学校が求めるスクールカウンセラー 改訂版──アセスメントとコンサルテーションを中心に

学校が求めるスクールカウンセラー 改訂版
アセスメントとコンサルテーションを中心に

村瀬嘉代子監修・東京学校臨床心理研究会編

3,200円(+税) 248頁 A5版 並製
C3011 ISBN978-4-86616-168-6

学校臨床心理の知と技とこころについて分かりやすく書かれたSC必携の書

本書は,スクールカウンセラーのベテランたちによって書かれたスクールカウンセリングの実用書です。スクールカウンセリングの実践のなかでも必須である「アセスメント」と「コンサルテーション」をキーワードに,“学校が求めるカウンセラーの動きとはなにか”を整理して具体的に提示。スクールカウンセリングの必携書となっています。
刊行から10年,好評につき,大幅ページ増の改訂版を刊行しました。

本書の詳しい内容


おもな目次

第1部 なぜスクールカウンセラーは必要とされたのか
第1章 学校における心理職の役割─スクールカウンセラーの現在とこれから 村瀬嘉代子
第2章 公立学校スクールカウンセラー等活用事業の歴史と変遷 石川悦子
第3章 スクールカウンセラーをめぐる法的枠組み─教育基本法・学校教育法・学校保健安全法・公認心理師法・少年法・いじめ防止対策法ほか関連法令 杉原紗千子・柴田恵津子

第2部 学校アセスメントのあり方─学校コミュニティのなかでスクールカウンセラーはどう動けば良いのか
第4章 学校コミュニティのなかで─アセスメントとコンサルテーション
①学校におけるアセスメントとコンサルテーションとは 柴田恵津子
②学校コミュニティの理解とスクールカウンセラーの動き方 柴田恵津子・奥村八重子
資料 スクールカウンセラー活動に当たっての点検事項─相談室運営の枠組み作り 東京学校臨床心理研究会アドバイザーチーム

第5章 子どもの困りごとを巡って─アセスメントと対応
①不登校問題 宮田葉子・杉原紗千子・柴田恵津子
②いじめ問題 植山起佐子
③非行問題 杉原紗千子・横山典子
④虐待問題 吉田章子・横山典子
⑤特別支援教育 鈴村眞理
⑥学校危機への対応 石川悦子・柴田恵津子・鈴村眞理
⑦デジタルメディア関連問題 斯波涼介・上野綾子
⑧リソースを見つけ出して活用しよう─保護者や関係機関等との連携 上野綾子

第6章 スクールカウンセリングにおける守秘義務と記録について 梅津敦子
資料 情報提供書の書き方 上野綾子・鈴村眞理
第7章 お便り発行の目的と工夫─学校状況をアセスメントしながら 吉田章子

第3部 スクールカウンセリングの歩みと展望
第8章 SCによる全員面接 尾形剛・石川悦子

エッセイ
東京都公立学校スクールカウンセラーに期待すること ■ 千葉かおり
学校に関わる全ての人の人権を守るために ■ 山下敏雅
スクールカウンセラーに期待すること ■ 松本直樹
スクールカウンセラーへの期待 ■ 川上一恵
校内チームの一員として ■ 大森優子
スクールカウンセラーが学校にいる日 ■ 小瀬ますみ

コラム
青い鳥 ■ 石附牧子
つながりを作る言葉 ■ 大倉智徳
大事な一年 ■ 金 蘭姫
職業としてのスクールカウンセラー ■ 小林友也
通訳者でもあるスクールカウンセラー ■ 小林英子
自分の居場所を見つけること ■ 齋藤真紀子
仕事以外の自分を膨らませる ■ 高橋敦子
今,自分に望むこと ■ 西野 薫
スクールカウンセラーのセルフケア ■ 中島 惠
保護者面接 ■ 松岡由樹子
広報誌の依頼を受けた時 ■ 竹林一恵
元気な生徒の応援もSCの醍醐味 ■ 寺﨑馨章

