こころを晴らす55のヒント──臨床心理学者が考える 悩みの解消・ストレス対処・気分転換

こころを晴らす55のヒント

―──臨床心理学者が考える 悩みの解消・ストレス対処・気分転換

(鳥取大学)竹田伸也・(島根大学)岩宮恵子・(九州大学)金子周平
(香川大学)竹森元彦・(やまき心理オフィス)久持 修・(川崎医療福祉大学)進藤貴子 著

1,700円(+税) 四六判 並製 240頁 C0011 ISBN978-4-86616-108-2

おだやかに,すこやかに,しなやかに生きていくために

私たちの日常は,社会の動きや経済状態だけではなく,からだの調子やこころの浮き沈みによっても左右されます。そうした中で,人は,元気になろうとしたり,ストレス解消しようとしたりして理的な危機脱しようとしますが,うまく行ったり行かなかったり……。
この本は,カウンセリングやセラピーなどの臨床理的支援によって多くのクライエントケアしてきた6人によってつづられた「こころ晴らす」方法や考え方まとめたものです。ストレスマネジメントに代表される理学的な技法の応用だけではなく,ものの見方の変更や内的世界への気づき,人生見据えることも,その方法の一つ。さまざまな視点からまとめられた55のヒントのなかに,読者の皆さんにもきっと合うヒントが見つかるかもしれません。

主な目次

二人の関係・家族の関係
1)よくある夫婦のすれ違い
2)言わなくてもわかるという幻想
3)愛されるということ
4)不機嫌のなかにある秘密

仕事のヒント
5)仕事とプライベートの切り替えを工夫する
6)四十代になったら、屋久島に一人旅に出てみませんか?
7)心の表と裏の気持ちを「語る」こと
8)「作業」を「仕事」に
9)苦しい上り坂

人生の彩り・趣味の輝き
10)温泉眼を持って温泉に入る
11)四国八十八カ所を巡る

自分の常識を変える
12)原因を突き止めなくても問題は解決する!?
13)「明日ブラジルに行こう!」
14)人生劇場で演じる、なりきる、やりきる
15)価値を測るものさしを増やす
16)普段のクセを変えて思考の柔軟さを育む
17)渾身のリフレイミング
18)「悩み」を「課題」に

子育てと親育て
19)子育て中のすべてのお母さんへ
20)「千と千尋の神隠し」を読み解く
21)自由の枠組み
22)こころの成長の節目
23)大人がモニターになる
24)犬と子どもと自然と

やばいとき
25)失敗とのつきあい方
26)「話す」ことはなぜ心によいのか?
27)リスクに備えるとは幅を広げること
28)孤独な人をみつける

からだの具合
29)身体の使い方を工夫して心を整える
30)働く身体をねぎらう
31)がんばりスイッチをOFFにするには
32)食べたいものを食べる

リラックスのために
33)怒りっぽい人のための5つのステップ
34)自分を外から眺める(幽体離脱の方法)
35)疲れた時間と同じだけ、あなたの心に栄養を
36)自分にかける言葉を変える

日々の生活のヒント
37)夢で遊ぶ
38)「ところもある、日もある」という言い回し
39)「もしも人生が……」で大切なことを見つける
40)言葉×遊び=最強
41)人生に魔法は起こらない
42)一生懸命、休むこと
43)自らに問いながら生きること──楽しく生きる秘訣って?
44)今を軸足にフットワークを軽くする
45)大切にしたい価値に沿って生きる
46)今日は何の日?
47)何でも、聞いてみる

人と人との関係
48)人は自分とは違う生き物
49)それって誰の持ち場?
50)人類みな兄弟
51)育てる側の苦労
52)もうひとりの「私」

老い・死・終
53)自分の「弱さ」を自覚する意味
54)「人生の後半」という豊かさ
55)日々の中で祈ること

 

著者紹介

竹田伸也(たけだしんや):鳥取大学大学院医学系研究科准教授
岩宮恵子(いわみやけいこ):島根大学人間科学部理学コース教
金子周平(かねこしゅうへい):九州大学教育学部准教授
竹森元彦(たけもりもとひこ):香川大学大学院医学系研究科臨床理学専攻教授
久持 修(ひさもちおさむ):やまき理臨床オフィス 代表
進藤貴子(しんどうたかこ):川崎医療福祉大学医療福祉学部臨床理学科教授


