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『ケース概念化による 認知行動療法・技法別ガイド』
── 問題解決療法から認知療法まで

中野敬子著

定価2,600円(+税)、210頁、A5判、ソフトカバー
C3011 ISBN978-4-904536-00-1

認知行動療法の技法・理論を網羅する実用的な1冊

本書は,問題解決療法,認知療法,リラクセーション,不安管理訓練,行動修正,自己主張トレーニング,ケース概念化アプ ローチといった認知行動療法(CBT)のほとんどすべてを網羅する技法書で、その多彩なテクニックとその理論背景について詳細に書かれた実用的な一冊で す。ノウハウだけではなく,うつ,不安障害,境界性パーソナリティ障害の事例検討も所収し,実際の臨床現場で役に立つものとなっています。
著者は,米国の『Journal of Clinical Psychology』誌の編集委員の経験もあるベテラン認知行動療法家。臨床と教育,研究活動にかかわってきた経験と,200を超える文献をもとに書かれたもので,いま一番読まれるべき本となっています。
本書には,血の通った本物のCBTが息づいており,クライエントのニーズに力強く応えることができるでしょう。臨床実践をするすべての方に読んでいただきたい一冊です。

本書は、遠見書房のISBN 00番です。

本書の詳しい内容


おもな目次

第1部 認知行動療法の技法

第1章 認知行動療法
認知行動療法の理論的基盤
ケース概念化アプローチ
治療関係の重要性とさまざまな問題への対応

第2章 問題解決療法
理論的根拠
適   用
実施方法
導入面接
ステップ1 問題の明確化および見通し
ステップ2 問題の解決への目標の設定
ステップ3 複数の解決方法についての検討
ステップ4 結果の予測および解決方法の実行プラン
ステップ5 選択した解決方法の実行
終了面接

第3章 認知の再構成・認知療法
理論的根拠
適   用
実施方法──ケース概念化アプローチの導入面接
認知の再構成セッション
実施における注意点

第4章 リラクセーションと不安管理訓練
リラクセーション(弛緩訓練)
不安管理訓練

第5章 行動の修正
理論的根拠
適   用
実施方法
行動スケジュール法
強化随伴性と刺激統制
モデリング,行動リハーサル,ロールプレイング
実施における注意点

第6章 自己主張トレーニング(アサーティヴネス・トレーニング)
理論的根拠
適   用
実施方法──自己主張行動の診断
自己主張トレーニングの手続き
実施における注意点

