心拍変動バイオフィードバック──こころを「見える化」するストレスマネジメント技法

心拍変動バイオフィードバック──こころを「見える化」するストレスマネジメント技法

(愛知学院大学)榊原雅人 編著

定価2,800円(+税),168頁,A5判並製
ISBN978-4-86616-198-3 C3011
2024年8月刊行

 

通常は知覚できない心身の状態を“見える化”し,自律神経の調節機能を向上させるストレスマネジメント技法「心拍変動バイオフィードバック」。近年では安価な計測機器や専用アプリの普及により,本技法によるリラクセーションを日常的に活用できる環境が整えられています。本書は,日本における心拍変動バイオフィードバック研究の第一人者である編者と,本アプローチを各領域で活用している共著者を迎え,ストレスマネジメントの臨床実践に新たな視点と技術を提案する一冊です。
うつ病や慢性的な身体の痛み,PTSD,不眠などのストレス関連症状の緩和に有効な介入法をわかりやすく解説しながら,発達障害を抱える子どもに対する認知行動療法・トラウマケアへの応用や,非行臨床領域での実践などについても詳述されています。ストレスマネジメントの臨床に携わる心理職,看護やリハビリテーションの専門家,心理生理学の研究者らに向けて,心拍変動バイオフィードバックの基礎理論から実際の導入例までを網羅しました。


主な目次

第1部 心拍変動バイオフィードバックの基礎

第1章 心拍変動バイオフィードバック──榊原雅人

第2章 心拍変動バイオフィードバックの作用機序──榊原雅人

第3章 心拍変動──榊原雅人

第2部 心拍変動バイオフィードバックの応用

第4章 児童臨床における心拍変動バイオフィードバックの活用──明翫光宜

第5章 非行少年に対する矯正教育への活用──反中亜弓・梅沢章男

第6章 子どもがリラクセーションを学ぶための工夫──浦谷裕樹

第7章 日本のバイオフィードバック研究──廣田昭久

コラム

運動パフォーマンスへの効果 榊原雅人
日常の練習 榊原雅人
共鳴周波数の安定性 榊原雅人
圧受容体反射感度の評価方法 榊原雅人
ポリヴェーガル理論 榊原雅人
リラクセーション 廣田昭久
頑張らない呼吸 榊原雅人
丹田呼吸とリラクセーション 榊原雅人

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編著者略歴
榊原雅人(さかきばら・まさひと)
愛知学院大学大学院博士後期課程満期退学。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(DC),公立学校共済組合東海中央病院心理療法士,東海学園大学人文学部を経て,2012年より愛知学院大学心身科学部教授(現在は心理学部教授)。ストレス臨床に役立つリラクセーション技法の効果を心理生理学的方法によって検討している。公認心理師,臨床心理士,バイオフィードバック認定国際機構(Biofeedback Certification International Alliance: BCIA)有資格者。
主な著書・論文
『Heart rate variability (HRV): Prognostic significance, risk factors and clinical applications(2015)』(Walters, S.(編),共著,NOVA Science Publishers),「Evaluation of heart rate variability and application of heart rate variability biofeedback: Toward further research on slow-paced abdominal breathing in Zen meditation(2022)」(単著論文,Springer)など。


はじめに

心拍変動バイオフィードバックは,うつ病,慢性疼痛,心的外傷後ストレス障害,不眠などストレスに関連する病態の症状緩和に有用な心理生理学的介入法です。心拍変動は,自律神経の活動を反映する指標として知られていますが,これをパーソナルコンピュータやスマートフォンなどの機器を使って“見える化”し増大させるように練習すると,健康な状態を保つために働く自律神経の調節機能(ホメオスタシス)を向上させることができると考えられています。本書は,ストレス反応の緩和を目的とした臨床的アプローチを実践する公認心理師や臨床心理士,看護やリハビリテーションに携わるパラメディカルスタッフの方々,そして生理心理学領域の研究者を主な対象として,心拍変動の基本を捉えながら心拍変動バイオフィードバックの臨床的効果と作用機序をわかりやすく解説します。さらに,心拍変動バイオフィードバックにおけるさまざまな応用の例を紹介することを目的としています。
第1部では,はじめに心拍変動バイオフィードバックの概要について述べた後,実施手続きや臨床的効果について解説します(第1章)。次に,これらを受け心拍変動バイオフィードバックの作用機序について説明します(第2章)。最後は心拍変動についての基本的な特徴をまとめました(第3章)。また,第2部では児童臨床における心拍変動バイオフィードバックの活用(第4章),非行少年に対する矯正教育への活用例(第5章),そして,子どもがリラクセーションを学ぶためのユニークな試み(第6章)について紹介します。最後に,このような心拍変動バイオフィードバック研究の基盤である日本のバイオフィードバック研究の動向について紹介します(第7章)。
ストレスマネジメントの臨床実践に携わる方は,最初から読み進めていただくことで心拍変動バイオフィードバックの実際的な手順と臨床応用に関するヒントを得ていただけるのではないかと思います。一方,研究者の方は第1部(第3章)を中心にお読みいただくことで心拍変動を利用した研究の基本的な手順やホメオスタシスを支える自律神経制御の側面についてご理解いただけると思います。なお,第1部は編著者がこれまでにまとめた主要論文(Sakakibara, 2022;榊原,2022,2023;第3章文献)に加筆・修正を施して構成し,第2部は心拍変動バイオフィードバックの応用やバイオフィードバックの研究に携わる共著者が執筆を担当しました。記載されたトピックに関わる補足的な解説はコラムにまとめ,脚注にも簡単な説明を加えました。文中で引用した文献は各章末に示してあります。
日本では「心拍変動バイオフィードバック」について未だよく知られていませんが,Association for Applied Psychophysiology and Biofeedback(応用心理生理学とバイオフィードバック学会)やBiofeedback Certification International Alliance(バイオフィードバック認定国際機構)に関わる研究者や治療家の間では広く知られ利用されているストレスマネジメント技法です。本書をきっかけに,わが国においても心拍変動バイオフィードバックの研究や臨床応用が拡がっていくことを願っています。

 

 


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