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ブックレット:子どもの心と学校臨床(2)
発達障害のある子どもの性・人間関係の成長と支援
──関係をつくる・きずく・つなぐ

川上ちひろ 著

1,600円(+税) A5判 並製 140頁 C3011 ISBN978-4-86616-102-0

この本は,発達障害の子どもの大きな課題となっている「性」と「人間関係」を多くの事例と当事者および周辺者のインタビューをもとにわかりやすく解き明かしたものです。友だちづくり,恋愛,性の問題,勉強,仕事,人間関係……これらにまつわる悩みや課題。発達障害をもつ子どもたちも,定型発達の子どもたち同様に,その時はやってきます。まわりの大人や支援者はどうしたらいいのでしょうか? この本はそんな問いにヒントをくれる1冊です。


主な目次

第1章 「発達障害のある子ども」と「関係」について──概論

第2章 発達障害のある子どもをもつ親が感じる子どもとの関係

第3章 発達障害のあるきょうだいとの関係:きょうだいの視点から「姉の巻」

第4章 発達障害のあるきょうだいとの関係:きょうだいの視点から「妹の巻」

第5章 発達障害のある子どもの友だち関係

第6章 発達障害のある子どもの恋愛事情と恋愛感情の表現方法

第7章 発達障害のある子どものトラブルを引き起こす性行動とその対応法

第8章 発達障害のあるおとなの人の恋愛はどうなっているのか?

第9章 自分自身をどう理解し受け入れ,つきあうか

第10章 大学生から就労の時期に経験するリアルな社会の人間関係

第11章 社会の中で家族や支援者とどう関係を作りながら生きていくのか


著者
川上ちひろ(かわかみ・ちひろ)

岐阜大学医学教育開発研究センター併任講師。
保健師,看護師,養護教諭,臨床発達心理士。
名古屋大学大学院医学系研究科博士課程修了,博士(医学)。
岐阜大学医学教育開発研究センター助教を経て,現職。
専門は,医療者教育(多職種連携医療教育,医療面接,学生支援など),特別支援教育における性教育など。

NPO法人アスペ・エルデの会のディレクターとして,長年発達障害の特性がある子や保護者に関わる。「性と関係性の教育」ということで,性に関する教育方法について広めている。

おもな著書に『自閉スペクトラム症のある子への性と関係性の教育―具体的なケースから考える思春期の支援』(金子書房,2015),『性の問題行動をもつ子どものためのワークブック―発達障害・知的障害のある児童・青年の理解と支援』(共著,明石書店,2015),『発達障害のある女の子・女性への支援「自分らしく生きる」ための「からだ・こころ・関係性」のサポート』(共編著,金子書房,2019)など。