第2部 問題別認知行動療法の実践

第7章 抑うつを主訴とするケース
Eさんのケース
Eさんの治療セッションの手順
結   論

第8章 不安を主訴とするケース
Gさんのケース
Gさんの治療セッションの手順
結   論

第9章 境界性パーソナリティ障害が疑われるケース
Hさんのケース
Hさんの治療セッションの手順
結   論

引用文献


はじめに

認 知行動療法は,今でこそ話題に上る心理療法となっているが,日本では長年,少数の専門家の間でのみ関心がもたれていた分野である。私は慶應義塾大学学部 および大学院において行動理論と認知心理学を学び,カリフォルニア州立大学大学院臨床心理コースでは認知行動的カウンセリングおよび行動療法を習得した。 『Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry』,『Behaviour Research and Therapy』,『Psychological Reports』,『The Psychological Record』,『Journal of Clinical Psychology』,『The Journal of Nervous and Mental Disease』などの米国心理学専門雑誌に掲載された私の論文もほとんどが認知行動理論に関連したものであった。認知行動理論・療法を学んできたことで 『Journal of Clinical Psychology』のconsulting editorに選ばれたりしたこともあるが,よくも30年以上もかなりマイナーな専門分野にとどまって勉学,研究,教育指導を行ってきたと自分でも感心し ている。
好ましいことではあるが,ここ数年の認知行動療法への関心の高まりには少々困惑している。関心が高まってはいるが,まだまだ専門性の高い学術書が多いばか りで,認知行動療法に関する誤解も少なくはない。初心者でも容易に理解できて,ケースに用いることに役立つ実用的な認知行動療法のガイドブックはまだまだ 少ない。さらに,認知行動療法の専門書の多くはBeckの認知療法を解説しているものが多く,その中で引用されているケースには,「認知の再構成」以外の 認知行動療法の技法が用いられているにもかかわらず,それらの技法の詳しい説明はなされていないことが多い。アメリカにおいて心理臨床家の間では,認知行 動療法がよく用いられ,カウンセリングも認知行動理論に基づくものが多く用いられており,さまざまな認知行動療法の技法は教育機関で教えられている。認知 療法だけでなく,カリフォルニア州立大学大学院臨床心理コースやAmerican Psychological Association(APA:米国心理学会),Association for Behavioral and Cognitive Therapies (ABCT:米国行動認知療法学会)で学んできた他の技法についてもぜひその実行方法を詳しく紹介し,若い心理臨床家に習得していた だきたいと考え,本書を執筆した。
この本の第1の特徴は,うつ,不安,境界性パーソナリティ障害などの認知行動療法で用いられているほとんどの技法を初心者でもケースに用いることができる ように詳しく解説していることである。それぞれの技法については理論的説明だけでなく,治療者とクライエントとのやり取りを通して技法の実際的使用方法を 紹介してある。第2の特徴は,認知行動療法のそれぞれのケースにあった技法の導入方法についても述べていることである。本書では,精神医学的診断に代わ る,心の問題を心理学的に系統立てて理解する方法である「ケース概念化アプローチ」を用いて,それぞれのケースの理解を深め,治療計画を立て,ケースに あった認知行動療法の技法を選択する方法についても学んでいただく。ケース概念化,治療計画,ケースにあった技法の選択については,症例を用いて紹介して いる。第3には,認知行動療法の導入面接,面接技法,セッションの構成についても述べていることである。認知行動療法は形式的,機械的に技法をクライエン トに対して用いている教育的治療技法であると勘違いしている人もいる。認知行動療法においても治療関係における信頼関係の形成は重要であり,治療への導入 方法,認知行動療法で一般的に用いられる面接方法についても具体的に紹介している。さらに,各セッションの構造およびセッションの進め方についても具体例 を用いて解説している。
本書は2部構成になっていて,第1部「認知行動療法の技法」においては,認知行動療法の代表的な技法である問題解決療法,認知療法,リラクセーション(弛 緩訓練)と不安管理訓練,行動修正と行動スケジュール,自己主張トレーニング(assertiveness training)についてその技法およびケースへの応用を治療者とクライエントのやり取りを通して学べるように説明してある。第2部「問題別認知行動療 法の実践」では,抑うつを主訴とするケース,不安を主訴とするケース,境界性パーソナリティ障害が疑われるケースを紹介し,それぞれのケースへの第1部で 紹介した各技法の導入方法について,実際の症例についてケースの概念化を行い,セッションの構成および各セッションの進行状況についてケースを通して説明 してある。
