心理演習──体験を通して学ぶ公認心理師の基本スキル①
心理演習──体験を通して学ぶ公認心理師の基本スキル①
編者 | 日本公認心理師養成機関連盟 |
出版年月 | 2025年7月 |
ISBN | 978-4-86616-224-9 |
図書コード | C3011 |
判型 | A5判・並製 |
ページ数 | 248 |
定価 | 2,800円(+税) |
内容紹介
公認心理師養成の必須単位「心理演習」を広く深く学ぶためのテキストです。心理支援の最初の一歩として,「保健医療」「教育」「福祉」「司法・犯罪」「産業・労働」×「心理検査・心理アセスメント」「心理面接」「地域支援」の特色に合わせて,現場に出る前に学んでおきたい基本スキルをまとめています。
座学によって学んだ心理支援にかかわる基礎知識を実際にどう活用するかを学び,実際に役割演技(ロールプレイング)やカンファレンスなどのワークを通して心理支援の基本を学ぶのが「心理演習」。現場で活躍する公認心理師と公認心理師養成を行う大学教員らによって作られた本書は,人のこころに寄り添い,癒し,こころの安定と健康のために何ができるのかを考える必携の1冊です。
主な目次
第Ⅰ部 公認心理師に求められる知識・態度・基本スキル
第1章 心理演習の到達目標と学習方法
宮﨑 昭
第2章 要支援者とのコミュニケーション
川畑直人
コラム 大学附属の心理相談室における心理支援の実際
上田幸彦
コラム オンラインによる心理支援──心理支援の新しいカタチ
宮﨑 昭
第Ⅱ部 心理検査・心理アセスメント
第3章 心理検査・心理的アセスメント概論
藤城有美子
第4章 【事例】保健医療分野における心理検査・心理アセスメントの実際
瀬地山葉矢
第5章 【事例】教育分野における心理検査・心理アセスメントの実際
山口豊一
第6章 【事例】福祉分野における心理検査・心理アセスメントの実際
田附あえか
第7章 【事例】司法・犯罪分野における心理検査・心理アセスメントの実際
平間さゆり
第8章 【事例】産業・労働分野における心理検査・心理アセスメントの実際
浦邉綾子
コラム アドボカシー
杉原保史
コラム 事例検討会がどのように心理師の力量を高めるかのか?
武内智弥
第Ⅲ部 心理面接
第9章 心理面接概論
佐藤宏平
第10章 【事例】保健医療分野における心理面接の実際
野村れいか
第11章 【事例】教育分野における心理面接の実際
杉山雅宏
第12章 【事例】福祉分野における心理面接の実際
大塚 斉
第13章 【事例】司法・犯罪分野における心理面接の実際
藤川 浩
第14章 【事例】産業・労働分野における心理面接の実際
加藤容子
コラム ロールプレイングの魅力
宮崎圭子
第Ⅳ部 地域支援
第15章 地域支援概論
元永拓郎
第16章 【事例】保健医療分野における地域支援の実際
花村温子
第17章 【事例】教育分野における地域支援の実際
石川悦子
第18章 【事例】福祉分野における地域支援の実際
樋口亜瑞佐
第19章 【事例】司法・犯罪分野における地域支援の実際
菅藤健一
第20章 【事例】産業・労働分野における地域支援の実際
種市康太郎
第21章 【事例】災害支援における地域支援の実際
若島孔文
コラム 代表的な心理療法①精神分析的アプローチ
吉村 聡
コラム 代表的な心理療法②認知行動療法
竹田伸也
コラム 代表的な心理療法③人間学派/Person-Centered Approach
金子周平
コラム 代表的な心理療法④システム論/家族療法/ブリーフセラピー/ナラティヴ・セラピー
狐塚貴博
コラム 代表的な心理療法⑤ソマティックなアプローチ
藤吉晴美
刊行にあたって
