学校における自殺予防教育のすすめ方[改訂版]──だれにでもこころが苦しいときがあるから

学校における自殺予防教育のすすめ方[改訂版]──だれにでもこころが苦しいときがあるから

(九州産業大学産学共創・研究推進本部科研費特任研究員)窪田由紀・(北九州市スクールカウンセラー)シャルマ直美 編

定価2,600円(+税),160頁、A5判,並製 C3011 ISBN978-4-86616-194-5

2024年6月刊行

自殺予防──いま,一番大事な大人の仕事

ますます増加し,深刻化する若年層の自殺。友だちや知り合いに「死にたい気持ち」を仄めかされたらどうしたらいいのか? 自殺をとどめるには,この最初の表現に触れたものが「ゲートキーパー」となる必要があります。いのちの大切さを声高に叫ぶだけではなく,児童生徒ひとりひとりのピンチをしのぐ力(レジリエンス)を高め,聴く技術とつなぐ工夫を駆使して,人と人のきずなで自殺を予防しよう──北九州市の学校では,そんな授業が実践されています。この本は,その自殺予防教育を実践してきた心理臨床家らによる手引きで,初版が世に出てからの8年間の社会の変化も踏まえて大幅に改訂をしたものです。自殺予防の授業に取り組む際に活用できる資料集もさらに充実し,北九州市で使用されてきた「自殺予防教育リーフレット」も追加されました。

本書の特色!
1:重い雰囲気にならず,自殺予防教育ができる
2:わかりやすい手引きつき
3:授業で使える資料・授業案がたっぷり。そのうえ,ダウンロードも可能
4:教員も,心理職も,養護教諭も,だれでも使える


おもな目次

第1部 理論編
第1章 子どもを直接対象とした自殺予防教育の必要性
第2章 学校における自殺予防教育の位置づけ
コラム1 子どもから「死にたい」と打ち明けられたら
コラム2 「誰にも言わないで」と訴える子どもが恐れているのは
コラム3 下地づくりの教育として北九州市対人スキルアップ・プログラム
第3章 学校を拠点とする自殺予防教育の意義
第4章 児童生徒を対象とした自殺予防教育の展開
第2部 実践編
第5章 学校現場への自殺予防教育の導入・定着過程
コラム4 自殺対策としての自殺予防教育─行政機関の自殺対策担当者へのメッセージ
第6章 学校における合意形成
コラム5 管理職の立場から─教員にとっての「生涯にわたるメンタルヘルス研修」を考える
第7章 授業プログラムの実際
コラム6 身近な人の自殺を経験した子どもへの対応
コラム7 スクールカウンセラーと教職員が協働する自殺予防教育の授業実践を通して
コラム8 授業を実践した中学校教諭から
コラム9 授業を実践した小学校教諭から
コラム10 児童生徒の授業後の感想から

付   録
付録①-1 SCが行う教職員研修
付録①-2 SCが行う教職員研修
付録①-3 SCが行う教職員研修
付録②-1 SC研修資料
付録③-1 授業実施用指導案
付録③-2 事前アンケート
付録③-3 授業で提示する事前アンケートの集計パワーポイント
付録③-4 リーフレット学習プリント
付録③-5 リーフレット学習プリント
付録③-6 リーフレットを活用した授業全体のパワーポイント
付録④-1 リーフレットを部分的に活用するプログラム指導案
付録④-2 相談された後の言動について考える学習指導案
付録⑤-1 リーフレットを部分的に活用するプログラム指導案
付録⑤-2 「四本の木」学習プリント
付録⑥-1 相談された後の学習プリント
付録⑦-1 自殺予防教育リーフレット「だれにでも,こころが苦しいときがあるから…」


はじめに──改訂にあたって──

本書の初版が世に出た2016年2月から7年半以上の月日が流れました。
この間,子どもの自殺の深刻な実態を受けて,『改正自殺対策基本法』や見直された『自殺対策大綱』において,学校における心の健康に関する教育・啓発や子ども・若者の自殺対策のさらなる推進が謳われ,全国でさまざまな取り組みが展開されるようになりました。
しかしながら,コロナ禍を経て自ら命を絶つ子どもたちの数は増え続けているという痛ましい現実があります。国や地方での啓発が進んだことで,学校における自殺予防教育の必要性は広く認識されるようになったものの,まだまだすべての子どもたちにメッセージが届いているというにはほど遠い現実があります。
本書は,改訂版においても初版と同様,「生涯を通してのメンタルヘルスの基礎づくり」という視点から子どもの自殺予防を幅広くとらえ,日々の教育活動の延長線上に実践が広がることを目指し,そのための基本的な考え方や具体的な方法を示します。

