事例で学ぶ生徒指導・進路指導・教育相談:中学校・高等学校編

事例で学ぶ
生徒指導・進路指導・教育相談:中学校・高等学校編

長谷川啓三・佐藤宏平花田里欧子編

定価2,800円(+税)、194頁、B5版、並製
C3011 ISBN978-4-904536-71-1

改訂版が出ています!

(以下情報は,旧版のものです。改訂版があります。こちらの商品は絶版となっております)

「解決志向」の考え方を学校現場で使うために

この本は,学校教員にとって授業や学級経営とともに重要な仕事である「生徒指導」「進路指導」「教育相談」の基本と実践をまとめた1冊です。
いじめ,発達障害,こころの問題,キャリア教育など,子どもたちの周りにある問題が多様になっている現在,生徒指導・進路指導・教育相談には,教育学だけ でなく,心理学的な知識が必要になっています。また子どもたちへの個別支援でもあることから,臨床心理の技法も有用です。
本書は,幅広い学際的な知識や現代社会における家庭の状況など幅広い視点をまとめた上で,解決にいたったさまざまな事例を検討し,生きた生徒指導・進路指導・教育相談を学べるようになっています。
出来うる限りの生きた知恵を詰めた必読の一冊です。(本書は,中学~高校向けになります。)

本書姉妹編「小学校編」も同時刊行!

大学教員の方で本書の採用を検討したいという方には,見本も発送しますので,小社まで電子メールでご連絡ください。お気軽にお申し付けのほどを。

本書の詳しい内容


おもな目次

第1章 生徒指導・進路指導・教育相談とは?──意義と役割 ■ 長谷川啓三・佐藤宏平・花田里欧子

第2章 生徒理解の基礎 ■ 奥野誠一

第3章 思春期・青年期の発達課題 ■ 神谷哲司・渡部敦子

第4章 不登校・ひきこもり ■ 佐藤宏平・花田里欧子・若島孔文・横谷謙次・上西 創

第5章 いじめ ■ 若島孔文・兪 幜蘭・狐塚貴博

第6章 思春期・青年期の非行の問題 ■ 久保順也・三澤文紀

第7章 思春期・青年期における発達障害の理解と対応 ■ 宮崎 昭

第8章 思春期・青年期における精神医学的問題 ■ 田上恭子・山中 亮

第9章 学校における緊急支援 ■ 若島孔文・森川夏乃

第10章 学校組織と関係機関・家庭との連携 ■ 三谷聖也・奥野雅子・生田倫子

第11章 カウンセリングの理論と技法 ■ 石井宏祐・石井佳世・松本宏明

第12章 進路指導の理論と方法──思春期,青年期における進路指導 ■ 中村 修・高綱睦美・吉中 淳

コラム
言葉のチカラ──言葉はもともと魔術だった!? ■ 佐藤宏平
中高生の自己形成プロセスと進路選択 ■ 高橋恵子・三道なぎさ
中学生・高校生の社会形成・社会参加支援 ■ 古澤あや
中学生の健康と安心の確保――性教育 ■ 宮崎 昭
若者の就労等支援のあり方 ■ 板倉憲政・浅井継悟
困難な状況ごとの取り組み──ニート,ひきこもり ■ 古澤雄太
外国人中学生・高校生への支援──日本語支援から心のケアまで ■ 兪 幜蘭・張 新荷
デスエデュケーション ■ 三上貴宏
中学生・高校生の被害防止,保護──「自分の身は自分で守る」意識を植えつけるには ■ 松田喜弘
支援を要する生徒とその家庭への支援がうまく進まない時に振り返るポイント──5つの支援阻害要因 ■ 河合陽子・花田里欧子
放課後の居場所づくり ■ 岩本脩平・花田里欧子
多様な主体による取り組みの推進──治療的家庭教師とMCR活動 ■ 小林 智・赤木麻衣
統合失調症の就学支援と薬物治療 ■ 伊東 優・花田里欧子
中高生の携帯電話とインターネットに関する問題と対応 ■ 加藤高弘
非行少年の家族支援と就労支援 ■ 板倉憲政・小林 智