大学(学部)における公認心理師養成が2018年にスタートして8年目を迎えた。学部の指定科目25科目のうち,23の講義科目については,諸出版社からいろいろテキスト(教科書)が刊行されている。しかし,「心理演習」「心理実習」の2科目についてのテキストはない。その理由は,内容が多様すぎて1冊のテキストとしてまとめるのはきわめて難しいからである。テキストがないため,各大学における「心理演習」「心理実習」は,その内容はあまりにも多彩(ある意味でバラバラ)になっている。
本公認心理師養成機関連盟(2018年6月設立,2024年9月現在で226の養成機関のうち189機関が加盟,略称は公養連)では,2018年7月に設置された〈実習検討チーム〉が,『演習・実習の手引き』の作成,「研修会」の開催を行ってきたが,2020年1月に解散し,新たに〈実習演習検討委員会〉を設置し,「心理演習」「心理実習」について検討を重ねてきた。そして2023年12月に『公認心理師養成を担当する教員・指導者のための実習演習ガイド』(4分冊:「1.心理演習のガイド(教員用)」「2.心理実習・心理実践実習のガイド(教員・指導者用)担当者のコンピテンシー篇」「3.心理実習・心理実践実習のガイド(教員・指導者用)養成機関の附属心理相談施設における実習篇」「4.心理実習・心理実践実習のガイド(教員・指導者用)巡回指導篇」)を作成した。これは公養連のホームページ(https://kouyouren.jp/psdocuments)で公開されている。
公養連では,これまで実習演習について,〈教育する側(教員・実習指導者)〉をサポートするという視点での検討とその成果の公表をしてきたが,〈教育される側(学生)〉をサポートするという視点での支援が弱かった。そこでこのたびは,教育される側(学生)をサポートするという視点で,学生が使用するテキストの作成に取り組むことにした。
学生が使用する「心理演習」のテキスト作成はきわめて難しいけれども〈実習演習検討委員会〉では,この8年あまりに各大学で実践されてきた心理演習の授業についての“経験知”を持ち寄り,度重なる熱心な丁寧な議論を行い,本書を出版することにした。
「心理演習」の目的は,以下の5つの事項について,A.具体的な場面を想定した《役割演技(ロールプレイング)》を行い,かつ,B.《事例検討》で取り上げ,公認心理師に必要な知識および技能の基本的な水準の修得である。
1)心理に関する支援を要する者等に関する以下の知識および技能の修得:①コミュニケーション,②心理検査,③心理面接,④地域支援,等。
2)心理に関する支援を要する者等の理解とニーズの把握および支援計画の作成。
3)心理に関する支援を要する者の現実生活を視野に入れたチームアプローチ。
4)多職種連携および地域連携。
5)公認心理師としての職業倫理および法的義務への理解。
本書は次のような4部から構成されており,それに10のコラム(学生が知っておくとよい心理支援の方法やさまざまなトピック)が掲載されている。「第Ⅰ部 公認心理師に求められる知識・態度・基本スキル」では,総論的に「心理演習」の到達目標と学習方法と要支援者とのコミュニケーションについて述べられている。それに続く3つの部では,各論的に公認心理師の4大業務のなかの(「心の健康に関する知識の普及を図るための教育および情報の提供」を除く)3大業務について述べられている。「第Ⅱ部 心理検査・心理的アセスメント」「第Ⅲ部 心理面接」「第Ⅳ部 地域支援」では,具体的な場面を想定した際の《役割演技》の仕方や《事例検討》をする際の学習の進め方やポイント,5分野(保健医療,教育,福祉,司法・犯罪,産業)における事例が述べられている。ただ「第Ⅲ部 心理面接」では,5分野の事例に加えて「災害における地域支援の実際」の事例が付け加えられている。
