公認心理師の基礎と実践⑱――教育・学校心理学 第3版

公認心理師の基礎と実践⑱
――教育・学校心理学 第3版

野島一彦・繁桝算男監修
(東京成徳大学)石隈利紀 編

2,800円(+税) A5判 並製 232頁 C3011 ISBN978-4-86616-203-4

 

 

 

 教育分野における公認心理師の活動のために
基礎から臨床まで心理学を基盤とした支援を学ぶ
教育・学校心理学の入門書

公認心理師は「チーム学校」の担い手として,子ども,教師,保護者と支え合いながら,スクールカウンセリング業務や学校・家庭・地域連携のキーパーソンとしての活動を通して,子どもの心の健康や学校生活の質を維持向上させることが期待される。教育分野で公認心理師として活動するための必須の知識を学ぶ1冊。
2022年に改訂された『生徒指導提要』の内容を反映した第3版です。


目 次
第1部 基礎編:教育・学校心理学の理論を学ぶ
第1章 教育・学校心理学の意義 (東京成徳大学)石隈利紀
第2章 子どもの発達課題への取り組みの理解と援助 (名古屋大学名誉教授)松本真理子
第3章 子どもの教育課題への取り組みの援助 (九州大学名誉教授)増田健太郎
第4章 スクールカウンセリングの枠組み――何を援助するか (東京学芸大学名誉教授/大河原美以心理療法研究室)大河原美以
第5章 子どもの多様な援助者によるチーム援助 (一般社団法人スクールセーフティネット・リサーチセンター)田村節子
第6章 3段階の心理教育的援助サービス――すべての子ども,苦戦している子ども,特別な援助ニーズを要する子ども (大阪教育大学)水野治久

第2部 実践編:子どもと学校を援助する
第7章 発達障害の理解と援助 (法政大学)小野純平
第8章 不登校の理解と援助 (京都教育大学名誉教授)本間友巳
第9章 いじめの理解と援助 (筑波大学)濱口佳和
第10章 非行の理解と非行をする子どもの援助 (法務省保護局)押切久遠
第11章 学校における危機対応 (九州産業大学)窪田由紀
第12章 学級づくりの援助――スクールカウンセラーの役割を中心に (学習院大学)伊藤亜矢子
第13章 学校づくりの援助 (東京福祉大学)家近早苗
第14章 地域ネットワークづくりの援助 (こども教育宝仙大学)石川悦子
第15章 教育・学校心理学と公認心理師の実践 石隈利紀

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はじめに
子どもや若者が発達する課程で,心や人間関係の問題,健康の問題,そして学習・進路の問題で苦戦する時,友だちや家族や教師に援助を求める。そして公認心理師もスクールカウンセラーなどとして子どもたちの援助の重要な担い手になる。子どもが苦戦する状態としては,不登校,いじめ,非行,学力低下などがあり,それらの苦戦に発達障害(個人要因),学校の荒れや児童虐待(環境要因)などが関係する。文部科学省が示した「チーム学校」では,スクールカウンセラーらを専門スタッフとして位置付け,教職員のチーム強化をめざすとともに,学校・家庭・地域の連携の強化をめざしている。したがって子どもや若者の援助にあたっては,教育分野の公認心理師に加えて,保健医療分野,福祉分野,司法・犯罪分野,産業・労働分野の公認心理師も関わる。もちろん教育分野に強い公認心理師や教育分野と福祉分野に強い公認心理師,教育分野と保健医療分野に強い公認心理師などが,子どもたちの援助のキーパーソンとなるだろう。
さて公認心理師の養成課程では,学部カリキュラムを構成する実践科目として「教育・学校心理学」が誕生した。教育実践の理論や実践を支える「教育心理学」と心理教育的援助サービスの理論と実践を支える「学校心理学」は,互いに独立した学問体系をもつ。同時に教育心理学と学校心理学は多くの領域を共有する。公認心理師のカリキュラムがきっかけとなり,教育・学校心理学という新しいユニットが誕生したのである。日本では,「教育・学校心理学」と冠する書物がこれから刊行されていくと思われるが,本書はその先駆けの一冊となる。
第1部では基礎編として,教育・学校心理学の理論的枠組みを紹介している。ステップ1として教育・学校心理学の意義,ステップ2として子どもの発達課題,教育上の課題,そしてステップ3として,スクールカウンセリングの枠組み,4種類のヘルパー,3段階の心理教育的援助サービスを取り上げる。
第2部では実践編として,子どもと学校を援助する実践の最前線を紹介する。ステップ1として,学級づくり,学校づくり,コミュニティづくりが,子どもや学校の援助の基盤になる。子どもが発達する環境の整備であり,援助者のチーム・ネットワークづくりである。そしてステップ2として,発達障害,不登校,いじめ,非行,学校危機という具体的な問題の理解と対応を取り上げる。

本書「教育・学校心理学」科目の誕生に呼応した第1版(2019年),そしてコロナ禍への対応を盛り込んだ第2版(2022年)は大変好評で多くの方に読んでいただくとともに,全国の大学で教科書として使っていただいてきた。今回は2022年の『生徒指導提要』の刊行や公認心理師のさらなる実践を反映するとともに,不登校やいじめ等の最新の状況に応じて,第3版を刊行した。引き続き,本書が公認心理師の実践の基盤づくりにお役に立てることを祈っている。そしてみなさんが,誕生して一歩ずつ確実に成長している「教育・学校心理学」をともに育てながら,子どもと学校を支援する仲間になってくださることを願っている。

2024年7月

石隈利紀


編者略歴
石隈利紀(いしくま・としのり)

1950年生まれ。1990年,University of Alabama大学院修士課程・博士課程でスクールサイコロジスト養成のコースを修了。Alan S. Kaufman博士の下,学校心理学でPh. D. (博士号)を取得。カリフォルニア州で小学校のスクールサイコロジスト・インターン,San Diego State Universityで講師を経験し,多文化間アプローチを学ぶ。筑波大学で学生相談室カウンセラー,附属学校教育局指導教員(教育相談担当),副学長理事・附属学校教育局教育長を経て,現在,東京成徳大学大学院心理学研究科特任教授,筑波大学名誉教授,公認心理師,学校心理士スーパーバイザー,ガイダンスカウンセラー。日本学校心理学会理事長,日本公認心理師協会副会長,日本スクールカウンセリング推進協議会理事など。

主な著書:『学校心理学―教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助サービス』(誠信書房,1999年),『(新版)石隈・田村式援助チームシートによるチーム援助入門―学校心理学・実践編』(共著,図書文化社,2018年),『スクールカウンセリングのこれから』(共著,創元社,2021年),『やさしくわかる生徒指導提要ガイドブック』(共編,明治図書,2023年)ほか多数。また日本版WISC-VやKABC-Ⅱの刊行委員。


 

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