改訂版も初版同様,理論編と実践編から構成されています。
理論編の第1章では,今日に至る自殺の実態や国の施策を踏まえて学校における自殺予防教育の必要性・必然性を再確認しました。第2章では,学校における自殺予防教育が既存の理論モデルや枠組みにどのように位置付けられているかを示しました。第3章(初版第2章)では,学校を拠点に自殺予防教育を行うことの必然性をいくつかの視点から述べています。第4章(初版第3章)の児童生徒を対象とした自殺予防教育の展開は,初版出版以後の国内外の実践・研究のレビューも加えて再構成しました。理論編の各章は,学校,地域で自殺予防教育実施に向けての合意形成や体制整備の根拠資料として活用いただければ幸いです。
実践編の第5章では,北九州市において,地域の合意形成・教材開発・人材育成を行い,自殺予防教育を導入してきた過程に加え,精神保健福祉センター,教育委員会,臨床心理士会(北九州市スクールカウンセラー)が連携・協働関係を深めながらその定着に向けて組織的に取り組んできた過程が示されています。一部の学校の熱心な教職員の実践を超えて地域全体での持続可能な取り組みとする上でのヒントが詰まっていると確信しています。第6章には,学校における合意形成の手立てとしての教職員研修,第7章には児童生徒対象の授業プログラムについて,実施に向けての具体的な内容と進め方を示しています。付録に掲載している研修資料や指導案,教材プリント等は,初版以降の7年間に発展してきたものですが,初版同様ダウンロード可能な形で提供しています。それぞれの現場に合わせてアレンジしてご活用ください。

本書が,多くの同じ志を持つ教職員やスクールカウンセラーの皆様,教育委員会や精神保健行政の担当者の方々,地域で子どもの支援に携わるさまざまな立場の皆様が,子どもたちが信頼できる大人として,子どもたちのSOSを受け止め,直接メッセージを届ける主体として,また,自殺予防対策教育の恒常的な実施に向けての体制作りの担い手として,それぞれの立場で関わっていかれるための一助となることを願っています。

令和6(2024)年6月
著者を代表して 窪田由紀


編著者略歴

窪田由紀(くぼた・ゆき):九州産業大学産学共創・研究推進本部科研費特任研究員,北九州市スクールカウンセラー。臨床心理士,[公認心理師,博士(学術)。1980年,九州大学大学院教育学研究科博士課程単位取得後退学。1982年より北九州市立デイケアセンター臨床心理士,九州国際大学助教授教授,九州産業大学教授,名古屋大学教授,九州産業大学教授(2022年3月まで)を経て現職。文部科学省「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」座長。主な著書に『学校コミュニティへの緊急支援の手引き』(共編著,金剛出版,2005,2017,2020),『臨床実践としてのコミュニティアプローチ』(単著,金剛出版,2009),『災害に備える心理教育』(共編著,ミネルヴァ書房,2016),『学校における自殺予防教育のすすめ方』(編著,遠見書房,2016),『危機への心理的支援』(編著,ナカニシヤ出版,2022)ほか。

シャルマ直美(しゃるま・なおみ):1960年,福岡県生まれ。北九州市(小学校,中学校,特別支援学校)スクールカウンセラー,福岡県立高校・私立高校スクールカウンセラー,臨床心理士,公認心理師。1982年,福岡教育大学養護学校教員養成課程卒業。1982年より北九州市立小学校教諭,ネパールの幼稚園教員,社会福祉法人北九州市手をつなぐ育成会職員(2000年3月まで)を経て現職。著書に『学校における自殺予防教育のすすめ方』(共著,遠見書房,2016)。

執筆者一覧

窪田由紀(くぼた・ゆき:九州産業大学)=編者
第1章,第2章,第3章,コラム1,2,3
シャルマ直美(しゃるま・なおみ:北九州市スクールカウンセラー)=編者
第6章,第7章,コラム10
秋田寛子(あきた・のりこ:九州栄養福祉大学カウンセラー)
第4章
長﨑明子(ながさき・あきこ:北九州市小倉南区役所)
第5章,コラム4,コラム6
鎌谷友子(かまたに・ともこ:北九州市市立精神保健福祉センター)
第5章
荒岡悠太(あらおか・ゆうた:北九州市小学校教諭)
コラム9
奥 いづみ(おく・いづみ:北九州市スクールカウンセラー)
コラム7
重藤宏彰(しげとう・ひろあき:北九州市中学校教諭)
コラム8
肘井千佳(ひじい・ちか:北九州市小学校校長)
コラム5
田中まり(たなか・まり:たいせつプロダクト)
イラスト

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