動作法と心理臨床──動作法の基本と実践②

 

動作法と心理臨床──動作法の基本と実践②

大野博之・藤田継道・奇 恵英・服巻 豊 編

定価2,500円(+税),252頁,四六判並製
ISBN978-4-86616-205-8 C3011
2024年10月刊行
 

 

成瀬悟策が創始し,多くものに受け継がれてきた動作法は,現在,アジア圏をはじめ,多くの国・地域で,身体的・心理的な対人支援として広まっています。
本書は,動作法の〈広がり〉を動作法実践者たちによって書かれた1冊です。思春期のつまづきや精神疾患,PTSD,身体障害,身体疾患など,さまざまな場面で生きる動作法を描いています。


主な目次
 

第1部 精神疾患と動作法
第1章 思春期・青年期のこころの病と動作法 (畠中雄平)
第2章 統合失調症と動作療法 (鶴 光代)
第3章 うつ病への臨床動作法 (緒方二郎)
第4章 場面緘黙と動作法 (成瀨智仁)
第5章 認知症と動作法 (竹田伸也)
第6章 PTSDと動作法 (奇 惠英)
第7章 自己臭恐怖症と動作法 (大場信惠)
第8章 動作法における“こころ”の問題と対処 (花田利郎)

第2部 身体障害・体の病と動作法
第9章 脳性マヒ (藤野正和・石倉健二)
第10章 筋ジストロフィー症児への動作法を通した支援について考える (森﨑博志)
第11章 医療的ケアを必要とする重症心身障害 (東川博昭)
第12章 気管支喘息 (藤田継道)
第13章 腎臓疾患と人工透析 (服巻 豊)

第3部 発達障害と動作法
第14章 知的障害 (小田浩伸)
第15章 学習障害 (五位塚和也・小田浩伸)
第16章 注意欠如・多動症 (瀬戸山悠・橋本正巳)
第17章 自閉症スペクトラム障害 (干川 隆・田中信利)

第4部 臨床心理分野における動作法の事例
第18章 動作法体験者にとっての動作法──51年間の歩み (池辺絢子)
第19章 子育て中の保護者支援の事例──スクールカウンセラーの視点から (染原薫美)
第20章 不自由な身体と生きた私の50年 (芹田洋志)
第21章 Mさんの40年に及ぶ動作と認知の学習のヒストリー (藤田継道)
第22章 不登校の事例 (山﨑由紀)
第23章 終末期医療への貢献の可能性 (曻地勝人)


まえがき
 
本書第2巻では,まず初めに精神科領域のさまざまな疾患に適用され効果が報告されている動作法の具体を学ぶことができます。ついで,へーっと驚かれるような体の疾患に対する動作法が紹介され,続いて,知的障害や発達障害に対する動作法が紹介されています。ここでも,それらの疾患や障害に対する動作法の具体が学べます。
私たちは,障がいのあるご本人自らが「動作法と出会って今日に至るまでの長年月にわたる人間形成の過程」について語られていること(自らを語ることができない場合には代弁者の記録)を通して,動作法の奥深さを知ることができると思います。最後に,余命数カ月を宣告され,寝たきり状態であった終末期医療対象高齢者が,動作法に出会い,献身的な家族の愛と医療との連携で見る見るうちに元気を取り戻していかれている過程が報告されています。当事者・代弁者の方の報告を通して動作法のすばらしさを知ることができると思います。
なお,執筆していただきたかった多くのすぐれた動作法仲間と取り上げたかったテーマがありますが,今回はそれがかないませんでした。この場をお借りしてお詫び申し上げます。

理解の水準には以下の5つがあると考えています。

第1水準は「読んだり,聞いたりして『わかった(理解できた)』と思う」水準。
第2水準は「説明できる」水準。いくつかの下位水準があります。
第3水準は「実践できる」水準。いくつかの下位水準があります。まれに2と3が逆になる場合もあります。
第4水準は「後進を育てられる(教えられる)」水準。いくつかの下位水準があります。
第5水準は「知識と技術を本・論文・映像等で残せる」水準。

読者の皆さん方に,理解の第3,4,5水準を目指し,こころや体に問題を抱えている方々のお役に立てるようになっていただけると編者一同は望外の幸せです。
実践力を学べる組織には日本リハビリテイション心理学会(jarp@dohsa-hou.jp)と日本臨床動作学会(dohsahoujim@gmail.com)があります。両学会の事務局にお問い合わせください。

本書の完成は執筆者の皆様,遠見書房山内俊介社主と編集部の皆様のご尽力の賜物です。編集者一同,ここに謹んで謝意を表したいと思います。ありがとうございました。

令和6年・夏
副編集代表 藤田継道


 

編者紹介
 
大野博之(おおの・ひろゆき):教育学博士,九州大学名誉教授,福岡女学院大学人文科学研究科長,日本リハビリテイション心理学会理事長,日本臨床心理士資格認定協会常務理事,公認心理師試験研修センター理事
藤田継道(ふじた・つぐみち):兵庫教育大学名誉教授,臨床行動分析学研究所長,日本心理臨床学会名誉会員,日本特殊教育学会名誉会員,元日本リハビリテイション心理学会資格認定委員会委員,臨床心理士
奇 惠英(き・へよん):福岡女学院大学人間関係学部心理学科,日本リハビリテイション心理学会認定スーパーバイザー,臨床心理士・公認心理師
服巻 豊(はらまき・ゆたか):広島大学大学院人間社会科学研究科人文社会科学専攻心理学プログラム,日本リハビリテイション心理学会認定スーパーバイザー,臨床心理士・公認心理師・薬剤師・心理劇認定指導士

執筆者一覧(50音順)
石倉健二(いしくらけんじ:兵庫教育大学大学院特別支援教育専攻)
池辺絢子(いけべあやこ:当事者・動作法実践者)
大場信惠(おおばのぶえ:九州大学大学院人間環境学府)
緒方二郎(おがたじろう:東京福祉大学心理学部)
小田浩伸(おだひろのぶ:大阪大谷大学教育学部)
奇 惠英(きへよん:福岡女学院大学大学院人文科学研究科)
五位塚和也(ごいつかかずや:大分大学教育学部)
曻地勝人(しょうちかつと:福岡教育大学名誉教授・しいのみ学園理事長)
瀬戸山悠(せとやまゆう:神戸親和大学教育学部教育学科)
芹田洋志(せりたひろし:NPO法人しょうがい生活支援の会すみか)
染原薫美(そめはらまさみ:福岡県スクールカウンセラー)
竹田伸也(たけだしんや:鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学講座)
田中信利(たなかのぶとし:北九州市立大学文学部)
鶴 光代(つるみつよ:秋田大学名誉教授,淑徳大学)
成瀨智仁(なるせともひと:京都西山短期大学)
橋本正巳(はしもとまさみ:兵庫大学教育学部教育学科)
畠中雄平(はたけなかゆうへい:琉球大学人文社会学部)
花田利郎(はなだとしろう:西南学院大学人間科学部心理学科)
服巻 豊(はらまきゆたか:広島大学大学院人間社会科学研究科)
東川博昭(ひがしかわひろあき:くらしき作陽大学子ども教育学部子ども教育学科)
藤田継道(ふじたつぐみち: 兵庫教育大学名誉教授)
藤野正和(ふじのまさかず:兵庫教育大学大学院特別支援教育専攻)
干川 隆(ほしかわたかし:熊本大学大学院教育学研究科)
森﨑博志(もりさきひろし:愛知教育大学特別支援教育講座)
山﨑由紀(やまさきゆき:医療法人寿栄会本間病院)

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