動作法の世界──動作法の基本と実践①
動作法の世界──動作法の基本と実践①
大野博之・藤田継道・奇 恵英・服巻 豊 編
定価2,200円(+税),200頁,四六判並製
ISBN978-4-86616-204-1 C3011
2024年10月刊行
成瀬悟策が創始し,多くものに受け継がれてきた動作法は,現在,アジア圏をはじめ,多くの国・地域で,身体的・心理的な対人支援として広まっています。
本書は,動作法の〈深まり〉を動作法実践者たちによって書かれた1冊です。動作法の入門から,他の心理療法アプローチとの異同,心理学的な位置づけ,スポーツ動作法,高齢者向けの動作法,ストレスマネジメントなど,さまざまな場面で生きる動作法を描いています。
主な目次
第1部 動作法とは
第1章 動作法誕生の経緯 (大野博之)
第2章 動作法の基本 (大野博之)
第3章 動作法──発達心理学の視点から (香野 毅)
第4章 動作法──行動分析学の視点から (船橋篤彦・藤田継道)
第5章 動作法──認知心理学の視点から (藤川卓也・服巻 豊)
第6章 動作法──心理臨床学の視点から (奇 恵英)
第7章 動作法──アセスメントの視点から (曻地勝人)
第2部 動作法の発展と多様性
第8章 自己コントロールのためのサート (奇 恵英)
第9章 遊戯療法と動作法 (藤田継道)
第10章 箱庭療法と動作法 (大野博之)
第11章 高齢者に向けた臨床動作法の意義 (針塚 進)
第12章 動作法の拡大 (中野弘治)
第3部 日常生活と動作法
第13章 不器用と動作法 (飯嶋正博)
第14章 ストレスと動作法 (冨永良喜)
第15章 運動・スポーツと動作法 (星野公夫)
第16章 肩こり・腰痛と動作法 (小田浩伸)
第17章 睡眠と動作法 (原田真之介)
まえがき
動作法は,脳性マヒ児・者に対してからだの不自由な動きを改善するために,長年にわたって具体的かつ体系的な実践技法として確立されてきました。
その過程で脳性マヒを動作法の対象とするだけでなく,障害者動作法(知的障害,自閉症,重度・重複障害,情動障害,精神疾患,盲・弱視,聾・難聴など),健康動作法,高齢者動作法,教育動作法,スポーツ動作法などへ適用範囲が拡大してきました。
なぜこうしたことが可能になるのか。その答えは至極当たり前のことかもしれません。動作は人間存在の根元であり,動作を全くしない人はいません。その動作を“当人が意図した身体運動を実現しようと努力する心理過程”との定義に基づけば,この心理過程に“身体”から“心”へ,“心”から“身体”へ,心と身体の相互に密接な関係にあることが理解できます。言い換えれば,「動かすもの(主体:心)が身体に働きかけて動かす」という動作法の心身一元論として捉えることができます。この考え方に従えば,心と身体の不調に同時に取り組むことを意味し,心理療法としての役割を果たしていることに繋がります。
心理療法としては,来談者中心療法,認知療法,認知行動療法,精神分析的心理療法,遊戯療法,箱庭療法,家族療法,問題解決療法などの技法があります。臨床動作法や動作療法も心理療法として位置づけられていますが,その本体である「動作法」それ自体も積極的に心理療法として捉え直すことも有用であると思います。
「動作法」としての心理療法に関して,“心の病”として統合失調症,うつ病,自己臭恐怖症,認知症,場面緘黙症,PTSDなどを,“身体の病”として脳性マヒ,進行性筋ジストロフィー,重症心身障害,気管支喘息,腎臓疾患などを取り上げることができます。これらの心身両面にわたる病に対して動作法を適用することにより「こころの専門家」としての側面を備えることができます。こうした見方は動作を介した人への取り組みに端を発していますので,「動作法」が広い意味での心理療法として確立することが期待されます。
動作法を実践している人たちは,研究者や教育者,医療や福祉の専門家,心理臨床家などが含まれ,さまざまな領域で活躍されています。その人たちに役立つことを願って執筆者各位の献身的なご協力と,遠見書房の山内俊介様・編集部の皆様のご苦労のおかげで公刊することができました。ここに改めて,心より感謝申しあげます。
令和6年・夏
編集代表 大野博之
編者紹介
大野博之(おおの・ひろゆき):教育学博士,九州大学名誉教授,福岡女学院大学人文科学研究科長,日本リハビリテイション心理学会理事長,日本臨床心理士資格認定協会常務理事,公認心理師試験研修センター理事
藤田継道(ふじた・つぐみち):兵庫教育大学名誉教授,臨床行動分析学研究所長,日本心理臨床学会名誉会員,日本特殊教育学会名誉会員,元日本リハビリテイション心理学会資格認定委員会委員,臨床心理士
奇 惠英(き・へよん):福岡女学院大学人間関係学部心理学科,日本リハビリテイション心理学会認定スーパーバイザー,臨床心理士・公認心理師
服巻 豊(はらまき・ゆたか):広島大学大学院人間社会科学研究科人文社会科学専攻心理学プログラム,日本リハビリテイション心理学会認定スーパーバイザー,臨床心理士・公認心理師・薬剤師・心理劇認定指導士
執筆者一覧(50音順)
飯嶋正博(いいじままさひろ:元順天堂大学スポーツ健康科学部健康学科)
大野博之(おおのひろゆき:九州大学名誉教授)
小田浩伸(おだひろのぶ:大阪大谷大学教育学部)
奇 恵英(きへよん:福岡女学院大学大学院人文科学研究科)
香野 毅(こうのたけし:静岡大学教育学部)
曻地勝人(しょうちかつと:福岡教育大学名誉教授・しいのみ学園理事長)
冨永良喜(とみながよしき:兵庫教育大学名誉教授・兵庫県立大学現在減災復興政策研究科)
中野弘治(なかのこうじ:こころとからだの発達相談塾MABA)
原田真之介(はらだしんのすけ:医療創生大学心理学部)
服巻 豊(はらまきゆたか:広島大学大学院人間社会科学研究科)
針塚 進(はりづかすすむ:九州大学名誉教授)
藤川卓也(ふじかわたくや:広島大学大学院教育学研究科)
藤田継道(ふじたつぐみち:兵庫教育大学名誉教授)
船橋篤彦(ふなばしあつひこ:広島大学大学院人間社会科学研究科)
星野公夫(ほしのきみお:順天堂大学名誉教授)
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