臨床がうまくなる! 浅くて深いブリーフセラピー──解決志向で治療的対話を磨く
臨床がうまくなる! 浅くて深いブリーフセラピー──解決志向で治療的対話を磨く
| 著者 | 黒沢幸子 |
| 出版年月 | 2026年7 月 |
| ISBN 図書コード | 978-4-86616-248-5 C3011 |
| 判型 | A5判並製 |
| ページ数 | 208 |
| 定価 | 3,000円(+税) |
内容紹介
クライエントのために役に立ちたい! と思っている臨床家の皆さん。朗報です。その気持ちにしっかり応えてくれる本が生まれました。
技法やものの見方など,心理支援の世界にはさまざまなアプローチがありますが,その中でも学びやすく,効果性に優れ,安全性が高く,かつ幅広い応用が利くのが,ソリューションフォーカスト・アプローチ(解決志向)。本書は,「解決志向」アプローチの第一人者黒沢幸子先生によって書かれた,ブリーフセラピー実践のための解像度の高い入門の一冊です。
臨床がうまくなりたい人,支援に不全感がある人,腕を上げたい人などなど,多くの臨床家に読んでいただければと思います。
主な目次
まえがき
序章 うまくなりたい気持ちとチャンスの神様
第Ⅰ部 いざブリーフセラピーへ
第1章 ブリーフセラピーの源流──ミルトン・エリクソンの臨床
第2章 ブリーフセラピーの開発
第Ⅱ部 解決志向ブリーフセラピーを活かす
第3章 技法の前に──実践哲学と発想の「前提」
第4章 面接の基本構造
第5章 初回面接の導入と解決像──面接段階Ⅰ・Ⅱ
第6章 「例外」:すでにできていることを見出す──面接段階Ⅲ
第7章 スケーリング・クエスチョン──面接段階Ⅳ
第8章 フィードバック・メッセージ──面接段階Ⅴ
第Ⅲ部 ここがコツ,そこがミソ
第9章 2回目以降の面接と停滞・後退・ぶり返し
第10章 抵抗・強制・非難など困難な面接状況
第11章 重大な危機状態への面接
終章 解決志向をカスタマイズする──良循環への智慧
あとがき
まえがき
「浅くて深いブリーフセラピー」
私がブリーフセラピーについてお伝えしたいと思ったときに,直感的に思いついたのがこのタイトルです。なんともうがったタイトルに感じられるかもしれません。ちなみに,「うがった」とは,「疑って掛かるような見方」と誤用されがちですが,正しくは「物事の本質を捉えるような見方」という意味だそうです。
さて,私たち心理臨床家,カウンセラーは可能な限り,出会ったクライエントや支援対象の方々の役に立ちたい…そう素朴に思っていると思います(ですよね!?)。
素朴に思う,という表現が物足りなければ,プロ根性で,と言ってもいいです。
だから,臨床がうまくなりたい!