第1部の1章においては,認知行動療法の基盤となる理論についてまとめてある。認知行動療法において最も多く用いられているケース概念化アプローチの実行 方法も具体的に解説する。認知行動療法は,古くは行動療法の技法として確立された方法と認知心理学を背景に発展してきた認知の再構成法とからなり,さまざ まな治療技法がある。各技法については,2章から6章で,「理論的根拠」,「適用」,「実施方法」,「実施における注意点」を詳細に説明してある。2章で は問題に対する有効な解決法を見出し,段階的に身につける問題解決療法,3章ではゆがんだ非現実的な思考が,あらゆる心の問題に見出すことができるとする 認知モデルに基づき,そのゆがんだ思考を修正する認知療法を取り上げている。4章では行動療法の鎮静剤ともいわれるリラクセーション,およびリラクセー ションとイメージを用いて不安や怒りのセルフコントロール力を段階的に身につける不安管理訓練,5章では自己強化,刺激統制,行動スケジュール法,モデリ ング,行動リハーサル,ロールプレイングを用いての行動修正,6章では社会的スキルトレーニングの一環として広く用いられて,有効なコミュニケーションス キルを身につけ,不安を抱かずに適応的生活を送るために行う自己主張トレーニングを紹介している。
第2部の7章では,抑うつ症状を主訴とするケースへの認知行動療法の各技法の応用について症例に基づいて説明している。症例を紹介し,1章と3章で解説し たケースの概念化を症例について実際に行い,治療計画まで立て,セッションの進め方を記述してある。まとめて説明せずに初心者でも,解説に従って一回一回 のセッションを治療終結にいたるまで,進めて行くことができるガイドとなるように記述することを心掛けた。8章では不安症状を主訴とするケースを紹介し, ケース概念化を行い,治療計画を立て,セッションを導入から終結まで段階を追って説明してある。9章では境界性パーソナリティ障害が疑われるケースについ て7章,8章と同様に,ケース紹介,ケース概念化,治療計画,セッションの進め方を記述した。なお,第2部の3つの症例は,実際のケースを基に守秘義務の 観点から,個人が特定できないように修正してあることを書き添えておく。
1章から順番に読んで行くことが,この本を最大に活用していただく方法であるが,特に関心があるテーマや自分にとって必要だと感じる技法があれば,第1部 ではその章から読んでも理解できるような構成になっている。抑うつ症状,不安症状,境界性パーソナリティ障害が疑われるケースのいずれかのケースでどのよ うに認知行動療法を用いたらよいか知りたい読者は,第2部のケースから読み始め,技法についての部分を第1部に戻って確認しながら,読み進めていただくこ とも可能である。
心理臨床家の育成に長年携わり,多くのことが早いペースで進み,心理療法やカウンセリングも短期に結果を求められる時代になってきていることを感じてい る。認知行動療法は他の療法に比較して特に優れた療法であると主張するわけではないが,治療技法が段階的に示されていることから,どのような治療が行われ ていて,どれくらいの期間が治療に要するかをクライエントが知ることができる。さらに,治療技法の手続きが明確に示されていることから,若い心理臨床家に とって習得しやすい治療法であると考える。それにもかかわらず,多くの認知行動療法に関する著書は中級者から上級者向けのものであり,多くの情報が書かれ ていて,認知行動療法そのものが難解な方法であるという印象を初心者に抱かせてしまう場合も少なくはない。いろいろな方法で初心者に認知行動療法の臨床的 訓練を行ってきたが,認知行動療法技法の多くがセルフマネジメント法であることから,治療者を目指す人自身が自分でセルフマネジメント法として体験するこ とが効果的であると考えるようになり,認知行動療法のいろいろな技法をセルフマネジメントとして使う方法を記載した『ストレス・マネジメント入門―自己診 断と対処法を学ぶ』(金剛出版)を出版した。『ストレス・マネジメント入門』により,認知行動療法技法のセルフマネジメント法としての習得は可能である が,これらの技法を治療者として,クライエントの治療に導入することまで発展させて行くことは難しく,治療技法としての認知行動療法について説明するガイ ドブックの必要性を痛感し,本書を執筆した。本書は,『ストレス・マネジメント入門』を治療者自身の認知行動療法習得のためやクライエントのワークブック として用い,認知行動療法を治療技法として用いていただくように構成してある。
本書を書き上げて,金剛出版で『ストレス・マネジメント入門』の編集を担当してくださった山内さんに連絡したところ,独立し遠見書房を設立するにあたって ISBN第1号にしたいとのお話で,人生には思いもかけないことが起こるものだと実感した。本書を読み進まれた方は,同じ出版社でワークブックやクライエ ントの心理教育に用いることができる本が出版されていないことに戸惑いや不便を感じるかもしれないと思い,経緯を書かせていただいた。新しい出版社の門出 の「きっかけ」となった本書が,多くの心に悩みを抱く人々の立ち直る「きっかけ」になり,その人々を援助する心理療法家に役立つことを願っている。最後 に,本書の出版に際してご協力いただいた皆様に対し,謝辞を表明させていただきたい。

中野敬子


著者略歴

中野敬子(なかの・けいこ)
慶應義塾大学文学部心理学科卒業,サンディエゴ州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程修了,慶応義塾大学大学院心理学専攻博士課程修了。Journal of Clinical Psychology Consulting Editor (編集委員),Psychological Reports Reviewerなど歴任。
慈恵会医科大学精神神経科および日本航空乗員健康管理室の心理職,北海道医療大学大学院臨床福祉・心理学専攻教授を経て,現在,跡見学園女子大学文学部臨床心理学科教授。心理学博士,臨床心理士。
主著
『ストレス・マネジメント入門─自己診断と対処法を学ぶ』金剛出版
『精神医学における臨床心理学』金剛出版(共著)
『絵画空想法入門――PRT図版による新しいTAT』金子書房(共著)
『不安管理訓練(AMT)――不安をのりこなす法』岩崎学術出版社(共著)


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