親と子のはじまりを支える──妊娠期からの切れ目のない支援と心のケア

親と子のはじまりを支える
──妊娠期からの切れ目のない支援と心のケア

(名古屋大学教授)永田 雅子 著

2,200円(+税) 四六判 並製 232頁 C3011 ISBN978-4-86616-157-0

 

 

 

 



 

 

 

よくわかる! 妊娠期からのこころのケアの実際と理論
産科領域から子育て支援の現場までを幅広くカバー

本書は,周産期への心理支援を行う6名の心理職による周産期のこころのケアの実際と理論を多くの事例を通してまとめたものです。
妊娠から出産にかけての周産期は,親と子のスタート。ですが,特に母親にとっては心身ともにストレッシブな状況でもあり,身体の健康だけではなくメンタルヘルスにとっても危機が多いとされています。
編者 永田雅子は,弊社のロングセラーで周産期支援に携わる心理士や看護師らの必読書『周産期のこころのケア』の著者。執筆者は,編者とともに周産期の心理支援を学び,実践をしているメンバーです。心理支援の専門家だけではなく,産科やコミュニティ支援をされている専門家,必読の本になりました。

 


主な目次

第1章 家族になること
1.親になるということ
2.妊娠出産とメンタルヘルス
3.現代社会における妊娠・出産を取り巻く状況
4.家族の始まりを支えていくために

第2章 おなかの中に赤ちゃんを宿すということ──妊娠期のこころのケア
1.産科でのこころのケアのポイント
2.妊娠中の経過
3.妊娠中に生じやすい症状や病気
4.妊娠中のこころの動き
5.胎児診断後のケア
6.流産・死産のケア
7.産後の経過と体の変化
8.産後のこころの動き
9.産前産後のメンタルヘルス
10.妊産婦の精神疾患
11.多職種でこころを守る

第3章 赤ちゃんが何らかのリスクをもって生まれてくるということ
1.周産期医療の場とケア
2.周産期センターに入院となった赤ちゃん
3.入院の経過と赤ちゃんの発達
4.入院中の家族のこころの動き
5.亡くなっていく子どもたちとその家族へのケア
6.疾患や障害を抱えて退院していく子どもたちとその家族のケア
7.スタッフとの連携
8.さまざまな困難を抱える家族への退院支援
9.小さく生まれた赤ちゃんと家族の歩み

第4章 赤ちゃんからのメッセージを知る
1.赤ちゃんが生まれもっている力
2.赤ちゃんのサインを知る
3.親と子の間でおこっていること
4.赤ちゃんを支援の中心に据えるということ
5.NICUに入院となった赤ちゃんの特徴
6.NICUから退院となっていくときの支援
7.リスクを持って生まれた赤ちゃんの育ちとフォローアップ

第5章 地域の中で子どもと家族を見守り育てる
1.地域における妊娠期からの切れ目のない支援とは?
2.周産期医療機関と地域の連携──視点の共有
3.社会的困難さを抱える家族への支援
4.子どもと家族の育ちと長期的なフォローアップ
5.多胎の子どもたちの育ちと支援
6.育てにくさを抱える子どもと支援

資料:知っておきたい用語集
Ⅰ.妊娠経過に関する用語
Ⅱ.生殖補助医療に関する用語
Ⅲ.胎児の発育障害に関する用語
Ⅵ.胎児診断技術に関する用語
Ⅴ.出産に関する用語
Ⅵ.新生児の分類
Ⅶ.新生児の疾患・病態


編著者略歴


永田雅子(ながた・まさこ)
山口県生まれ。名古屋大学心の発達支援研究実践センター教授,博士(心理学)。公認心理師・臨床心理士
主な著書 「心理臨床における多職種の連携と協働─つなぎ手としての心理士をめざして」(編著,岩崎学術出版社),「周産期のこころのケア[新版]―親と子の出会いとメンタルヘルス」(単著,遠見書房),「心理的アセスメント」(編著,放送大学出版),「心の専門家養成講座⑨福祉心理臨床実践」(編著,ナカニシヤ出版),「公認心理師基礎用語集,第3版」(共編,遠見書房)ほか多数


