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978-4-86616-040-5-周産期の心のケア

新版 周産期のこころのケア
――親と子の出会いとメンタルヘルス

永田雅子 著

定価2,000円(+税) 176頁 四六判 並製
ISBN978-4-86616-040-5 C3011
2017年12月発行

マタニティブルー,さまざまな不安……
出産を通して出会った親と子が本当の「親子」になるのを支えるために

本書は,周産期心理臨床に長年携わってきた臨床心理士によって書かれた周産期のこころのケアの入門書です。
周囲に望まれなかった妊娠,夫婦の不仲,分娩時の異常,長い不妊治療の末の妊娠,早産,死産,障害のある子を産むことなど,親子には,それぞれ固有の物語があります。NICUや周産期医療まで親と子がたどってきた道のりに思いをはせながら,いかに目の前の親子を支えていくのか。周産期医療の場における臨床心理士の役割とこころのケアのあり方をやさしく解説しました。
大幅な改稿を経た待望の新版。心理のスタッフだけでなく,助産師,看護師,産科医など必読の1冊です。


主な目次

第1章 周産期における親と子の出会いとメンタルヘルス
1.親と子が出会うということ
2.妊娠・出産のメンタルヘルス

第2章 現代における妊娠・出産をめぐる課題
1.妊娠から出産までの心理的課題─親となること
2.リスクを抱えて生まれてきた赤ちゃんと家族
3.関係が悪循環に陥るリスク

第3章 NICU入院となった赤ちゃんの母親の精神的健康と子どもへの感情
1.正期産で元気に生まれてきた赤ちゃんの母親との比較
2.出産後の抑うつと母親愛着が1年後に与える影響
3.出産後の母親のマタニティブルーズと子どもへの愛着が1年後に与える影響
4.周産期医療の変化が母親の精神的健康や子どもへの感情に与える影響

コラム 産褥期母親愛着質問紙

第4章 周産期医療における親子の関係性への支援
1.NICUにおける関係性支援の試み
2.周産期のこころのケア
3.周産期医療における心理士の役割
4.心理士と家族の出会いと支援

コラム カンガルーケア

第5章 周産期医療の場における心理臨床
1.周産期医療の場における心理的ケアの特殊性
2.目の前に赤ちゃんが“いる”ことの意味
3.親子を支える場を整えていくために


著者略歴
永田雅子(ながた・まさこ)
山口県生まれ,名古屋大学心の発達支援研究実践センターこころの育ちと家族分野教授,臨床心理士

平成5年 名古屋大学教育学部卒業
平成7年 名古屋大学大学院教育発達科学研究科修了
平成8年~ 名古屋第二赤十字病院小児科臨床心理士として勤務
平成19年9月 名古屋大学教育発達科学博士後期課程中退
平成19年10月より現職

主な著書 「乳幼児医学精神保健の新しい風」(共著,ミネルヴァ書房),「遺伝相談と心理臨床」(共著,金剛出版),「子どもの臨床心理アセスメント」(共著,金剛出版),「赤ちゃんに先天異常がみつかった女性の看護」(共著,メディカ出版),「ハイリスク児のフォローアップマニュアル」(共著,メディカ出版),「子どもの発達と情緒の障害」(共著・岩崎学術出版),「臨床児童青年精神医学ハンドブック」(共著・西村出版),「心理臨床における多職種の連携と協働」(編著・岩崎学術出版),「いのち”と向き合うこと・“こころ”を感じること」(共編著・ナカニシア出版),「標準 ディベロップメンタルケア」(共著・メディカ出版),「心の発達支援シリーズ 乳幼児 育ちが気になる子どもを支える」(監修・単著・明石書店),「妊娠・育児・子育てをめぐるこころのケア」(編著・ミネルヴァ書房)ほか多数


はじめにより
日本における周産期の心理臨床の取り組みは,1989年に一人の臨床家が一つのNICU(Neonatal Intensive Care Unit;新生児集中治療室)の扉をたたいたころから始まった。その後,他の病院でも,関心をいだいていた臨床家が,別のNICUを訪れ,研究目的という名目で,またボランティアという立場からNICUという場に足を踏み入れていった。それぞれ点で動いていたその活動は,一番最初に扉をあけた臨床心理士が活動していた病院で日本ではじめてカンガルーケアが導入されたことをきっかけに,また医療者のネットワークの中でいくつかの病院でも臨床心理士が活動し始めていることが伝わったことから,ひとつに結集されることになった。1996年春,全国で活動していた臨床心理士5名が名古屋に集い,それぞれの現場での状況を報告し,今後の活動をひろげていくために,周産期心理士ネットワークを立ち上げた。周産期医療の場の中で,モデルもない中,それぞれが,悩み,戸惑いながら少しずつ積み上げていた活動は,心理臨床の活動の一つのモデルとして確立されるようになった。周産期医療領域においてもその活動が広く認められるようになり,2010年1月,周産期医療体制整備指針の中に,臨床心理士等の専門職が周産期医療の中で配置すべきスタッフとして位置づけられることとなった。現在では,総合周産期母子医療センターの約7割に臨床心理士等の臨床心理技術者が活動するようになってきており,妊娠中からその後のフォローアップまで一貫して支援を行うようになってきている。
私が周産期で仕事をはじめた1990年代半ばは,まだ女性とおなかの中の赤ちゃんへの心理的ケアの視点が,医療スタッフに十分に共有されておらず,意図せず,妊産婦を傷つけてしまっていたことも多かった。しかし,今は,スタッフの暖かいケアとサポートで多くの妊産婦たちが,やわらかい表情で,出産を迎え,赤ちゃんと出会い,退院していくことが多くなってきた。周産期における心理的ケアとは,特別のことではなく,そのとき,そのときの傷つきや思いを,そのときそのときできちんと受けとめ,ケアし,その先へとつなげていく橋渡しのケアであり,どれだけ赤ちゃんと,親となる存在の人を,暖かく見守り支えていけるのかにかかっているのだと思う。赤ちゃんと出会う前の葛藤は,私たちが思っている以上に赤ちゃんとの出会いやその後の関係の育ちに微妙に影を落とす。物言わぬ赤ちゃんであるがゆえに,赤ちゃんに自分自身の思いが映し出されやすく,妊娠・出産時の傷つきがその後の赤ちゃんとの関係に影響を与えるのだということを,周産期での臨床は私に教えてくれた。周産期で活動を行う臨床心理士に限らず,母と子を支える専門家は,母と子が出会うまでの思いや,ここにくるまでの親子の道のりに思いをはせながら,目の前の親子を抱えていくことを忘れてはならないのだと思う。

2010年に本書『周産期のこころのケア 親と子の出会いとメンタルヘルス』を刊行したが,その後の医療技術の進歩や,社会状況の変化は著しく,親と子の出会いを取り巻く環境はより複雑化してきている。心理臨床の専門家にとどまらず,親と子のこころのケアを多職種で支援をつなぎ,親と子の出会いとその歩みを守り育てていくことが,これまで以上に求められるようになってきている。そのため,前著を大幅に加筆・修正し,新版として改めて発刊させていただくことになった。根気強く私の遅筆を支え,後押しをしていただいた遠見書房山内氏に深謝したい。

*注:平成29年度内に公認心理師法が施行され,心のケアの専門家が国家資格化される。今後公認心理師(略称:心理師)を中心とした心理職が周産期におけるこころのケアを担っていくことになると思うが,これまで,公益社団法人臨床心理士資格認定協会が認定した臨床心理士が,心のケアの専門家として広く活動をしてきた。そのためこの本では,臨床心理士という用語を使用し,その略称として心理士として記載を行った。