はじめに

本書は大学で「教育相談」を学ぶ際に使用されることを念頭に置いて企画された。それはまず,晴れて「先生」と呼ばれる資格を得られた方々が,現場での,そ の実践に役立つものにしたいということである。今ひとつは,教科書として,生徒指導・進路指導・教育相談の基礎的な知識を獲得していただくのに役立つもの にしたいということである。
この2つは矛盾するものではないが,往々にして「乖離」した教科書も目にする。
そうはしたくないと決意した私たちは,いわば「実践に役立つ基礎知識」を目指して本書を執筆している。そのために読者への具体的な発問,問いかけと,実際 の実践事例を各章全体に配置した。各章の後半にそれを置いてあるので,何よりも,教育相談の実際から学びたいという読者は,この発問から入るのも近道だと 思う。
さらに本書の企画意図を満たすために執筆者を共通に貫くものがある。それは「解決志向」と呼ばれるスタンスである。それが「生徒指導・進路指導・教育相 談」の対象になる多くの問題にアプローチするのに有効であることを,私たちは1986年以来,我が国で検証してきた。生徒指導・進路指導・教育相談が対象 とする問題に「どう向かうのか」。その向かい方如何で,解決は近くもなるし,遠いものにもなってしまう。重要なのは,問題へどう向かうのかというスタンス の問題であり,方法論である。解決志向というあり方は,その「メソドロジー/方法論」の一つと言っていい。
どの学問にも特有の問題と方法がある。私たちは「生徒指導・進路指導・教育相談」という分野に「解決志向」という「方法」が有効なものの大きな一つであることを,これまでの実践の積み重ねから,主張したいのである。
その詳細と具体事例は全章を挙げて検討を加えているが,それは,問題の原因を,事細かに摘出して取り除く──という直線的な発想を大いに補うものである。
対人関係の問題で,その原因を「過去の,より小さな,より単純なもの」に求めようとし,そのこと自体が困難であることが体験される。生徒指導・進路指導・ 教育相談が対象とする問題の多くが同様である。例えば「いじめ」という問題があって,その原因をいじめっこ側かいじめられっこ側か? と考えて,例えば今度は,いじめっこ側の「性格」のせいに帰して,さらにその性格の生みだされたと推測される生育歴へと,一見,「理解」は進む。が,仮 に,いじめっこの生育歴が「正しく」わかったところで,いじめが停止するまでの予想される経緯は,とても実際からは遠くなってしまう。
反対に「解決志向」でアプローチして成功した事例で,教頭がいじめっこと目された子どもを1日,授業を休ませて,話をした。彼の興味,進路,家庭のことな ど話せることは,すべてである。子どもの良いこと,良いところは大いに評価した。いじめの話は一切しない。これでいじめが止まった。何が効いたのか? そ れは,いじめの原因を特定する方向では全くない。
また同様に,いじめられたと,担任に訴えて来た女子がいる。「クラスのみんなに無視される」という。ある担任は,先ず受容した上で,クラス名簿を渡し,無視されていない子どもに赤鉛筆で印をつけさせた。それだけで子どもはクラスに戻った。いったい何がよかったのか?
本書は,教育相談における,基礎的な知識に加えて,このような事例の問題因ではなく,成功を促進した,いわば「成功因」の側を,今日的な問題をできるかぎりとりあげて検討している。
生徒指導・進路指導・教育相談においては,教育学や心理学,社会学などの幅広い学際的な知識が必要になる。子どもたちや親たち,大人たちの置かれている状 況も多様になっており,さまざまな知恵が必要になる。本書にも出来うる限り,生きた知恵を詰めたつもりである。ぜひとも,我々の成果を読み進めていただきたい。