執筆者
酒井玲子(愛知医科大学病院こころのケアセンター 公認心理師・臨床心理士)
高橋由紀(名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻看護科学コース准教授 助産師)
丹羽早智子(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 公認心理師・臨床心理士)
野村香代(岐阜聖徳学園大学教育学部特別支援教育専修准教授 公認心理師・臨床心理士)
村井亜弥子(名古屋市立大学医学部附属西部医療センター 公認心理師・臨床心理士)


はじめに

親と子が出会い,家族としてのスタートを切る周産期という時期に,生まれたばかりの赤ちゃんも,親となったばかりの両親も,「からだ」と「こころ」に大きな変化を体験します。私たち自身が,この世に生を受けて生まれてくる赤ちゃんとしっかりと出会い,親となり,家族となっていく周囲の人たちを温かいまなざしでしっかりと支えていくことは,赤ちゃんと家族がもともと持っている力を最大限に引き出す大きな後押しとなります。一方で,社会の変化と医療技術の進歩は,親と子の出会いの風景を大きく変え,さまざまな心理的課題に直面しなければならないことも増えてきました。
この周産期という時期に,心理の専門職がかかわり始めたのは,30年ほど前からのことです。ちょうど周産期医療全体が何よりも救命を最優先としていた医療から,子どもの発達と親子関係を支援していくことも大事な役割として位置付けるようになってきた時期でした。面会時間が緩和され,より早期から赤ちゃんのケアに家族もかかわってもらうようになっていく中で赤ちゃんの発達や家族のこころのケアを担う専門家である心理職が,NICUスタッフの一員として活動をするようになっていきました。そして,2011年に周産期医療体制整備指針で周産期母子医療センターに配置する職員として臨床心理士等の臨床心理技術者が位置付けられてからは,周産期医療で活動する心理職が全国で急速に増えていきました。現在では,総合周産期母子医療センターの約7割で,心理職が活動を行うようになり,NICUをはじめとした新生児医療の中では,当たり前のようにスタッフの一人として心理職がいる時代になりました。そして,妊娠中の母親のメンタルヘルスや,虐待の予防への関心が高まってきたことで,産科医療領域においても心理職が活動をするようになり,その人数はこの数年で急速に増えてきています。
一方でこの時期は,だれもが不安定にもなりやすく,心理臨床活動は,自らこころのケアを求めて心理職につながってきた人を対象にしたものだけではありません。心理職につながること,声をかけられること自体が,私は心配されるような状況なのかと不安を高めてしまうこともあるでしょう。誰のための,何のためのこころのケアなのかということを,通常以上に意識してかかわっていくことが求められると同時に,他の職種とともに,連携しながら活動をすることで,場自体を支えていくことも求められます。
本書では,産科およびNICUなどの周産期医療領域で長く活動をしてきた心理職の仲間を中心に執筆をしました。この領域で働き始めたばかりの心理の専門職やこころのケアに関心のある医療スタッフ,地域の支援者の方にむけて知っておいてほしいいくつかのトピックスについて紹介をしています。それぞれの置かれた立場や周囲から求められることによってその活動の在り方は異なるものとなってきますが,こころのケアの基本は目の前の赤ちゃん,そして家族にしっかりと出会い,かかわっていくことであることは変わりません。少し立ち止まって考えてみる一助にこの書籍がなればと思っています。
さて,2020年からはじまったCOVID-19の感染拡大は,親と子が自然に出会うことさえ難しくさせてしまう事態を引き起こしました。感染対策のため多くの周産期医療機関で面会やケアの制限が行われるようになってしまった中で,改めて,私たちが赤ちゃんと家族の出会いをどう支えていくのか,という根本が問われたような気がしています。親と子が当たり前のように一緒にいて,時間を共に過ごし,お互いを知り,関わり合いの中で関係を育んでいくプロセスは,一朝一夕にできるものではありません。この時期に出産となったことで,通常よりも高い負荷が家族にも赤ちゃんにもかかったことは間違いありません。それでも多くの家族と赤ちゃんはこの時期を乗り越え,力強く歩んでいかれていきます。一方でこれら感染拡大によるさまざまな制限や,医療的対応の影響がこれからどんな形で現れるのか意識を向けていかなければならないでしょう。
これから生まれてくる赤ちゃんと,赤ちゃんと出会う家族が,よりよいかたちで歩んでいけるように,よりよい支援のあり方を多くの仲間とともに一緒に考えていきたいと思っています。

執筆者を代表して 永田雅子

 

 

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