学校が求めるスクールカウンセラー──アセスメントとコンサルテーションを中心に

学校が求めるスクールカウンセラー
アセスメントとコンサルテーションを中心に

村瀬嘉代子監修・東京学校臨床心理研究会編

定価2,800円(+税)、208頁、A5版、並製
C3011 ISBN978-4-904536-63-6

学校臨床心理の知と技とこころについて分かりやすく書かれたSC必携の書

本書は,スクールカウンセラーのベテランたちによって書かれたスクールカウンセリングの実用書です。スクールカウンセリングの実践のなかでも必須で ある「アセスメント」と「コンサルテーション」をキーワードに,“学校が求めるカウンセラーの動きとはなにか”を整理して具体的に示しました。

本書の詳しい内容


おもな目次

第1部 なぜスクールカウンセラーは必要とされたのか
第1章 学校における心理職の役割──スクールカウンセラーの現在とこれから    村瀬嘉代子
第2章 公立学校スクールカウンセラー活用事業の歴史と変遷──雇用形態と勤務形態    杉原紗千子
第3章 スクールカウンセラーをめぐる法的枠組み──教育基本法・学校教育法・学校保健安全法・スクールカウンセラー設置要 領    杉原紗千子

第2部 学校アセスメントのあり方──学校コミュニティのなかでスクールカウンセラーはどう動けば良いのか
第4章 アセスメントとコンサルテーション
①学校におけるアセスメントとコンサルテーションとは    柴田恵津子
②学校コミュニティの理解とスクールカウンセラーの動き方    奥村八重子・柴田恵津子
③スクールカウンセラー活動に当たっての点検事項    石川悦子

第5章 子どもの困りごとを巡って──アセスメントと対応
①不登校問題    杉原紗千子・柴田恵津子
②いじめ問題    植山起佐子
③非行問題    横山典子
④虐待問題    横山典子・吉田章子
⑤発達のアンバランス    鈴村眞理
⑥学校危機への対応    石川悦子
⑦デジタルメディア関連問題    斯波涼介

第6章 リソースを見つけ出して活用しよう──保護者や関係機関等との連携    上野綾子
第7章 スクールカウンセリングにおける守秘義務と記録について    梅津敦子
第8章 お便り発行の目的と工夫──学校状況をアセスメントしながら    吉田章子

第3部 スクールカウンセリングの歩みと展望
第9章 座談会 スクールカウンセラーを10年経験して
第10章 スクールカウンセリング活動実態調査から見えること    鈴木義弘

資料
情報提供書の書き方    上野綾子・鈴村眞理

エッセイ
東京都公立学校スクールカウンセラーに期待すること ■ 池口洋一郎
スクールカウンセラーへの期待 ■ 下嶋光豊
学校経営とスクールカウンセラー ■ 栗原卯田子
「まずは入り方から」 ■ 高際尚子
校内チームの一員として ■ 大森優子

コラム
百聞は一見にしかず ■ 大倉智徳
“今ならば……” ■ 西野 薫
元気な生徒の応援もSCの醍醐味 ■ 寺崎馨章
悩める生徒会長 ■ 石井留美
必要だった時間 ■ 金 蘭姫
出会いに支えられた8年 ■ 田中理恵
相談室によく来る生徒の事情 ■ 齋藤真紀子
危機介入で感じた大人の脆さ ■ 高橋敦子
本当の姿を理解できれば ■ 田路美子
即効性はなくても…… ■ 小林英子
中学校における転校生面接 ■ 石附牧子


