心理臨床プロムナード──こころをめぐる13の対話

心理臨床プロムナード こころをめぐる13の対話

京都大学名誉教授 山中 康裕著

定価3,100円(+税)、300頁、四六版、上製(ハードカバー)
C3011 ISBN978-4-904536-83-4

臨床50年──選りすぐりの対談集

長く心理臨床の世界で活躍してきた著者による待望の対談集。第一部は,著者の主宰する研究会にこころの専門家を招いて,次代を担う若い臨床家へ向けて行われた対談を収録した。時に現況への鋭い批判の言葉も交えつつ,心理臨床業界の来し方行く末を縦横に語りつくした。
第二部では,多彩な趣味人でもある著者が,手塚治虫,鶴見俊輔,谷川俊太郎,中村雄二郎,池内紀らを迎えて,様々な話題で対話を楽しんでいる。
若い頃から論客として知られ,後進の育成にも力を注いできた著者ならではの確かなメッセージが込められた一書。恩師河合隼雄への敬愛の念に満ちた追悼対談も収録。

関連書:山中康裕著「深奥なる心理臨床のために
山中康裕編「心理臨床の広がりと深まり

本書の詳しい内容


おもな目次

はじめに

第I部 こころの専門家との対談

1 空想と現実の間
北山 修 × 山中康裕

2 「疎外されてる人々の側へ寄って行きたい」
成田善弘 × 山中康裕

3 ことばと身体感覚
飯森眞喜雄 × 山中康裕

4 ユング派精神療法と自己治癒力
武野俊弥 × 山中康裕

5 サイキック・リアリティを読みとる
岸本寛史 × 山中康裕

6 表現と流れ
山中康裕 × 岸本寛史

第II部 文化人との対談

7 詩と心理臨床
谷川俊太郎 × 山中康裕

8 山中少年、漫画を持ち込む
手塚治虫 × 山中康裕

9 エンデを楽しむ
中村雄二郎 × 池内 紀 × 山中康裕

10 “河合さんと子どもの本”の話をしよう
今江祥智 × 山中康裕

11 子どもたちが見えない
中村雄二郎 × 矢川澄子 × 山中康裕

12 箱庭を作ろう!
荒井良二 × 山中康裕

13 二階の女
鶴見俊輔 × 山中康裕

あとがき


はじめに

ここに、私にとっては初めての対談集が出ることになった。とっても嬉しい事である。私の恩師で上司だった河合隼雄先生にはいっぱい対談集が出ているが、私には今まで一冊もなかった。
本書では、日本の知性の代表と言われる鶴見俊輔先生とか、哲学者の中村雄二郎さんとか、ドイツ文学の池内紀さんや翻訳家の矢川澄子さん、日本現代詩の第一 人者・谷川俊太郎さんなどといった錚々たる方々や、我々の業界では知らぬ人のない成田善弘くんや北山修くんなどと対談している。これらは、どこに出しても 恥ずかしくないどころか、むしろ、一般にも希求されているものだと自負するし、飯森真喜雄、武野俊弥、岸本寛史くんら私よりも若い人との対談もあって、嬉 しい限りである。
それに、漫画界の王者・手塚治虫さんや、児童文学の今江祥智さん、絵本界の荒井良二さんなどとの対談は異色ではなかろうか? 本当は、ここに、ミュージシャンの佐野元春くんとエフエム東京で一週間放送した「ジョッキーもの」も載せたかったのだが、それを録音したテープが壊れてし まったため照合できず事務所の許可が降りなくて、断念せざるをなかったり、或いは、先輩の氏原寛さんとの対談は、氏の本に既に再録されてしまったことで、 割愛せざるをえなかったり、動物学者の日高敏隆先生とおこなったものの原稿が出てこなかったりといったことなどあって、ここに収録できなかったものがいく つかあったのは残念である。
いずれにせよ、対談というのは、その相手の方との関数で、いい意味でのカメレオンの如く、いろんな色が醸し出されて、いつもの私とは、また別の面が滲み出 ていて、それはそれで、一つの重要なジャンルなのだということが知られて面白い。以下のどこからでも、読者の興味の赴くところから読みはじめていただけた ら幸甚である。