まえがき
「発達障害のある子ども」と「関係」というテーマをいただき,連載という形式で徐々に書き溜めていったものを今回一冊の書籍としてまとめていただけることになりました。連載開始当初,このような大きなテーマにどれだけ迫れるか私自身のチャレンジでもありました。
私はこれまでNPO法人での活動を中心に,発達障害のある子どもたちやその保護者と関わっていました。このNPO法人はアスペ・エルデの会といい,幼児から大人までの発達障害のある皆さんやそのご家族の皆さんの自助団体であり,そこに専門家としてのスタッフや大学生ボランティアスタッフが関わっている団体です。私はここで主に,発達障害のある子どもへの性教育(性と関係性の教育)に取り組んできました。性教育と聞くと,月経・精通支援,性行為や避妊に関すること,妊娠・出産の話題などをイメージする方が多いと思います。当然「性」に関する内容ですので,そのような性の話題を扱うことは避けられません。しかし,性の知識を学ぶ前に,「関係」について学んでおいた方がいいでのはないかということに気がつきました。
発達障害・知的障害のある子どもへの性と関係性の教育に関わることで,彼らの性教育の課題の一つは“性の問題行動への対応”だということがわかってきました。そしてこの性の問題行動は「人間関係」がうまく構築できないことが根底にあるということも感じています。このことから支援者にとって,発達障害のある子どもたちへの目に見えない「関係」づくりの支援は重要な支援課題であると考えています。
この書籍では文献やインタビューなどをもとに,筆者である私(一応は発達障害がない定型発達のつもりですが,絶対にその傾向がないとも言い切れないと自己評価していますが……)からみた「発達障害のある子ども」と「関係」に関する記述をメインに構成しています。先にも書きましたが,「関係」は目に見えないものです,個々の受け取りようによってさまざまな解釈ができます。相手から直接話を伺って,それを文字にしないと,見えるようにはなりません。ですから今回何人かの方にインタビューをさせていただいたり,お話を伺ったりして「関係」を文字にしてみようと思いました。
この書籍では個人が特定されないようにインタビュー内容を修正してありますが,できる限りその方のナラティブ(物語)を書き留めました。そこからわかったことは,普段あっている方でもちゃんと聴かないとわからないことがたくさんあった,ということです。その人の背景,体験してきたこと,考えていることなどは千差万別で,ヒトの数だけドラマがある! と実感しました。
とはいえ,私が普段仕事や支援をしている狭い範囲のなかで,たまたま出会った方をメインにインタビューをさせていただいたものですから,すべてを網羅しているというわけではありません。この書籍を読んでいただく支援者の皆さんの体験されることや日ごろ関わっておられる方は異なりますから,賛成や反対などさまざまなご意見があるかもしれません(そのことは十分承知しているつもりです)。さらに解説でつけ加えている解釈なども,私の勝手な意見です。ご理解していただきたいのは,決して私の経験や解釈を一方的に皆さんに押しつけるつもりはなく,あくまでも一例としてとらえてほしいということです。事例や解釈が偏っているかもしれないことは,自分自身肝に銘じないといけないと思いますが,みなさんもそのつもりで読んでいただけるとうれしい限りです。
私が目指したいのは,社会で生活するうえで時に生きにくさとなりうる発達障害の特性や,性別や,年齢などさまざまな事柄などを,全く気にしなくても,誰もが自分らしく生きることができる社会になってほしいということです。私一人ができることは限られていますし,発達障害のある皆さんには大きなお世話だと言われるかもしれません。でも,生活しにくい物理的な構造,利用しにくい制度,大多数派対象の慣行,そして発達障害,性別,年齢などに対しての間違った観念などが,近い未来に取り払われることを期待しています。
この書籍を通じて,発達障害のある皆さん,そのご家族の皆さんへの理解の一助となると幸いです。そして理解が深まることで,支援者の皆さんが実際に発達障害のある皆さんやご家族を支援されるときの参考になればと思っています。そして,理解とか支援とかわざわざ言わなくてもいい世の中になることを願っています。

平成が終わり,新しい時代がやってきたころ
川上ちひろ

あとがき

最後までお読みいただき,ありがとうございました。
第10章,第11章は内容を追加して組み直してみましたが,お気づきいただけましたか?
5年間という長きにわたる連載をこの1冊の書籍にまとめましょう,というときに社長?の山内さんから,「連載にはなかったおまけの章があるといいですね,名古屋のモーニングみたいな」とコメントいただきました。岐阜人(モーニング文化は東海地方にあります)としては,「モーニングは生活の一部で,おまけじゃないんです。あたりまえにあるものなんですよー。モーニングがないお店には行きません」と,ひそかに心の中で思っていました。が……,“あたりまえ”だと思っていると有難みが感じられないし,“お店に行かない”なぁ。“おまけつき”とか“20%増量”ってわざわざ書いてあると,ついつい手が出てしまいますね。ということで,この書籍でもモーニング作戦を決行しました。
ただ連載期間が5年ありましたので,発達障害に関わる状況が大きく変わってきています。この書籍の内容が時代に合わなくなってきていることもあるかもしれません。でもそれはそれでよいことと捉えて,この書籍は単なる一つの通過点として発達障害支援に関して「あんな時代もあったね」といえる時期が来ることを楽しみにしています。

川上ちひろ