公認心理師の基礎と実践⑦――知覚・認知心理学

公認心理師の基礎と実践⑦
――知覚・認知心理学

野島一彦・繁桝算男監修
(京都女子大学)箱田裕司 編

2,600円(+税) A5判 並製 192頁 C3011 ISBN978-4-86616-057-3

世界を把握し,理解する
知覚と認知の仕組み

人間の知覚と認知の仕組みを深く理解することは,さまざまな臨床現場においても有用な知識である。私たちはどのように外の世界を把握し,理解しているのか,知覚心理学と認知心理学を基本からバランスよく学ぶことができるテキスト。


目 次
第1章 知覚・認知心理学とは
箱田裕司
第2章 感覚
光藤宏行
第3章 視知覚
光藤宏行
第4章 聴知覚
上田和夫
第5章 感性
河邉隆寛
第6章 注意
河原純一郎
第7章 記憶
広瀬雄彦
第8章 知識の表象と構造
改田明子
第9章 イメージの性質と機能
中村奈良江
第10章 問題解決・推論・意思決定
中村國則
第11章 認知の個人差
小松佐穂子
第12章 知覚・認知の障害
岩原昭彦


はじめに
「公認心理師法」が2015年9月に成立して以来,本年(2020年)でちょうど5年となり,全国の大学で公認心理師の学部および大学院カリキュラムが運用され,順調に滑り出していると思われるが,また一方ではさまざまな問題点も出てきている頃だと思う。
本書で取り上げる,「知覚・認知心理学」,とりわけ認知心理学は,他領域で認知という言葉が入った学問領域(たとえば対人認知,認知行動療法など)が多いように,じつに多くの領域で,認知的アプローチが採用されている。とりわけ,構成員に医者が多い,神経心理学では認知神経科学という領域が進展し,さらに多くの研究者を巻き込み,着々と成果を挙げている。心理臨床分野では従来の行動療法に認知的アプローチが融合することによって生まれた認知行動療法はエビデンスに基づく治療法の隆盛の中で,医療現場で精神疾患の有力な治療法として注目され,発展している。司法・犯罪現場では,目撃者や被害者の面接において,事件について想起を促す手法として,認知心理学に基づく面接法である認知面接法が考案され,広く使われるようになった。
これらの新たな展開の基礎にある認知心理学の基本的な考え方,研究方法,これまで蓄積されてきた認知心理学各領域の知見を理解することは,医療や司法・犯罪の現場だけでなく,広く社会で活躍するうえできわめて重要である。
今日,認知心理学,つまり認知的アプローチを用いて心理学を研究するのに言い訳を言ったり,その必要性を訴えたりする必要はない。おそらく誰が見ても至極,当然のアプローチである。しかし,認知心理学の草創期にはそれまでの主流であった,行動主義との戦いがあった。ナイサー(Neisser, 1967)はその著書,『認知心理学』の序論の中で次のように述べている。

「認知的観点,力動的観点(注:フロイトの精神分析学など)はけっして心理学に対する唯一の可能なアプローチではない。行動主義は異なる伝統をもち,本質的に上の2つとは相容れない。ワトソンからスキナーに至るまで,ラディカルな行動主義者たちは,人間の行動は観察可能な変数だけで,内的な変遷抜きで説明されるべきだと主張してきた。仮説的メカニズムについて強調することはよくて思索的,悪い言い方をすれば欺瞞的である。彼らにとって,刺激や反応,強化,剝奪時間などについて語るのは正しくても,カテゴリやイメージ,観念などについて語ることは正しいことではなかった。一昔前なら本書のような本は行動主義者に対して少なくとも1章,自己防衛の章を必要とした。今や,世論は変わった。そのような防衛は必要ではない。刺激―反応理論家たちは熱心に仮説的メカニズムを発明している,しかも少しも良心の呵責を感じないで。認知過程を研究する理由ははっきりしている。それがそこにあるからだ!」(Neisser, 1967)

本書では認知心理学の成立の歴史的経緯から認知的アプローチの前提概念,用いられる研究法,そして各領域まで概説する。しかし,この科目が大学の授業において半期2単位の科目であると想定しているため,本書は全体を通して本文約180ページであり,十分な紙数ではない。この紙数で知覚・認知心理学の全領域をくわしく述べることは難しい。本書だけで,認知心理学をすべて学んだと満足せず,本書を足掛かりにして,よりくわしい認知心理学の専門書をぜひ手にとってほしい。よりワクワクする世界が広がるはずであるし,それは皆さんの他領域の学びに役立つであろうし,心理学に関連するさまざまな現場での活動に役立つだろう。
2020年1月
箱田裕司

文献
Neisser, U.(1967)Cognitive Psychology. Appleton-Century-Crofts.


著者紹介
箱田裕司(はこだゆうじ)
京都女子大学発達教育学部教授。九州大学名誉教授。
1977年,九州大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。文学博士。
主な著書:『心理学研究法2 認知』(編集,誠信書房,2012),『現代の認知心理学7
認知の個人差』(編集,北大路書房,2011),『認知心理学』(共著,有斐閣,2010)ほか

 

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