ところで公認心理師養成では,3つの授業スタイル(講義,演習,実習)で学ぶことになっている。演習は,講義で学んだ知識や技法を,実習先(臨床現場)に向けての準備として,体験的に学ぶのである。講義では,先生から教えられることを受け身的に吸収していけば良かったが,演習の《役割演技》では,具体的な場面を想定して自分の頭と心と行動を通して能動的に学んでいくことになる。《事例検討》では,支援対象となる模擬事例を通して,見立てと手立てについて,自分の頭と心を通して深く考えることになる。このような学びによる準備がきちんとできていないと,実習先で自分が傷ついたり,実習先の人を傷つけたりする危険がある。それだけに実習を控えて,演習ではしっかりと学ぶ必要がある。
「心理演習」の学習によって,読者が心理職の仕事の体験的な理解と進路選択ができるようになるよう願っている。
一般社団法人 公認心理師養成機関連盟副会長
野島一彦
編著者紹介
一般社団法人 日本公認心理師養成機関連盟について
日本公認心理師養成機関連盟は,公認心理師を養成する,大学,大学院及び実務経験を行う施設等の機関によって構成される全国組織。同連盟は,公認心理師養成機関に課せられた社会的使命に鑑み,公認心理師養成の内容充実及び振興を図るとともに,公認心理師及び公認心理師養成に関する研究開発と知識の普及に努め,もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的としている。https://kouyouren.jp/
執筆者一覧(掲載順)
野島 一彦(のじまかずひこ:九州大学名誉教授・跡見学園女子大学名誉教授)
宮﨑 昭(みやざきあきら:環境とこころとからだの研究所)
川畑 直人(かわばたなおと:京都文教大学臨床心理学部臨床心理学科)
藤城有美子(ふじしろゆみこ:駒沢女子大学共創文化学部心理学科)
瀬地山葉矢(せちやまはや:日本福祉大学教育・心理学部心理学科)
山口 豊一(やまぐちとよかず:聖徳大学大学院臨床心理学研究科)
田附あえか(たつきあえか:大正大学臨床心理学部臨床心理学科)
平間さゆり(ひらまさゆり:川村学園女子大学文学部心理学科)
浦邉 綾子(うらべあやこ: 愛知淑徳大学心理学部心理学科)
佐藤 宏平(さとうこうへい:山形大学地域教育文化学部地域教育文化学科)
野村れいか(のむられいか:九州大学大学院人間環境学研究院)
杉山 雅宏(すぎやままさひろ:東京家政大学人文部心理カウンセリング学科)
大塚 斉(おおつかひとし:埼玉県立保健医療福祉学部社会福祉子ども学科)
藤川 浩(ふじかわひろし:駿河台大学心理学部)
加藤 容子(かとうようこ:椙山女学園大学人間関係学部心理学科)
元永 拓郎(もとながたくろう:帝京大学文学部心理学科)
花村 温子(はなむらあつこ:地域医療機能推進機構埼玉メディカルセンター心理療法室)
石川 悦子(いしかわえつこ:こども教育宝仙大学こども教育学部幼児教育学科)
樋口亜瑞佐(ひぐちあずさ:大阪公立大学現代システム科学研究院)
菅藤 健一(かんとうけんいち:福島学院大学福祉学部福祉心理学科/同大学院心理学研究科)
種市康太郎(たねいちこうたろう:桜美林大学リベラルアーツ学群)
若島 孔文(わかしまこうぶん:東北大学大学院教育学研究科)
コラム:
上田 幸彦(うえだゆきひこ:沖縄国際大学大学院 地域文化研究科)
杉原 保史(すぎはらやすし:京都大学学生総合支援機構)
武内 智弥(たけうちともや: 淑徳大学人文学部人間科学科)
宮崎 圭子(みやざきけいこ:跡見学園女子大学心理学部臨床心理学科)
吉村 聡(よしむらさとし:上智大学総合人間科学部心理学科)
竹田 伸也(たけだしんや:鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻)
金子 周平(かねこしゅうへい:九州大学大学院人間環境学研究院)
狐塚 貴博(こづかたかひろ:名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
藤吉 晴美(ふじよしはるみ:九州産業大学人間科学部臨床心理学科)
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