臨床心理士のための医療保健領域における心理臨床

臨床心理士のための
医療保健領域における心理臨床

一般社団法人 日本臨床心理士会 監修
同 第1期医療保健領域委員会 編
津川律子 責任編集

定価3,000円(+税)、230頁、A5判、並製
C3011 ISBN978-4-904536-47-6

本書は,日本臨床心理士会第1期医療保健領域委員会(津川委員長)が行った全国規模の大型研修会等のアーカイブから,医療保健領域(非精神科領域)に関する議論をピックアップしたものです。
性的な問題,ジェンダー,周産期医療,成人期発達障害,終末期医療,移植医療など,拡大する心理の仕事とそのポイントを実務レベルで描きました。また,付録には,医療領域で働く臨床心理士必携の「医療保健領域における臨床心理士の業務」も掲載。
初学者だけでなく中堅~ベテランの方にも読んでもらいたい1冊です。

姉妹編:「臨床心理士のための精神科領域における心理臨床」も好評発売中

本書の詳しい内容


おもな目次

序 論 津川律子

第1章 身体の生涯発達とメンタルヘルス──産婦人科医の視点から 大川玲子

第2章 周産期における心理臨床について
紹介とまとめ 周産期における心理臨床について 東山ふき子
(1)新生児科医から 堀内 勁
(2)周産期心理臨床の実際 橋本洋子

第3章 セクシュアリティと心理臨床
紹介とまとめ 「セクシュアリティと心理臨床」を企画して 花村温子
(1)精神科日常診療におけるセクシュアリティ 塚田 攻
(2)看護とセクシュアリティ──その現状と課題 大谷眞千子
(3)セクシュアリティと向き合うこと 大石敏寛

第4章 医療における成人の発達障害
紹介とまとめ 医療における成人の発達障害 津川律子
(1)発達障害のある青年・成人への医療的対応 田中康雄
(2)心理アセスメントと心理療法を中心に 糸井岳史

第5章 終末期医療と家族ケア
紹介とまとめ 終末期医療と家族ケア──病院・地域臨床において,ともに創造する役割 江口昌克
(1)病院・地域臨床において,ともに創造する役割──在宅ケアにおける家族ケアの実際と課題 秋山正子
(2)病院におけるがん患者の家族ケアの実際と課題 長友隆一郎

第6章 ドナーとドナー家族の相談窓口の設置
(1)移植医療への臨床心理士の関わり 大崎明美
(2)相談窓口設置に至るまで 谷中みゆき

付録 医療保健領域における臨床心理士の業務


ご挨拶

日本臨床心理士会の研修会に出席する度に,「この内容を出席した人々だけの財産に留めず,多くの人が享受する便宜が図られればよいのだけれど……」と思うことしばしばであった。もちろん,これまでも研修資料が販売されたり,『日本臨床心理士会雑誌』に受講者の感想などが報告されてきた。だが,全国規模の医 療保健領域における大型研修終了後,その内容をこのように纏められたものは数多ある臨床心理学の専門書の中にも類書はなく,まことに貴重な書物である。
本書の特色の第1として,内容は幅広い医療領域をカヴァーし,真摯で地道な実践をもとに今日までの医療の諸領域における心理臨床実践の足跡と現状が分かりやすく記述されていることが挙げられる。第2の特色として,現在,わが国の医療はさまざまな意味で大きな転換期に遭遇しているが,そのような状況の中で, 各領域の今後の課題を的確に把握し,それへの対応と臨床心理士は将来に向かって,どのように質を高め進んでいったらよいかについて具体的な示唆と展望が示 されている。
このように意義ある書物の刊行を企画し,編集された医療保健領域委員会の皆様と,急激な時代の転換の中で,次々に生じるさまざまな医療保健領域の課題に,平素から精力的に迅速に対応され,本書の責任編集の労もとられた医療保健領域担当の津川律子副会長に深謝したい。
本書は医療保健領域に留まらず,今日これからの心理臨床を考える上で非常に役立つものであると思う。多くの方々にぜひお読み戴きたいと願う。

平成24年立秋の日に

一般社団法人 日本臨床心理士会会長
村瀬嘉代子


本書刊行にあたって

本書の企画意図は「序論」のなかで詳しく述べた。
ここでは謝辞のみを述べたい。

本書の刊行に際して中心的な役割をもったのは,一般社団法人日本臨床心理士会第1期医療保健領域委員会のメンバー(浦田英範,江口昌克,小池眞規 子,花村温子,原田徹,東山ふき子,福田由利,矢永由里子/敬称略)であり,任期中の多大な活動に委員長として感謝申し上げたい。また,当委員会のこのよ うな活動は多くの委員会,理事会,常任理事会,そして何よりも会員の支えによっていることを御礼申し上げる。さらに,日本臨床心理士会を応援してくださっている,多くの対人援助職の方々にも日頃の御礼を申し上げたい。
さて,財団法人日本臨床心理士資格認定協会が設立し,「臨床心理士」(certified clinical psychologist)の資格認定がスタートしたのは1988(昭和63)年のことであった。第1回臨床心理士資格審査委員会は同年9月1日に組織され,初代委員長は佐治守夫先生(1924~1996)であった。成瀬悟策先生が臨床心理士第1号(臨床心理士番号No.1)として認定された。それ以来, 多くの臨床心理士を生み出し,臨床心理士を日本の社会のなかで位置づけ,発展させてきた多くの先達に感謝と尊敬の念を表したい。
また,臨床心理士の職能団体である日本臨床心理士会は1989(平成元)年11月1日に発足した。その初代会長であり,日本において臨床心理学の地位を確 立した先駆者のひとりである河合隼雄先生(1928~2007)には,臨床心理学に基づいた生活者の心理支援を,全国各地で今日も私たちは頑張って実践し ているという事実をぜひともお伝えしたい。

