効果的な精神療法としての多角的課題解決療法
効果的な精神療法としての多角的課題解決療法
| 著者 | 渡辺 久雄 |
| 出版年月 | 2026年5 月 |
| ISBN 図書コード | 978-4-86616-244-7 C3047 |
| 判型 | A5判上製 |
| ページ数 | 176 |
| 定価 | 3,200円(+税) |
内容紹介
長年の臨床経験から紡ぎだされた精神療法──多角的課題解決療法──を多くの臨床家たちに広げたいとレジェンドの精神科医がペンをとった。実存分析をベースに,病者・クライエントの存在を中心に据え,傾聴と認知療法的な要素を加えたオリジナリティあふれる精神療法である多角的課題解決療法は,多くの悩める人々の生きる意志を支え,福音をもたらしてきた。本書は,発表された英語論文や研究論文をもとにまとめられ,神経症圏から依存症,ときに刑法犯まで,多くの事例をもとに編まれている。さまざまな現場で働く医師,医療スタッフ,サイコセラピストにとって座右の書となる一冊である。
主な目次
第Ⅰ章 精神療法の素晴らしさ
第Ⅱ章 精神療法における治癒機転
第Ⅲ章 精神療法過程で生起した顕著な治療的展開と新しい健やかな“あゆみ”
第Ⅳ章 強固な治療同盟成立のための課題協働体験
第Ⅴ章 多角的課題解決療法:成立のプロセスとその実際
第Ⅵ章 精神療法における「劇的な」治癒機転
第Ⅶ章 心身症と多角的課題解決療法
第Ⅷ章 なぜ精神療法は効果があるか
第Ⅸ章 多角的課題解決療法による症例治療報告
第Ⅹ章 既存の精神療法では治療困難か不可能な症例
第XI章 多角的課題解決療法実施上の留意点
第XII章 良く生きる より良く生きる
はじめに
精神科医になって約半年後に,私は精神療法の素晴らしさを体験することができた。27歳の男性は統合失調症の疑いで,1年半入院し,インシュリン・ショック療法,電気ショック療法,薬物療法をうけたが,症状不変で退院後は月2回の外来通院はしていたが,家ではほとんど寝たきりの生活であった。統合失調症としては,治療に対する態度が少し異なるように思えたので,入院を勧め入院した。充分な時間が提供されるなかで,性的体験について語り始めた。強い性的関心による性的行動が症状と関係していることが明らかになった。しかし,終局的治療能力は治療者にありという心的態度も明らかになってきた。そこで,精神療法は病者の主体的能動的役割なくしては進展しないことを,比喩を使って認識させようとした。働きかけのタイミングが良かったのか,顕著な治療的変化が生起したのは驚きであった。無表情でうつ的で無気力であったのが,明るく生き生きしてきたことが印象的であった。退院し,その後タクシー運転手になった。
この患者さんから教えられたのは,治療同盟の主役は患者さんであると,自ら洞察することが顕著な治療的変化を生起させるということであった。この顕著な治療的変化を生起させた治療報告をするが,いつも顕著な治療的変化を求めることはできないので,患者さんを治療同盟の主役にすることは,どのようにしてゆけばよいかを考えて臨床経験を重ねた。その結果,課題を提起してゆく課題協働体験をつみ重ねてゆくことが,着実な治療的変化を生起してゆくことを確認したので,多角的課題解決療法(Diversified Task-oriented Psychotherapy: DTOP)が開発された。
DTOPで適切な課題を提起してゆくことで,既存の精神療法では治療が困難または不可能な患者さんの治療も可能になった。
DTOPを,悩み苦しんでいる患者さんのために活用していただきたい。
著者略歴
渡辺久雄(わたなべ・ひさお)
精神科医,医学博士(精神医学)
名古屋大学医学部大学院修了
愛知教育大学名誉教授
東海学園大学名誉教授
メンタルヘルスマネジメント・サポートセンター顧問医
日本実存療法学会顧問
日本外来精神医療学会評議員
全国大学保健管理協会名誉会員
元ニューヨーク・サイエンス・アカデミー会員
元全国大学メンタルヘルス研究会代表
矯正医療に対する尽力により2回法務大臣表彰を受ける。現在も毎月3カ所で診療し,1カ所で産業カウンセラーのカウンセリング指導をしている。
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