やケアをめぐってさまざまな軋轢も生じ,大人側の心理的負担も大きいことが多くあります。こうした実態を赤裸々に描き,あるべき対応を考えたのが,この1冊です。決して派手な本ではありませんが,じんわりと読み応えのある1冊になりました。

本書の詳しい内容


おもな目次

序章 性問題行動防止プログラムとは
性問題行動防止プログラムとは/プログラムの流れについて/通所型支援と入所型支援について/集団療法と個別療法について

第1章 出会いからプログラム開始の合同ミーティングまで
合同ミーティングについて

第2章 「自分のことを知ろう」について
「自分のことを知ろう」について/感情に気がつくワーク/怒りのコントロールについて

第3章 外出,そして性教育について
地域との交流(外出・外泊)について/マスターベーションのやり方について/少年事件の流れについて

第4章 自分のやったことの振り返り
自分のやったことの振り返り/拒否,否認,反抗がある場合の対応について/面接の終了時の配慮/これまでの振り返り

第5章 問題行動のパターンの理解と再犯防止策を考える
性問題行動のパターン/健康な状態/危険な気持ち/危険な前兆/危険な考え方/危険な場所/ほめるワークについて

第6章 家族支援プログラムについて
家族支援の基本的なポイント

第7章 被害者およびその家族の気持ちを考える
被害者および家族の気持ちに気づく/性被害者に与える影響と特徴について/被害者およびその家族の立場に立って考えることについて

第8章 地域生活にむけての準備と今後について
中学校卒業後の進路について/元いた地域以外から就学・就労する方法/自宅からの就学する方法/地域生活に向けてのサポート体制作り(主に家族)について/「終わり」について

第9章 性問題行動のケース
性問題行動防止プログラムで過剰適応をしてしまったケース/兄弟間での性問題行動が疑われたケース/プログラム中に再犯をしてしまったケース/被害者の気持ちを考えることが難しかったケース/きょうだい間での性問題行動のあり分離をしたケース


はじめに

この本は性問題行動を抱える児童を担当することになり戸惑っていたり,怒り,恐怖などの感情に振り回されている支援者,そして,これから性問題行動防止プログラムを行うけど,どのように行うのか,どんなふうに展開するのかイメージができなくて困っている人の気持ちが少しでも楽になればと思い書きました。
性問題行動の防止にこれまで多くの経験を積み慣れている方,性問題への対応に自信があるという方はこのまま本を閉じてください。
また,取り上げている内容は性問題行動以外の問題行動(窃盗,暴力行為等)が顕著ではなく,比較的問題行動が習癖化していないケースが中心です。具体的には少年院や刑務所などで行われる矯正教育ではなく,医療・相談機関等にて通所でプログラムや児童自立支援施設等の児童福祉施設で行うプログラムが中心です。
私が性問題行動を抱える児童の支援に初めて関わるとき,とても気持ちがかき乱され,不安,怒り,恐怖という感情に振り回されました。他の支援者に聞いても同じような意見がよく聞かれます。
ではなぜ,性問題行動防止プログラムを担当するときに,ある種の抵抗感を感じるのでしょうか。通常の支援と比較して性問題行動防止プログラムは異なる点が多いからではないでしょうか。
主な異なる点としては次のようなことを考えられます。

1)性問題という日常では取り扱うことが少ない特有な問題について話し合わなければならないということ(自殺未遂者支援に似ている)。
2)加害者に対する敵意,恐怖,不安などが湧き出してきて,支援者の基本的な姿勢と言われる共感的,受容的な態度を保ちにくいこと。
3)支援プログラムや教育システムが確立していないため,初めて担当するときに戸惑うことが多いこと。

そのためか,性問題行動児は異質な存在であり,とても危険な存在だと考えられ,長く隔離する厳罰化の傾向が見られます。
しかし,通常の支援とは異なる点はあるものの,児童はプログラムを通じて苦しみ,悩みながら大きく成長をしていくし,支援者も児童と共に大きく成長していける可能性を秘めているということに関しては他の支援となんら変わらないことを知っていただければ幸いです。
本書ではストーリー仕立ての事例を併せて載せてあります。その理由の1つ目としてはケース展開の背景にあるもの(チームアプローチの難しさ,支援者の葛藤等)を伝えたかったからです。
2つ目としては児童福祉施設(児童自立支援施設)の文化,生活を伝えたかったからです。スクールカウンセラー(SC)が学校文化を理解できていないとよい支援ができないのと同じで,今回のプログラムは児童自立支援施設の文化,ルール等をわかっていないと臨床の場面に活用できないと考えたからです。
3つ目としては,性加害児童はプログラムに対して消極的なことが多く,プログラムをどのように導入し,深めていくのかの様子をストーリーの通じて伝えられればと思っています。

性問題行動防止プログラムは試行錯誤の状態にあり,司法モデル(性問題行動再犯防止が目的)が中心です。児童相談所や児童自立支援施設では性問題行動再犯防止だけでなく,児童の人間的成長を意図したプログラムがあっていいのではないかと考えます。
最後に,本書を通じて性問題行動防止に携わる支援者が明日からまた頑張っていこうと思ってもらえるようになればうれしいです。


著者略歴
埜崎健治(のざき・けんじ)
神奈川県出身。臨床心理士,社会福祉士,精神保健福祉士,介護支援専門員(ケアマネージャー),介護福祉士ほか
最終学歴:目白大学大学院臨床心理学研究科臨床心理学専攻修士課程修業
19991年に国立武蔵野学院教護事業職員養成所修業後,県立教護院(現:児童自立支援施設),小児総合専門病院,児童相談所等,児童・青年期の支援を中心に行っている。専門性や理論に囚われることなく,できることは何でもやるが信念。
主な著書:『「職場うつ」からの再生』(春日武彦との共編,金剛出版)など