まえがき

最近、なんとなく生きづらい。そんな風に思うことはありませんか。失敗すると、これでもかというほど周りから叩かれる。自分の率直な意見を述べると、炎上する(もちろん、悪意をもって誰かを傷つける発言は論外ですが)。助けてと言いたいけれど、みんなも余裕がなさそうなので我慢する。これらに共通しているのは、人間本来の持つ「不完全さ」や「弱さ」を現すことへの徹底した不寛容です。誰もが当たり前に不完全なのに、その不完全さを差し引いて世間に向き合わなければならないとすれば、そりゃ生きづらいはずです。
そうした生きづらさを和らげて、少しでも心穏やかに暮らしていくにはどうすればよいのでしょう。僕もカウンセラーの端くれですので、それなりに考えてみたり実践してみたりします。でも、誰にでも効くヒントは、残念ながら見つかりません。
そこで、ふと思ったのです。「生きづらさを無くそうとするから、よりつらくなるのではないか」と。生きづらさを簡単に解消することができたとすれば、それは始めから大した問題ではないのかもしれません。生きづらさは、決して個人的な理由だけで生まれるものではありません。なのに、それを自分ひとりで無くそうとすること自体、自分に無理を強いることになって余計に苦しくなるんじゃないでしょうか。だとすれば、自分で生きづらさに対処するための一番のヒントは、生きづらさとなんとか折り合いをつけながら暮らすことだと言えそうです。
でも、あなたはこんな風に思いませんか。「生きづらさとなんとか折り合いをつけながら暮らすって、どうすりゃいいんだよ」と。そのために、「こんなことしてみたら、無理せず生きづらさと折り合いをつけられるかも」という話が詰まった本。それだけでなく、「心が晴れる」ことまで貪欲にねらっている本。それが、本書なのです。

改めまして、本書を手に取ってくださりありがとうございます。この本は、心理学を生業にする六人が紡いだエッセイ集です。どのエッセイも、「『心が晴れる』ために、こんなことしてもアリなんじゃないか」というテーマを扱っています。ですが、それぞれのエッセイはまったく違った内容であり、趣きも異なります。食べ物屋で注文する料理の種類によって、味は異なります。ましてや、調理する料理人によっても、同じ料理でも味はまったく違ってくる。この本は、六人の「心の料理人」が、いろいろな心の料理を独自の味付けでお届けするエッセイ集です。
この本は、長年親交を深めてくれている遠見書房の山内俊介さんからのお話が、出版の糸口となりました。彼の話の要旨は、次のような感じだったかと思います。

長年温めていた企画があります。心が晴れるために、何人かの書き手が自分の拠って立つ心理学を通してエッセイを紡ぐ。それが五〇を超えれば、どんなにつらい人でも、そのうち二つや三つは自分のものにしてくれるのではないでしょうか。そのうえ、ふつうの読者が思っているであろう常識が、多少でも変わると嬉しいと思います。「愚痴や人の悪口は言わない。そのほうが幸福になれる」という言説があります。それはその通り間違いないと思うのですが、常識が書いてある本ほど面白くないものはありません。実際、愚痴や悪口、言うとスッキリします。きっと心理学的な効果もあるでしょう。だからたぶん、悪口を言う言わないの問題ではなく、そのネガティブな行為を、どう別の何かに結びつけるのか、というのが問題なのではないかと思います。これは一例ですが、読者のモノの見方を広げられるようなアイデアがあると面白いかと思います。

山内さんの企画を形にするために、僕はいろんな立場の人に書いてもらおうと考えました。心理学の中でも、人の心の問題に対応する領域を「臨床心理学」といいます。臨床心理学と一口にいっても、いろいろな立場があります。これは、至極当然のことです。人の心は複雑で、とても一つの理論だけで説明することは不可能だからです。とはいえ、学界内では「こっちが一番や」「いや、こっちだ」という学問的対立もあります。これも、学問が建設的に発展するうえで必要なことです。
ですが、この本では学問的発展なんて関係ありません。読んでくださる人の心が少しでも晴れることが目的なのですから。だとしたら、さまざまな立場の書き手が、自分の拠って立つ心理学を足場にしていろんなエッセイを紡ぐと、きっとそれは山内さんの言うように、どれかが誰かの心のフックにひっかかるはず。そんな気持ちから、僕は五人の方々に声をかけました。いずれも、心理学の世界でとても大切な働きをされている方々ばかりです。
できあがったそれぞれの原稿を読んでみて、「この五人にお願いしてよかった」と、僕は心から思いました。どれも、「生きづらさと折り合いをつける」ヒントが詰まっているばかりではなく、とってもおもしろいのです。そのおもしろさを、あなたにも存分に味わっていただきたいと思います。「本は最初のページから読むもの」という常識にとらわれず、目次をみて気になったところから、目を閉じて適当に開いたページから、どんな読み方でも結構ですので、これまでと違った読み方を楽しんでください。それこそ、この本の楽しみ方としてピッタリな気がします。
僭越ながら執筆者を代表して  竹田伸也

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