監修者の言葉

平成7年に文部省「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」として全国154名で始まったスクールカウンセラー活用事業は,今日まで配置拡大が続いて 来た。こういう経過を辿ってきているのは,変容激しい社会がスクールカウンセラーの活動を必要としたという背景の存在とスクールカウンセラーが新しい領域 で要請に応えようと努力してきた結果が評価されたものと言えよう。
ところで,わが国の臨床心理学実践の初期には,現場に赴き,そこの組織や制度,精神風土を理解しながら,チームワークのメンバーとして,必要に即して他職 種の人々や関係機関と連携して仕事をする,という営みは広くは行われていなかった。「学校」というコミュニティにいかに適切に入り,活動するかということ は未踏の領域に分け入ることであり,模索実践をしながら同時に,経過の推移を緻密に検討考察し,その結果を即,実践に反映させるという営みが必要であっ た。東京臨床心理士会では,平成8年にいち早く学校臨床心理士専門委員会を立ち上げ,スクールカウンセラーのバックアップを目指され,『東京学校臨床心理 研究会』を組織して,相互支援・相互研鑽に務めてこられた。学校臨床心理士自らが主体的に自らの活動の質的向上に取り組んでこられた成果は大きい。
本書は東京学校臨床心理研究会の方々がスクールカウンセラー活動19年余の実践を元に,「学校で役立つスクールカウンセラーに求められること」について,実践の跡をふりかえりつつ濃密な討論を繰り返されて執筆されたものである。その特徴は,

①コンパクトだがスクールカウンセラーにとって,必要な知識と具体的な対応技法が遺漏なく分かりやすく述べられている。
②アセスメントの必要性とその実際が明確に述べられ,アセスメントの結果をいかにして学校場面の必要性に応じて伝え,活かしていくかについてポイントが分かりやすく説かれている。
③はじめに理論や技法ありきではなく,学校臨床心理士のおかれた現実について確かなアセスメントを行い,自分の負える責任を考慮しながら,その結果をどう現実行動に活かしていくかについて詳述されている。
④スクールカウンセラー活動の基盤をなす法律,行政,制度等についてなされた解説は,スクールカウンセラーが「立ち位置」と役割を確かに認識するために役立つ。
⑤活写された事例や率直な座談会の内容は実務にとって極めて示唆深い。
⑥スクールカウンセラーの営為を相対化して検討しようとする姿勢が堅持されている。
⑦コンサルテーションについて,現実に即した極めて行き届いた説明がなされている。

つまり,コンパクトだが現実に非常に役立つ学校臨床心理の知と技とこころについて,分かりやすく書かれており,スクールカウンセラーの方々にとっては必携 の書と言えよう。あわせて,子どもの心身の健康な成長を願うすべての方々に本書を手にとって戴きたいと願う。多忙なお仕事の合間に真摯に討論を積み重ねら れて,この書を編み出された東京学校臨床心理研究会の皆様に謝意を捧げたい。