私はそのための有力な候補がブリーフセラピーだと思っています。なかでも解決志向ブリーフセラピーは,効果性の高さだけでなく,汎用性や安全性,学びやすさの点で大きな利点があると考えているからです。もちろんブリーフセラピーが,クライエントの役に立つ絶対的なものとは言いません。
それでも,この対話の術(ものの見方を含む)を身に着けることのメリットは大きいです。ここで,メリットと聞いて,自然に,心理臨床家やカウンセラーにとってのメリットと受け止められたでしょう。それもそうですが,実は,重要なのは,クライエントにとってのメリットです。
クライエントに敬意を払い,その能力を信じ,柔軟性をもってその強みが立ち現れるようにクライエントと対話する。クライエントは何を求め,何を望んでいるのか。クライエントが解決の主体となるような支援関係を対話を通して培い,その効率や効果についても研究を蓄積し,結果を実践に還元していく。最近の研究結果(たとえば,Vermeuleu-Oskam et al., 2024; Zak & Pekala, 2024)からは,解決志向ブリーフセラピーの有効性に関する科学的な根拠がさらに蓄積されています(詳しくは「終章」の「エビデンス・アウトカムの話」に譲ります)。ブリーフセラピーは,クライエントにとって何が「良質なセラピー」なのかを常に問い続けていくものなのです。
ところで,心理臨床家やカウンセラー側にとって,ブリーフセラピーを実践で役立てられるようになるには,いくつかのハードルがあるように感じています。(え? 学びやすいといったのに,学びにくいの? いえいえ,うまく学んでいただけるように工夫する余地が,お伝えする側にあるということです。)
そこで,本書のミッションは,読者の皆様が,そのハードルをあまり無理せずクリアして,支援に役立つ対話を続けること(面接)に貢献することです。
ハードル①:ブリーフセラピーへの学びのアクセシビリティ
そもそもブリーフセラピーの学びにどうやって接近するのか。私は心理療法を学ぶ際,初めにブリーフセラピーから学ぶことが必ずしも重要だとは考えていません(学んでも悪くないですが)。大学や大学院でその講座等がなければ,当初は縁遠いものです。ただ,そこで,心理療法界隈でよく用いられる「深い」「浅い」という言葉でその価値づけをするようになるなら,その印象によって,後の出会いを遠ざけられてしまうこともありそうです。
⇒ミッション①:ブリーフセラピーは「浅い」けれども「深い」? 「深い」からこそ「浅い」? といったことをうがって考察し,理解を拡げ活かしてもらいやすくすること。
ハードル②:特徴的な質問技法が断片的に知られ,面接の流れや展開がよくつかめない
短時間の研修や入門書籍から解決志向ブリーフセラピーの技法を知り,面接で型通りに質問はしてみたけれど……その後の展開がうまく運べない。クライエントが解決の専門家であると頭で理解していても,面接で対話がうまく続かない。
⇒ミッション②:セラピストは面接を組み立てる専門家と言われる。面接の流れと展開を理解し,面接の組み立て,対話を続ける基本を具体的に学べるようにすること。
ハードル③:不本意な来談や他者の変化を望む面接,ぶり返し,危機的な状況の面接が難しい
面接でブリーフセラピーが機能する経験もするけれども,実際に一筋縄ではいかないケースにも出会い,難しさや限界を感じてしまう。
⇒ミッション③:これらの困難な面接状況を世界一(ちょっと言いすぎかもですが,その気概をもって)わかりやすく整理し,その適切な対応のコツやミソを示して,具体的に役立つ実践につなげられるようにすること。
このようなミッションに応えるべく,本書は「序章」から始まる3部構成となっています。各部各章とも,具体的な質問例を整理して豊富に紹介し,定番の質問技法などは,枠囲みにして示されます。また,事例を,(各章にまたがり)計6事例提示して,その対話を逐語の形で紹介し,実際の質問の展開(相互行為)がよくわかるようにしています(なお,事例は合成した架空事例となっています)。
まず「序章」では,浅くて深いブリーフセラピーに誘います(ミッション①)。
第Ⅰ部は,「いざブリーフセラピーへ」と題して,ブリーフセラピーの源流であるミルトン・H・エリクソンの臨床のエッセンスを学び(第1章),そこからブリーフセラピーの開発の経緯をお伝えします(第2章)。ここでは単なる歴史的な経緯としてではなく,ブリーフセラピーに横たわる重要なスタンスが示されます。リソースを利用し先入観を排して,一人ひとりが異なるクライエントに柔軟に合わせてあつらえるセラピーの姿や,未来志向,相互作用,小さな変化が大きな変化につながることなど,ブリーフセラピー共通の基本原則となるものが伝えられます(ミッション②③の基盤)。
