専門家のための「本を書こう!」入門

『専門家のための「本を書こう!」入門』(書籍版)

遠見書房代表 山内俊介 著

1,200円(+税)、152頁、四六版、並製
C0000 ISBN978-4-904536-66-7

本を書きたい、本を書いてみたい、本を書くようにまわりからよく言われるという専門家の方は多いかと思います。
でも、何からはじめればいいのかわからない、自信がない、という方がほとんどでしょう。

この本は、そんな専門家のために、本を書くノウハウをまとめたものです。
何から手をつければいいのか、今まで書いてきた論文や雑文などはどう使うのか、どう書き出せばいいのか、タイトルのコツは……など、具体的なことばかりを述べました。
医学書や心理学の本など、百数十冊の専門書や専門雑誌を作り、1000人を超える専門家・研究者と仕事をしてきた編集者が教えるハウツーです。
編集者としての知見をここにぎゅっと詰めました。

(*本書は、「電子書籍」として刊行した同書の書籍版(紙媒体)です。内容はほぼ一緒です。電子版については,こちらをご覧ください。)

本書の詳しい内容


おもな目次

第1部 本をまとめる!─発想から企画化まで

第1章 書き溜めたものがある(例えば、論文など)ので、それをまとめたい。書き溜めたものは、十分一冊になる分量がある方の場合
第2章 書き溜めたものがあり、それをまとめたいと思うものの、一冊になる分量には心もとない方の場合
第3章 書いたものはないが、レジュメや講演や授業などをしてテープなどに音源がある場合
第4章 ほとんど原稿がない。ゼロからのスタートであるひとの場合
第5章 教科書(的なもの)を作りたい
第6章 何人かで書きたい。いわゆる「編集もの」である

第2部 文章のテクニック

第7章 文章が下手とは何か
第8章 本を書き終えるために


はじめに

十冊の本が出る裏には、五十点の埋もれた企画があります。さまざまな理由で企画は頓挫し、日の目を見ずに、ほとんどの場合、その書き手のパソコンの ハードディスクのなかで眠っています。わかったのは、書きあげられる人は少ないということです。内容云々もありますが、本になる分量が書けないということ でもあります。どうして書いてくれないのだろうと思っていたのですが、書いてくれないわけじゃなく、書けなかったのでしょう。
長年編集者をしていますと、さまざまな方から「今度、こんな本を出したいと思っている」といったお話を頂戴します。そんなとき、面白そうでしたら「本にし ますよ」とお答えします。しかし、これも原稿がこないで終わることがとても多く、やはり、パソコンのハードディスクに眠ってしまったのでしょう。これも、 本にする分量が書けなかった、ということかもしれません。
確かに、書くということは大変な作業です。プロの書き手でしたら、書く時間は十分に取れますし、一日で原稿用紙で五十枚も、多い人ですと、百枚以上書く力 を持っています。でも、それは百メートルを九秒台で走る選手のようなもので、トップアスリートの世界です。専門家は、たとえ文才があっても、そこまでの能 力はないですし、時間もありません。しかも、ふつうのトップアスリートでもない人にとって書くことは、とてもしんどく、つらい作業です。そのうえ孤独で す。一日五枚書ければ十分というところで、本にするべき分量である四百枚(四百字詰めの原稿用紙換算にして。以降、「枚」とあるときは原稿用紙の換算枚数 です)を書きあげるのは八〇日後。一週間に休日の一日を書くことあてるとしたら、出来上がるのは二年後です。
そんな書き手と伴走をしていて、なんとなくわかってきたものがあります。この本は、そんな私の経験から、その道の専門家が、何かを本としてまとめるときの ノウハウをいろいろと考えてみたものです。大きく二部に分かれています。第一部は、本をまとめるときの企画法について。もう一つの第二部は、書き方そのも のについてです。第二部は各種「文章読本」など類書はたくさんあるので、基本的な部分はそちらを参考にしていただいて、あまり描かれないことを書きまし た。
本書でいう「本」とは、専門家──その道のプロ──の人たちが書く「本」の意味です。小説や人生録などではありません。何か一つのことに打ち込み、生活の 多くをそれに費やしていると、人はたいていそれについてまとめてみたくなるものです。脳波に詳しい脳神経科医は、その脳波測定の技術と思想を同僚や後進に 伝えたいと思うでしょう。ある料理人は自分の味をだれもが家庭で再現できるようレシピ集を出したいと願うでしょう。人生録ではないと書きましたが、その人 が人生を賭してきた「道」について語るわけですから、人生録そのものかもしれません。
私は日刊の建設業界の専門紙の記者を三年ほど勤めた後、心理学・精神医学の専門出版社で編集者として十数年をすごし、現在は同じ分野の学術書・専門書を出す出版社を興し、コツコツと本や雑誌を作っています。
記者から編集者への転職は書く側から書いたものを読む側への転進でした。他人のネクタイを締めてあげているみたいなもので、ちぐはぐというか、隔靴掻痒と いうか、そういう気分にありました。記者時代の上司から「自分で書かないなんてつまらないじゃないか」と言われ、確かにそうかもなあ、と思ったものです。
しかし、編集者として生きていると、黒子に徹するのも楽しくなってきました。専門書づくりは、その道ではプロですが、「書く」という意味では専門家ではな い方々との共同作業です。初めて書いたものが活字になった、初めて本を出した、というような方たちと一緒に仕事をしていると、たとえそれが七〇歳をすぎた ご年配の方であろうと、こちらまでも初々しい気持ちになってきます。そしてその本が世間で評価を受けると、わがことのように嬉しいものです。編集者は、そ ういう場面に立ち会える幸福な仕事だな、と思えるようになりました。書くと読む、両方の仕事に携わったのは偶然ですが、今の仕事に生きています。
私の編集者としての最大の夢は、たとえば河合隼雄先生のような人の最初の本に立ち会うことです。その野望のため、私はどんなに若い人でも、文章が今ひとつ でも、「最初の単著」を作る機会にはなるべくタッチしようとしています。本を出したことのない隠れた才人の企画を作り、素晴らしい本を制作し、売れ、いつ しか名著と言われるようになる、それが最良の編集者の仕事だと私は思います。ぜひトライしてみてください。本を作るのは楽しい作業です。

なお、本書における「専門家」とは、基本的にその道のプロ(あらゆるプロ)ということになっていますが、自然、この本では私の日常の仕事から、研究 者や医療者、教育者などがイメージされるかもしれません。読み替えてもらえればいいように、なるべく書き進めていくつもりです。

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