平成25年8月吉日
北翔大学大学院・日本臨床心理士会会長
村瀬嘉代子


はじめに ──学校という場を生かすために

本 書は,スクールカウンセリング活動における「アセスメント」と「コンサルテーション」をテーマに取り上げ,“学校が求めるカウンセラーの動きとはなに か”を整理して具体的に示すことを目的としています。ごく最近でも教職員研修などで,“スクールカウンセラーが丁寧に面接を継続しているのはわかるが,そ の目的や対応方針が周囲にはわかりにくい時がある”という指摘を学校教員から受けることがあります。また,私達が実施したスクールカウンセリング活動実態 調査(平成23(2011)年度)からも,スクールカウンセラーのなかにアセスメントへの意識がやや薄いという結果が出ました。校内で教職員と協働する上 で,スクールカウンセリングの目的や対応方針を,児童生徒はもとより教職員や保護者にわかりやすく伝えていくことは非常に重要です。いわゆる,PDCAサ イクル「Plan(アセスメントから見立てを行い,仮説を立て,方略を考える)-Do(実行する)-Check(結果を評価・検証する)-Act(必要に 応じてやり方を修正・改善する)」を,いかに周囲の教職員と共有しながら実践していかれるかが問われていると思います。
このスクールカウンセリングにとって最も基本的で重要なテーマである「見立て(アセスメント)」と「助言・説明(コンサルテーション)」に関する本を,スクールカウンセラーが共同して著したいというのが本書の強い動機づけでした。
現代の子どもたちの周りにはさまざまな人的物的資源があります。インターネットを含め情報も溢れていますが,それをどう有機的に活用できるかが大きな課題 だと思います。本書では,日々変化する学校コミュニティにおいて,スクールカウンセラーが教職員と協力し合いながら子どもたちに関わる情報を収集し,校内 外の誰に何を伝えながら活動することが,「今,ここで」生活する児童生徒にとって有効な支援になるのかという点に焦点を当てました。したがって医療機関や 教育相談室,福祉機関等でのコンサルテーションとは,やや異なると思います。
また,スクールカウンセリングにおけるコンサルテーションは,コンサルタント(例えばスクールカウンセラー)は,コンサルティ(例えば担任教師)に具体的 な支援方法を提示するばかりではありません。重要なのは,子どもの理解(見方)の視点を共有し,コンサルティ(教師)が実行可能な支援方法に気付くように 支援することです。これにより,コンサルティが自分は支えられていると実感し,心のゆとりにつながり,子どもたちへのさらに適切な対応へとつながっていく のではないかと思っています。
話は少し広がりますが,平成23(2011)年3月に発災した東日本大震災は,我が国にとって未曾有の事態を招きました。救命の最前線で働く医療従事者や 自衛隊,警察関係者にも心のケアが必要でした。未来を担う子どもたちが重篤なPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥らず前向きに学校生活が送れるよう, 震災直後から被災県内の人員不足を補うべく県外から沢山のスクールカウンセラーが継続派遣されています。社会にとって,子どもたちの健全な成長・発達は希 望であり願いです。
近年は,学校危機に際して心のケアを行うことが社会の共通認識になってきましたが,このような危機場面に遭遇したとき,私達カウンセラーは心理臨床の専門 家であると同時に一人のゼネラリストとして,さまざまな知識や能力を備え,他職種や関係者と柔軟に協働することが求められていると痛感します。
平成7(1995)年に文部省「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」として全国154名で始まったこのスクールカウンセラー活用事業は, 「スクールカウンセラー活用事業補助」への転換を経た後も配置拡大が続いています。しかしながら,毎年実施されている文部科学省「児童生徒の問題行動等生 徒指導上の諸問題に関する調査」結果では,不登校児童生徒数やいじめの認知件数,暴力行為の件数は未だに深刻な状況にあり,児童生徒の自殺者は平成 22(2010)年度から23(2011)年度にかけて156名から200名へと増加しています。この背景には,平成23年の大津市の事件のように,いじ めによる自殺という問題も跡を絶たず非常にいたましいことで,スクールカウンセラーは大いにこれらの問題に寄与していかなければなりません。
一般社団法人東京臨床心理士会では,平成8(1996)年に学校臨床心理士専門委員会を立ち上げ,スクールカウンセラーのバックアップ母体として『東京学 校臨床心理研究会』を組織して,スクールカウンセラーの資質向上を趣旨として相互支援・相互研鑽を続けてきました。本書では,この研究会活動から得られた 知見も紹介しています。また,若手スクールカウンセラーによる座談会を行い,スクールカウンセラーとしての悪戦苦闘や失敗談など実際の声も盛り込みまし た。
スクールカウンセラーの採用状況や勤務条件は全国各地域によって違いもあり,また,自治体によってはカウンセラーの人材不足が深刻な事態となっています。 それを踏まえながらも,今後の学校教育相談のさらなる発展に向けて,アセスメントとコンサルテーションのあり方について提言し,本書がスクールカウンセリ ングという専門領域のガイドブックになればと願っています。全国のスクールカウンセラー初学者や教育臨床に関わる心理士のみでなく,学校関係者や近接領域 の皆様にも手に取って頂き,忌憚のないご意見を頂けると幸甚です。
また,東京都教育庁池口洋一郎先生はじめ,今回,エッセイという形で温かいお言葉をお寄せくださった諸先生方に,日頃からの感謝をこめて心より御礼申し上げます。
最後に,監修者の村瀬嘉代子先生と,本書の出版企画について当初より全面的に協力推進してくださった遠見書房の山内俊介代表に,執筆者一同とともに謝意を表します。
なお,本文中で取り上げている事例は,すべて本質を損なわない程度に改変しているものであることを申し添えます。