編者を代表して
東北大学大学院教育学研究科教授 長谷川 啓三


執筆者一覧・編者略歴(50音順)*は編者

赤木麻衣(東北大学大学院教育学研究科)
浅井継悟(福島大学うつくしまふくしま未来支援センター)
生田倫子(神奈川県立保健福祉大学)
石井佳世(志學館大学)
石井宏祐(鹿児島純心女子大学)
板倉憲政(岐阜大学教育学部学校教育講座)
伊東 優(栄仁会宇治おうばく病院/栄仁会カウンセリングセンター)
岩本脩平(京都市スクールカウンセラー)
上西 創(東北工業大学ウェルネスセンター)
奥野誠一(山形大学地域教育文化学部)
奥野雅子(岩手大学人文社会科学部)
加藤高弘(米沢市立病院診療技術部精神科リハビリテーション室)
神谷哲司(東北大学大学院教育学研究科)
河合陽子(滋賀県彦根市立東中学校)
久保順也(宮城教育大学)
古澤あや(山形県スクールカウンセラー)
古澤雄太(山形県福祉相談センター)
狐塚貴博(作新学院大学人間文化学部)
小林 智(東北大学大学院教育学研究科)
佐藤宏平(山形大学地域教育文化学部)*
三道なぎさ(東北大学大学院教育学研究科)
高綱睦美(愛知教育大学)
高橋恵子(東北大学大学院教育学研究科)
田上恭子(愛知県立大学看護学部)
張 新荷(東北大学大学院教育学研究科)
中村 修(東北福祉大学総合福祉学部)
長谷川啓三(東北大学大学院教育学研究科)*
花田里欧子(京都教育大学)*
松田喜弘(山形県東置賜郡川西町立犬川小学校)
松本宏明(志學館大学人間関係学部)
三上貴宏(山形県立鶴岡病院)
三澤文紀(茨城キリスト教大学)
三谷聖也(愛知教育大学教育臨床学講座)
宮崎 昭(山形大学地域教育文化学部)
森川夏乃(東北大学大学院教育学研究科)
山中 亮(北海学園大学経営学部)
兪 幜蘭(東北大学大学院教育学研究科)
横谷謙次(新潟青陵大学大学院)
吉中 淳(弘前大学教育学部学校教育講座)
若島孔文(東北大学大学院教育学研究科)
渡部敦子(関西福祉科学大学社会福祉学部臨床心理学科)

編者略歴
長谷川啓三(はせがわ・けいぞう)
東北大学大学院教育学研究科教授,大学院附属臨床心理相談室室長,東日本大震災PTG支援機構理事長,日本心理臨床学会理事,ITC家族心理研究センター代表,日本家族カウンセリング協会副理事長,日本ブリーフセラピー協会代表。教育学博士,臨床心理士,家族心理士。
主な著訳書:「ソリューション・バンク」(金子書房,単著),「震災心理社会支援ガイドブック」(金子書房,共編),「解決志向介護コミュニケーション」(誠信書房,編著),ド・シェイザー著「解決志向の言語学」(法政大学出版会,監訳)など多数。

佐藤宏平(さとう・こうへい)
山形大学地域教育文化学部准教授,日本家族心理学会常任理事,日本カウンセリング学会編集委員。教育学博士,臨床心理士。
主な著訳書:「事例で学ぶ家族療法・短期療法・物語療法」(金子書房,共著),「学校臨床ヒント集」(金剛出版,共著),「社会構成主義のプラグマティズム」(金子書房・共著),・フランクリンら編「解決志向ブリーフセラピーハンドブック」(金剛出版,共訳)ほか多数。

花田里欧子(はなだ・りょうこ)
京都教育大学教育臨床心理実践センター准教授,京都教育大学心理教育相談室長,日本心理臨床学会広報委員(広報誌編集委員),日本ブリーフセラピー協会理事ならびに京都支部長。教育学博士,臨床心理士,家族心理士。
主な著訳書:「パターンの臨床心理学:G.ベイトソンによるコミユニケーション理論の実証的研究」(風間書房,単著),「ナラティヴからコミュニケーショ ンへ」(弘文堂,共著),「学校臨床:子ども・学校をめぐる教育課題への理解と対応」(金子書房,共著),「心理療法の交差点」(新曜社,共著)など多数。

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