第Ⅱ部では,「解決志向ブリーフセラピーを活かす」と題して,面接構造と組み立てを懇切丁寧にお伝えします(ミッション②)。実践哲学と発想の前提をまず示してから(第3章),解決志向ブリーフセラピーの本丸と言える面接の基本構造に入ります。まず,面接の基本構造の全体像と流れを理解してもらい(第4章),その展開に沿って,面接の導入と解決像(第5章),例外と成功の責任追及(第6章),スケーリング・クエスチョン(第7章),フィードバック・メッセージ(第8章)について,詳しく学んでいただきます。
第Ⅲ部は,「ここがコツ,そこがミソ」と題して,困難な面接状況等への対応のコツが整理されます(ミッション③)。まず,2回目以降の面接展開と停滞やぶり返しについて扱い(第9章),次に,強制され不本意,周囲への非難が繰り返されるなど,困難な面接関係をタイプに分け,特徴や対応,留意点などの一覧表を示して,それぞれの面接のコツを解説します(第10章)。さらに,重大な危機場面における面接についても,そのミソとなる留意点やアセスメントと対応について考察します(第11章)。
最後の章では,子どもや現場に応じた解決像や未来像を問う質問のバリエーションを紹介するなど,実践に応じて柔軟にカスタマイズした用法を示し,あらためて実践への後押しをします(第12章)。
さて,全12章にて,ミッション・コンプリート! としたいところですが,そうなるかどうかは,読者の皆様次第です。
本書は,序章から順番に読んでいただくことがわかりやすい構成にしていますが,読者の皆様の興味あるところから読んでもらって構いません。たとえば,解決志向ブリーフセラピーの面接を満足いくように実践したい方は,その基本構造と技法を第Ⅱ部でしっかり学び,実践と往復して利用してください。困難な面接状況への対応が課題と考えている方は,第Ⅲ部がその新機軸として役に立つことでしょう。
※本書は,遠見書房のオンラインマガジン『シンリンラボ』に,2024年4月~2025年6月に掲載された全12回の同タイトルの連載を元に,このミッションに応えるブリーフセラピーの実践テキストとなるように,大幅に加筆して再構成したものです。
さぁ,始めましょう。浅くて深いブリーフセラピー!
質問によって新たな対話が広がる醍醐味にワクワクして,楽しく学んでもらえますように。
クライエントは,最大限の協力をしている
クライエントと家族は,自分達に良いことを沢山している
笑いは,リソースをおびき寄せる(By Harry Korman)
2026年3月末 満開の桜を見上げて
黒沢幸子
著者略歴
黒沢幸子(くろさわ・さちこ)
臨床心理士,公認心理師。目白大学心理学部/同大学院心理学研究科 特任教授。KIDSカウンセリングシステム チーフ。得意領域は,スクールカウンセリング/学校臨床心理学,児童思春期青年期臨床と家族支援,解決志向ブリーフセラピーなど。日本ブリーフサイコセラピー学会学会賞。
現在,上智大学・駒澤大学大学院・岐阜大学等大学院等,兼任講師。東京学芸大学特命教授。教育相談センター/児童相談所/少年鑑別所等のスーパーバイザー/アドバイザー等,内閣官房の依存症対策推進関係者会議委員,台東区いじめ問題対策委員会委員等。
主な著書:『教育相談ですぐ使える! 解決志向ワークシート』(共著,ほんの森出版,2025),『未来・解決志向のブリーフセラピーへの招待』(日本評論社,2022),『思春期のブリーフセラピー―こころとからだの心理臨床』(共編,日本評論社,2022),『もっと臨床がうまくなりたい』(共著,遠見書房,2021),『解決志向のクラスづくり完全マニュアル』(共著,ほんの森出版,2017),『やさしい思春期臨床―子と親を活かすレッスン』(金剛出版,2015),『明解!スクールカウンセリング』(共著,金子書房,2013),『ワークシートでブリーフセラピー』(編著,ほんの森出版,2012),『指導援助に役立つスクールカウンセリング・ワークブック』(金子書房,2002),『森・黒沢のワークショップで学ぶ解決志向ブリーフセラピー』(共著,ほんの森出版,2002)など。
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