監修者の言葉

本書を出版してから,早10年近く経過しました。その間,社会情勢は大きく変化し,法律も多く制定され,スクールカウンセラーを取り巻く状況も大きく変化しました。本書はお陰様で多くの皆様にお読みいただけたことを感謝しつつ,社会情勢の変化を踏まえて,初版時の内容を踏襲しつつも,新しい情勢に合うものにしようとここに改訂に至りました。
思い起こせば,1995(平成7)年に文部省「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」として全国154名で始まったスクールカウンセラー活用事業は,今日まで配置拡大が続いて来ました。こういう経過を辿ってきているのは,変容激しい社会がスクールカウンセラーの活動を必要としたという背景の存在とスクールカウンセラーが新しい領域で要請に応えようと努力してきた結果が評価されたものと申せましょう。
ところで,わが国の臨床心理学実践の初期には,現場に赴き,そこの組織や制度,精神風土を理解しながら,チームワークのメンバーとして,必要に即して他職種の人々や関係機関と連携して仕事をする,という営みは広くは行われていませんでした。「学校」というコミュニティにいかに適切に入り,活動するかということは未踏の領域に分け入ることであり,模索実践をしながら同時に,経過の推移を緻密に検討考察し,その結果を即,実践に反映させるという営みが必要でした。東京臨床心理士会(当時)では,1996(平成8)年にいち早く学校臨床心理士専門委員会を立ち上げ,スクールカウンセラーのバックアップを目指し,『東京学校臨床心理研究会』を組織して,相互支援・相互研鑽に務めてこられました。学校臨床心理士自らが主体的に自らの活動の質的向上に取り組んでこられた成果は大きいと思われます。
本書は東京学校臨床心理研究会の方々がスクールカウンセラー活動の実践を元に,初版「学校で役立つスクールカウンセラーに求められること」について,実践の跡をふりかえりつつ濃密な討論を繰り返されて執筆されたものです。そして,今回,改訂にあたって考慮した主な点は,執筆者は初版時の方針を堅持しつつも,全編にわたって,アセスメントの概念を基本にもちながら新しく制定された法律等や変化の激しい社会情勢を見据えて,変化したスクールカウンセラー活動について解説をされています。また,執筆内容の変化の大きさに改題したもの(特別支援教育),大幅に書き改めたもの(守秘義務と記録),全く新しく書き起こしたもの(デジタルメディア関連問題)などがあります。それらを踏まえて本書の特徴をあげると,

1)コンパクトだがスクールカウンセラーにとって,必要な知識と具体的な対応技法が遺漏なく分かりやすく述べられている。
2)アセスメントの必要性,重要性とその実際が明確に述べられ,アセスメントの結果をいかにして学校場面の必要性に応じて伝え,活かしていくかについてポイントが分かりやすく説かれている。
3)はじめに理論や技法ありきではなく,学校臨床心理士のおかれた現実について確かなアセスメントを行い,自分の負える責任を考慮しながら,その結果をどう現実行動に活かしていくかについて詳述されている。
4)スクールカウンセラー活動の基盤をなす法律,行政,制度等についてなされた解説は,スクールカウンセラーが「立ち位置」と役割を確かに認識するために役立つ。
5)スクールカウンセラーの営為を相対化して検討しようとする姿勢が堅持されている。
6)コンサルテーションについて,現実に即した極めて行き届いた説明がなされている。
7)「全員面接」の調査結果はスクールカウンセラーの活動の範囲を広げる先駆けとなるものではなかろうか。

つまり,コンパクトだが現実に非常に役立つ学校臨床心理の知と技とこころについて,分かりやすく書かれており,スクールカウンセラーの方々にとっては必携の書と言えましょう。あわせて,子どもの心身の健康な成長を願うすべての方々に本書を手にとって戴きたいと願います。多忙なお仕事の合間に真摯に討論を積み重ねられて,この書を編み出された東京学校臨床心理研究会の皆様にこころから謝意を捧げます。

令和5年2月吉日

日本心理研修センター理事長・大正大学名誉ならびに客員教授・北翔大学客員教授
村瀬嘉代子


本書おわりに

初版を2013(平成25)年8月に上梓してから10年の時が流れました。
児童生徒を取り巻く環境が複雑化・困難化するなかで,SCに求められる役割も多様化し高度化していると実感します。社会のデジタル化は急速に進み,学校ではGIGAスクール構想により子どもたちにタブレットが1台ずつ配布されるようになりました。また昨今,子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」の設置が国会で可決されました。不登校,いじめ,非行問題などSCが従来対応してきた課題に加え,発達障害,児童虐待,貧困問題,性被害,ヤングケアラー,SNSに係る課題,心理予防教育,事件・事故後の危機支援などさまざまな課題への対応が求められています。そして,多職種が協働・連携する「チーム学校」構想が共有されています。
今回,エッセイという形で温かいお言葉をお寄せくださった諸先生方に,日頃の感謝とともに心から御礼申し上げます。また,改訂版においても快く監修をお引き受けくださった上に,新たに第1章をお書きくださった村瀬嘉代子先生に心より御礼申し上げます。さらに,本書の出版企画について初版時より全面的に協力推進してくださった遠見書房の山内俊介代表に,執筆者一同謝意を表します。