平成25(2013)年8月
一般社団法人東京臨床心理士会副会長・学校臨床心理士専門委員会委員長
東京学校臨床心理研究会を代表して 石川悦子


著者一覧・略歴

監修者略歴
村瀬嘉代子(むらせ・かよこ) 博士(文学),臨床心理士
1959年,奈良女子大学文学部心理学科卒業。1959~1965年,家庭裁判所調査官(補),この間,カリフォルニア大学大学院バークレイ校留 学,1965年大正大学カウンセリング研究所講師,1984年より同助教授を経て,1987年同教授。1993年,同大学同大学院臨床 心理学専攻教授。退官後,2008年より北翔大学大学院教授,大正大学客員教授(名誉教授)
主な著書 『柔らかなこころ,静かな想い』(創元社,2000),『子どもと家族への統合的心理療法』(金剛出版,2001),『統合的心理 療法の考え方』(金剛出版,2003),『心理療法とは何か』(金剛出版,2004),『聴覚障害者への統合的アプローチ』(日本評論社,2005), 『改訂新版 子どもと大人のこころの架け橋』(金剛出版,2010)ほか多数

東京学校臨床心理研究会
平成7(1995)年に始まった文部省スクールカウンセラー活用調査研究委託事業を受けて,平成8年に発足した会である。一般社団法人東京臨床心理士会 学校臨床心理士専門委員会が企画運営を担当している。研究・研修・交流等を通して,会員相互での支援ならびに研鑽を行い,SCとしての資質の向上を目的と している。会員数は発足当初は20名程度であったが,平成25(2013)年には1,000名規模に拡大している。対象は東京都採用SCに限定してきた が,最近は都内で働くSC全般に門戸を広げている。

執筆者一覧
論文
石川 悦子(明治学院大学/学校法人桐朋学園/東京都スクールカウンセラー)
上野 綾子(東京都スクールカウンセラー/明神下診療所)
植山起佐子(臨床心理士コラボオフィス目黒/東京都スクールカウンセラー)
梅津 敦子(東京都スクールカウンセラー/山王精神医学心理学研究所鈴泉クリニック)
奥村八重子(滋慶トータルサポートセンター/関口メンタルヘルス相談室)
斯波 涼介(阿部真里子臨床心理オフィス/東京都スクールカウンセラー)
柴田恵津子(江東区教育センター/東京都スクールカウンセラー)
杉原紗千子(NPO法人ことばのすいずみ教室/元東京都スクールカウンセラー)
鈴木 義弘(町田市教育センター)
鈴村 眞理(東京都スクールカウンセラー)
村瀬嘉代子(北翔大学大学院人間福祉学研究科)*
横山 典子(東京都スクールカウンセラー/小平市教育相談室)
吉田 章子(東京都スクールカウンセラー/小平市教育相談室)

エッセイ
池口洋一郎(東京都教育庁指導部主任指導主事)
大森 優子(立川市立立川第三中学校主任養護教諭)
栗原卯田子(学校法人 成城学校 成城中学校・成城高等学校校長)
下嶋 光豊(杉並区済美教育センター)
高際 尚子(杉並区立荻窪中学校副校長)

座談会出席者:
大倉 智徳(東京都スクールカウンセラー)
小林 英子(東京都スクールカウンセラー)
髙橋 敦子(東京都スクールカウンセラー/私立学校スクールカウンセラー)
寺﨑 馨章(東京都スクールカウンセラー/東京工科大学・日本工学院八王子専門学校)
西野  薫(東京カウンセリングセンター)

石川 悦子(既出)
柴田恵津子(既出)
杉原紗千子(既出)
宮田 葉子(東京都スクールカウンセラー)

コラム
石井 留美    石附 牧子    大倉 智徳    金  蘭姫
小林 英子    齋藤真紀子    髙橋 敦子    田中 理恵
寺﨑 馨章    田路 美子    西野  薫

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