2012(平成24)年7月19日(河合隼雄先生のご命日に)
一般社団法人  日本臨床心理士会  第1期医療保健領域委員会委員長
津川律子


終わりに寄せて

今回,私は,日本臨床心理士会第1期の医療保健委員会の担当理事として,医療保健委員会に参加させて頂いた。委員構成は,精神科領域,総合病院での臨床心理士,HIV領域での臨床心理士,小児科,保健領域などさまざまな分野の委員から成り立っていた。委員会活動は,研修会の計画立案だけではなく,職能団体としても活動を行っていた。
私事になるが,私は,大学の教員になるまでの20年間,単科の精神科で臨床心理士として働いていた。その間,総合病院の小児科,スクールカウンセラーとし ても働いた経験があった。それらの経験から学んだことは,チーム医療の大切さと他職種とのコラボレーションであった。大学院時代の私は,精神科医療の経験 を積みたくて,週に1回実習の名目で心理士としての臨床心理査定を皮切りに,臨床心理面接の訓練を受けていた。この時が約30年前である。私は,臨床現場 に出たいという気持ちから修士課程修了後単科の精神科に就職をした。実習の時も感じていたが,精神科の基本的なことは分かっていたつもりだが,実習や就職 をしてみると精神医学のことだけを分かっていればすむようなことではないとつくづく思い知らされた。今から考えると当たり前のことではある。例えば,医学 一般,バイタル,薬の処方の書き方,これはカルテを見るとき,患者様がどのようなお薬を1日何回服用されているのか知っておくことも大切であると現場では 思った。また,思春期の患者様に対しても,思春期心性だけを知っておくだけではなく,身体的な成長もきちんと知っておいた方がカウンセリングにも役に立つ のではないかとも感じていた。
そのように考えていた私は,幸いにも定例職能研修会を医療保健委員会で計画立案する機会に出会えた。会議の時に,私は,これらの経験から,自分なりに意見 を言おうと思っていると,他の委員の方々も同様なことを考えておられた。私はただ黙って委員の方々の意見を聴いているに過ぎないだけであった。
そのようにして計画された定例職能研修会であったためか,この研修会に,出られなかった会員の方々からも,他の委員会との同時開催はやめて欲しい,今回の 研修会の内容を知りたいなど多くの方々から反響があった。確かに,私が聴いたものや司会をしたものは,新しい分野のものや隣接領域ではあるが,なかなか聴 くことができない講演が多かったと感じていた。この感覚は私だけではなく,研修を受けられた会員の皆様も同様のことを感じておられたのだと思った。また, 原稿を読ませて頂いてなおさらそのことは確信した。
このようなことがきっかけで,津川委員長をはじめ委員の方々から本にしてはどうだろうということになった。私も二つ返事で同意した。それから,委員長を中 心に本への企画が練られたのであった。また,この企画が実現したのは,日本臨床心理士会の第1期の理事の方々の同意があったからである。これが今回の本の 上梓に至った理由である。
最後になるが,この企画を快く賛成して頂き出版に同意くださった,遠見書房の山内俊介社長に謝意を表したい。山内さんの協力がなかったらこの企画が実現するこうはなかったであろう。
そして,この本が臨床実践をしている皆さん,あるいは初めようとしている皆さんの少しでも糧になれば幸いである。

一般社団法人 日本臨床心理士会第1期常務理事
浦田英範


執筆者一覧

(アルファベット順)

秋山正子(白十字訪問看護ステーション:訪問看護師)
江口昌克(静岡大学大学院人文社会科学研究科臨床人間科学専攻:臨床心理士)
花村温子(埼玉社会保険病院心理療法室:臨床心理士)
橋本洋子(山王教育研究所:臨床心理士)
東山ふき子(東邦大学医療センター佐倉病院:臨床心理士)
堀内 勁(聖マリアンナ医科大学小児科学教室・新生児分野:小児科医)
糸井岳史(明神下診療所:臨床心理士)
村瀬嘉代子(一般社団法人 日本臨床心理士会会長/北翔大学大学院:臨床心理士)
長友隆一郎(国立病院機構 山口宇部医療センター:臨床心理士)
大石敏寛(せかんどかみんぐあうと:HIV感染者s)
大川玲子(国立病院機構千葉医療センター産婦人科:産婦人科医)
大崎明美(北海道大学保健センター:臨床心理士)
大谷眞千子(千葉県立保健医療大学:看護師)
田中康雄(こころとそだちのクリニック むすびめ:精神科医)
塚田 攻(埼玉医科大学病院神経精神科・心療内科/かわごえクリニック,ジェンダー・クリニック担当:精神科医)
谷中みゆき(札幌医科大学附属病院臨床心理室:臨床心理士)
津川律子(一般社団法人 日本臨床心理士会副会長/日本大学文理学部心理学科/帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科:臨床心理士)
浦田英範(筑紫女学園大学:臨床心理士)

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