2023年2月
東京学校臨床研究会「学校が求めるスクールカウンセラー」編集委員会
委員長 石川悦子
委員 柴田恵津子・杉原紗千子・鈴村眞理


著者一覧・略歴

監修者略歴
村瀬嘉代子(むらせ・かよこ)
一般社団法人日本心理研修センター代表理事・理事長。大正大学名誉教授,同大学客員教授。北翔大学大学院客員教授。臨床心理士。博士(文学)。
1959年,奈良女子大学文学部心理学科卒業。1959~1965年,家庭裁判所調査官(補),この間,カリフォルニア大学大学院バークレイ校留学,1965年大正大学カウンセリング研究所講師,1984年より同助教授を経て,1987年同教授。1993年,同大学同大学院臨床心理学専攻教授。退官後,2008年より大正大学名誉・客員教授,北翔大学客員教授。
主な著書:『柔らかなこころ,静かな想い』(創元社,2000),『子どもと家族への統合的心理療法』(金剛出版,2001),『統合的心理療法の考え方』(金剛出版,2003),『心理療法とは何か』(金剛出版,2004),『聴覚障害者への統合的アプローチ』(日本評論社,2005),『改訂新版 子どもと大人のこころの架け橋』(金剛出版,2010),『心理臨床家の気づきと想像』(金剛出版,2015),『ジェネラリストとしての心理臨床家』(金剛出版,2018),『子どものこころに寄り添う営み』(慶應義塾大学出版会,2019)ほか多数

東京学校臨床心理研究会
1995(平成7)年に始まった「文部省スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」を受けて,1996(平成8)年に発足した会である。一般社団法人東京公認心理師協会(旧東京臨床心理士会)学校臨床委員会が企画・運営を担当している。会員間での相互研鑽・相互支援を目的とし,研究・研修・交流等を通して,SCとしての資質の向上を目指している。本研究会会員は,東京公認心理師協会会員及び他県公認心理師協会ならびに他県臨床心理士会会員であり,かつ東京都公立学校SC,区市町村採用SC,私学SC等やSC活動に関心のある者である。会員数は発足当初は20名程度であったが,2023(令和5)年3月現在800名規模に拡大し,単年度の登録制で継続している。

執筆者一覧:五十音順
論文
石川 悦子(こども教育宝仙大学教授/私立学校スクールカウンセラー,元東京都公立学校スクールカウンセラー)
上野 綾子(東京都公立学校スクールカウンセラー/明神下診療所)
植山起佐子(岡山県スクールカウンセラー/NPO法人次世代育成プラットフォーム・ウッグラ代表理事)
梅津 敦子(東京都公立学校スクールカウンセラー/株式会社商船三井)
尾形  剛(東邦大学医療センター/元東京都公立学校スクールカウンセラー)
奥村八重子(関口メンタルヘルス相談室)
斯波 涼介(阿部真里子臨床心理オフィス/東京都公立学校スクールカウンセラー)
柴田恵津子(東京都シニア・スクールカウンセラー/東京都特別支援教育心理士)
杉原紗千子(NPO法人ことばのいずみ教室/元東京都公立学校スクールカウンセラー)
鈴村 眞理(東京都公立学校スクールカウンセラー)
宮田 葉子(東京都公立学校スクールカウンセラー/東京都立特別支援学校外部講師)
村瀬嘉代子(日本心理研修センター代表理事・理事長/大正大学名誉・客員教授/北翔大学客員教授)
横山 典子(元東京都公立学校スクールカウンセラー)
吉田 章子(元東京都公立学校スクールカウンセラー/小平市教育相談室)

エッセイ
大森 優子(立川市立立川第八中学校主任養護教諭)
小瀬ますみ(前東久留米市立第五中学校校長)
川上 一恵(東京都医師会・理事/かずえキッズクリニック・院長)
千葉かおり(東京都教育庁指導部主任指導主事(生徒指導担当))
松本 直樹(東京都西部学校経営支援センター経営支援室 統括学校経営支援主事)
山下 敏雅(永野・山下・平本法律事務所 弁護士)

コラム
石附 牧子(東京都公立学校スクールカウンセラー)
大倉 智徳(東京都シニア・スクールカウンセラー)
金  蘭姫(東京都公立学校スクールカウンセラー)
小林 英子(東京都公立学校スクールカウンセラー)
小林 友也(東京都公立学校スクールカウンセラー)
齋藤真紀子(東京都公立学校スクールカウンセラー)
髙橋 敦子(東京都公立学校スクールカウンセラー)
竹林 一恵(元東京都公立学校スクールカウンセラー/埼玉県公立学校スクールカウンセラー)
寺﨑 馨章(東京都公立学校スクールカウンセラー/東京工科大学・日本工学院八王子専門学校)
中島  惠(東京都公立学校スクールカウンセラー)
西野  薫(東京都シニア・スクールカウンセラー)
松岡由樹子(東京都シニア・スクールカウンセラー)

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