あとがき

もう、随分前に、この対談集のゲラは出来ていたのだが、昨年末の急性肺炎・急性心不全などでの、おもわぬ心臓手術のあとの養生や、にもかかわらず、このと ころ幾つか立て続けに続いた最近の大学院での集中講義などで、思いもかけず遅れてしまったが、やっと、ここに対談集を出すまで漕ぎつける事が出来たことを 喜びたい。今年も何やかやあって、何と心房粗動と心房細動が出現してしまい、年末にカテーテル・アビュレーションのオペを受けることになっている。
校正しながら思った事であるが、もうすでに亡くなってしまわれた方々との、随分前になるものや、つい最近のものまでを通読して見て、私も随分いろんな方々と出会い、本当にいろんな方々に、いろんな教えを受けてきたなあ、と感慨も新たである。
最後になってしまったが、この対談集を活字にして下さった遠見書房の山内俊介社長と、いつも蔭ながら支えて呉れている妻の鏡子と、おのおの独立していった康絵・裕代・美樹の三人の娘とその連れ合い、そして七人の孫たちに感謝して、筆を擱く。

平成二六年一一月一六日 宇治の草庵にて
著者識


対談者一覧

第Ⅰ部 こころの専門家との対談
1 北山 修(きたやま・おさむ)
精神科医。作詞家。現在,九州大学名誉教授,白鴎大学副学長・兼特任教授,国際基督教大学客員教授。
2 成田善弘(なりた・よしひろ)
精神科医。臨床心理士。現在,成田心理療法研究室。
3 飯森眞喜雄(いいもり・まきお)
現在,医療法人社団成仁顧問。東京医科大学名誉教授。
4 武野俊弥(たけの・しゅんや)
医学博士。ユング派精神分析家。武野クリニック。
5 岸本寛史(きしもと・のりふみ)
現在,高槻赤十字病院緩和ケア診療科。
6 岸本寛史

第Ⅱ部 文化人との対談
7 谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)
詩人。
8 手塚治虫(てづか・おさむ)
漫画家。アニメーション作家。1989年没。
9 中村雄二郎(なかむら・ゆうじろう)
哲学者。明治大学名誉教授。
池内 紀(いけうち・おさむ)
ドイツ文学者。翻訳家。エッセイスト。元,東大教授。
10 今江祥智(いまえ・よしとも)
児童文学作家。
11 中村雄二郎
矢川澄子(やがわ・すみこ)
作家。詩人。翻訳家。2002年没。
12 荒井良二(あらい・りょうじ)
絵本作家。イラストレーター。
13 鶴見俊輔(つるみ・しゅんすけ)
哲学者。評論家。

著者略歴

山中康裕(やまなか・やすひろ)医学博士,臨床心理士,カワンセラー
1941年,名古屋市に生まれる。
1971年,名古屋市立大学大学院医学研究科卒業。名古屋市立大学医学部助手。
1974年,名古屋市立大学学内講師。
1977年,南山大学文学部助教授。
1980年,京都大学教育学部助教授。
1992年,京都大学教育学部教授。
2001年,京都大学教育学部長,大学院教育学研究科長。第19期日本学術会議会員。
2005年,京都大学を退職。京都大学名誉教授。
2009年,浜松大学大学院教授。同付属臨床心理教育実践センター長。
2012年,浜松大学大学院退職。京都ヘルメス研究所所長。

主 な著書に,『少年期の心』(中公新書),『絵本と童話のユング心理学』『老いの魂学(ソウロロギー)』(共にちくま学芸文庫),『臨床ユング心理学』 (PHP新書),『心理臨床と表現療法』『こころに添う―セラピスト原論』『こころと精神のはざまで』(共に金剛出版),『深奥なる心理臨床のために』 (遠見書房),『風景構成法』『風景構成法―その後の発展』(共に岩崎学術出版社,編著),『ユング心理学辞典』『エセンシャル・ユング』『魂と心の知の 探求』(監修)『コッホの「バウムテスト第3版」を読む』(共編)(共に創元社),『心をつなぐ川を訪ねて―“カワンセラー”が行く世界の河川』(NHK ラジオテキスト,NHK出版)。翻訳に『カルフ箱庭療法新版』(誠信書房,監訳),『ケルトの探求』(人文書院,監訳),『プレイセラピー』(日本評論 社,監訳),『児童精神医学の基礎』(金剛出版,監訳),『世界の箱庭療法』(新曜社,編著),『天使と話す子』(絵本,BL出版,訳),など多数。ま た,『山中康裕著作集〈第1巻~第6巻〉』(岩崎学術出版社)が出ている。

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